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オペラ サモトラケのニケ
なぜだか、ただいま『フィガロの結婚』特集と……『ドン・ジョヴァンニ』が割り込んできました。
ジークフリート  カイルベルト指揮 バイロイト1955年 第1幕
keilbert.jpg


 第1幕 演奏時間 77m42s
 
 第1幕のジークフリートとミーメの掛け合いであるが、いつもジークフリートの歌唱がミーメより目立たないと感じてしまう。ショルティ盤でもベーム盤でもそうである。ゲルハルト・シュトルツェとエルヴィン・ヴォールファールトの神懸かり的歌唱の前では、さしものヴィントガッセンもたじたじと言ったところか。今回は終盤に近づくにつれてジークフリートは勢いを増すが、出だしはパウル・クーエンにさえも押され気味である。

 実演で聴いたときと、録音されたものを聴いたときではその印象がだいぶ違う。いつも言っているが、グルベローヴァやジョーンズやコッソットを生オペラで聴くと、共演している他の有名歌手を圧倒して輝いている。カサロヴァやスコーラや、デルネシュやロベルト・シュンクがぱっとしない並の歌手に思えるほどだ。ところが録画や録音されたものを聴くと、それほど差がないように聴こえる。おそらく聴きやすいようにエンジニアが音量調整しているのだろうが、偉大な歌手の力を、いくぶん削いでいる気がしてならない。ヴィントガッセンってこんなもんかい?

パウル・クーエンのミーメ歌唱はは、先の二人ほどの強い個性がないために、聞き劣りがする。うっかりすると、いま歌っているのがミーメかジークフリートか分からなくなるときもある。名盤といわれるショルティ盤やベーム盤と比べて弱いのは、このミーメだけのような気がする。

 録音であるが、基本的には素晴らしく聴きやすい。12年後に録音されたベーム盤をちょっと聴いてみる。ベームのせっぱ詰まったような、背水の陣といった厳しい表現に合わせて、今聴くと、録音もいささか痩せているように感じる。それに比べて、さすがにデッカの精鋭レコーディング隊、ゆったりふくよか、低音豊かに臨場感たっぷりでうっとりするような音である。ほんとうに1955年の録音とは信じがたい。

 しかし録音に不思議なキズもある。出だしのミーメが剣をたたくところや、剣を投げる音、そして終盤のジークフリートがハンマーを連打するところで音量がへこむ。リミッターでもかかっているのか、金属が当たる音がきつすぎるのか、どうも自動的に音量が小さくなるみたいだ。それもかなりこまめに、ハンマーの音に合わせて変化するので、フィナーレに向かって落ち着かない音が続く。この点だけは残念。


テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

ジークフリート  カイルベルト指揮 バイロイト1955年 プロローグ
keilbert.jpg


 このカイルベルトの『ニーベルングの指輪』も、クナッパーツブッシュ1951年『神々の黄昏』と同じように不幸な運命をたどったものでした。1955年7月26日に録音され、2006年に発売されるまで51年間もお蔵入りしていました。まさか、著作権切れのCDのように、50年経ったから、許されて出てきたわけではないと思います。しかしクナの『神々の黄昏』も、今回の史上初のステレオ録音『ニーベルングの指輪』も、こんな素晴らしいものを眠らせておけるなんて、信じられません。

 昨年のレコード芸術『大賞』を受賞したくらいですから、きっと各雑誌がことの顛末を取り上げていると思いますが、わたしは全く読んでいません。クラシック愛好家ならほとんどの人が知っていると思いますが、半年前まで知りませんでした。今年になってブログを始めたときに、オペラを取り上げた記事を検索して(「音源雑記帖」さま)、こんなモノが出たのかと驚きました。先日、図書館検索で「ジークフリート」だけ見つかったので、さっそく借りてきました。

 付属のリブレットと、デッカのプロデューサーであるカルショー著「リング リサウンディング」から、発売されなかった理由を探るとこうなる。デッカのライバル会社であるEMIが、バイロイトの「マイスタージンガー」と「ニーベルングの指輪」を7年間他社が販売できない契約をしていた。同時に、EMIはヴァルナイ、ホッターらと専属契約を結んでもいた。デッカ、EMIの二社の話し合いでしか問題は解決しないはずだが、数年後にはカラヤンとウィーンフィルを互いに貸し出したりしているから、不可能なことではなかったと思う。

 このレコーディングのプロデューサーはピーター・アンドリューであるが、彼らチームの上司であるビクトール・オロフが他社に去ってしまい、ちょうど1955年8月にジョン・カルショウがチーフ・プロデューサーとしてデッカに復帰しました。カルショウはご存じのように史上初のスタジオ録音『ニーベルングの指輪』を成し遂げましたが、その目的のためには、このバイロイトライブは発売されない方が都合がいいと考えたのかもしれません。カルショウはバイロイトでのベームの演奏もこっぴどく批判していますから、不完全なライブ演奏を嫌っていたのでしょう。


ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バイロイト祝祭管弦楽団 
1955年7月26日 ライブ収録 デッカによるステレオ・レコーディング

ジークフリート=====ヴォルフガング・ヴィントガッセン
ブリュンヒルデ=====アストリッド・ヴァルナイ
さすらい人=======ハンス・ホッター
ミーメ=========パウル・クーエン
アルベリヒ=======グスタフ・ナイトリンガー
エルダ=========マリア・フォン・イロシュヴァイ
ファフナー=======ヨーゼフ・グラインドル
鳥の声=========イルゼ・ホルヴェーグ


テーマ:クラシック - ジャンル:音楽