ドン・ジョヴァンニ ザルツブルグ2014 ダルカンジェロ
Don13s.jpg


  女子サッカーも終わり、ウインブルドンも準決勝というところで、いよいよツール・ド・フランスがはじまりました。2日目から波乱含みです。「トロヴァトーレ」を書き終わってないうちに、新しいのを見てしまい、思いついたことを書いておきます。

 「バラの騎士」「トロヴァトーレ」に続いてまたまたザルツブルグ2014年作品の放映だ。2014年て、そんなに盛りだくさんだったのだろうか。

 驚くのはドン・ジョヴァンニ役のダルカンジェロである。イルデブランド・ダルカンジェロである。名前からしてスゴイ。なんて押し出しの強い名前だ。ヴィントガッセンぐらいの押し出しだ。いや、ドン・ジョヴァンニの歌唱も印象が強いのはもちろんである。

 かつてアーノンクールで、ネトレプコがスザンナの時のフィガロを歌っていた。トマス・ハンプソンがドン・ジョヴァンニの時は、レポレロを歌っていた。(このとき、ルカ・ピサローニはマゼットだった)通常ドン・ジョヴァンニ役の歌手は、フィガロの結婚ではアルマヴィーヴァ伯爵を歌う。たとえば若い頃のディースカウやヨルマ・ヒュンニネン。ジョヴァンニもフィガロも歌っているのは、エツィオ・ピンツァ、チェーザレ・シエピ。近いところでは、サミュエル・レイミー。ワーグナー歌手のように、数人しか思いつかない。

 役柄の上でジョヴァンニとレポレロとマゼットを歌う歌手はほとんど同じ声をしている。若いときはマゼットから始めて、実力があれば主役に抜擢される。だからうっかりしていると、何しろダルカンジェロ以外は記憶にない歌手なので、歌っている役を勘違いしてしまうことがある。ミーメが立派なヘンデンテノールの場合、やたら長い掛け合い、どっちがジークフリートだかわからなくなるのと似ている。

 登場からレポレロが立派な声なので、あれっこの人がドン・ジョヴァンニだったっけ?と思ったりする。顔はコジのドン・アルフォンソにぴったりのように見える。ベテランそうで、以前見たことがあるかもしれない。同じく、女声3人が、記憶力が悪いだけという説もあるが、見覚えのない歌手なので見かけで判断すると、ドンナ・アンナが見劣りがするので、アンナのような気がしない。エルヴィーラとツェルリーナが純白のウェディングドレスをきて、しかも容姿もスタイルもいい。

 いや、逆に言うと、ドンナ・アンナが見た目ふつうのオペラ歌手であって、ほかの歌手がカッコ良すぎるのだ。これでドンナ・アンナが、ほんとにアンナのネトレプコやトモワ=シントウだったら出来過ぎだ。こんなに見た目の感じのいい公演映像は他にないのではないか。マゼットもすごく決まっている。のちのちドン・ジョヴァンニを歌うようになるのではないか。


ドン・ジョヴァンニ:イルデブランド・ダルカンジェロ
レポレロ:ルカ・ピサローニ
ドンナ・アンナ:レネケ・ルイテン
ドンナ・エルヴィーラ:アネット・フリッチュ
ツェルリーナ:ヴァレンティーナ・ナフォルニータ
騎士長:トマス・コニエチュニ
ドン・オッターヴィオ:アンドリュー・ステイプルズ
マゼット:アレッシオ・アルドゥイーニ

クリストフ・エッシェンバッハ指揮 ウィーン・フィル合唱団、管弦楽団
スヴェン・エリック・べヒトルフ演出
2014.8.3(日) ザルツブルク モーツァルト・ハウス
スポンサーサイト

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2015/07/07 18:01] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 アーノンクール1988
515q6sDhSLL.jpg


 今年の夏も、孤島の鬼で中古CDを買いました。
いつものパソコン、いつもの辞書と違う。書きにくい。ノートパソコンでさえこんなに書きにくいのだから、タブレットなんてもってのほかです。

 いままで夏に買ったのは、影のない女、ワルキューレ、イドメネオ、後宮からの誘拐などです。偏ってます。3年前から目をつけていたが、安くなっている。カラス・セラフィンの『運命の力』や、ハイティンクの『バラの騎士』が\1,250ほどで売っていたのですが、『ドン・ジョヴァンニ』\1,500にしました。夏ですもん。

 ニコラウス・アーノンクール指揮コンセルトヘボウです。チューリッヒの映像はほとんど好みではないが、同コンセルトヘボウの『フィガロの結婚』がなかなかの健闘をみせていたので、それならば『ドン・ジョヴァンニ』の方がずっとアーノンクールにふさわしいはずだと思ったのです。ちなみにザルツブルグの『フィガロの結婚』は、むしろハイティンクの方が良かったと思います。

そんなアーノンクールよりも歌手が重要に決まってます。トマス・ハンプソンとエディタ・グルベローヴァ、ハンス・ペーター・ブロホヴィッツが聴いてみたい。
 その他、ローベルト・ホル、アントン・シャリンガー、バーバラ・ボニー 、ロバータ・アレクサンダーは聞いた事がある歌手だが、重要なレポレロ役のラズロ・ポルガーって誰や! とまあ、歌手が気になって買ったようなものです。

 この曲は、スッキリとしたベームも好きだが、とりわけフルトヴェングラーやカラヤン、クレンペラーやジュリーニで聴いているので、どこをどう踏ん張っても軽い演奏にきこえてしまう。おっとワルターを忘れていた。アーノンクールといえども、個性的な演奏が出来るのであろうか。

 というわけで、序曲などは特にどうということもないが、ジョヴァンニとツェルリーナの第七曲の二重唱は明らかに普通と違う。パパゲーノ・パミーナや、伯爵・スザンナの二重唱と同じで、とびきり魅力的な曲である。これを非常にゆっくり、しなやかに歌っている。

 つづく。。。かもしれない。
 いつもと違って、車でドライブ中に聴いている。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2014/08/16 18:35] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 ムーティ指揮 ウィーン1999 第二幕
ムーティ1999


 見た目が良いのはダルカンジェロのレポレロ。衣装は替わるのに、なぜか道化のように白塗りした顔はずっと変わらなかった。ドン・ジョヴァンニの髪型だって変わるのに。ダルカンジェロは声も立派だし、彼が映っているとつい、こっちがドン・ジョヴァンニだと勘違いしてしまうくらいだ。他の男声3人も悪くない。ドン・ジョヴァンニとレポレロは、めずらしく汗がしたたり落ちるのがみえるぐらいの熱演だ。衣装替えが厳しいのかもしれない。

 騎士長像が歌う部分で、全身と顔の上部分がブロンズ風に固まって、口が動くようにアゴの部分だけブロンズヒゲが付いていて、それがパクパク動くので、コメディアンの着ぐるみみたいで、妙におかしかった。
 
 オッターヴィオのミヒャエル・シャーデも悪くない。あまり目立たない二つのアリアでは、なかなか聴かせる。キルヒシュラーガーはツェルリーナにしては中低音が強い。どうしてもグリストとかバトルのようなものだと思っている。

 これを見たついでに、カラヤン87ザルツブルグ公演、スカラ座の二つ、ムーティ87とバレンボイム2010のビデオを見た。やっぱりあまりにも舞台の規模が違う。贅を尽くしたスカラ座のプレミエ公演なんかと比べてはいけないのだ。ウィーンの小劇場の通常の公演はこういうものだ、ということなのかもしれない。

 歌手でもっとも聴き応えがあるのが、アンナを歌うアドリアーネ・ピエチョンカである。ヤノヴィッツ、トモワ=シントウ、グルベローヴァ、スチューダー、ネトレプコらに勝るわけではないが、立派なドンナ・アンナだ。実演で聴いてみたい。

 ムーティ・ウィーン国立歌劇場の演奏は、特にフィナーレはすばらしい。ブッセートにあるヴェルディ劇場でのファルスタッフ公演でも、狭い簡素な舞台にそこそこ有名な歌手でエレガントな演奏をしていた。大舞台では力ずくで押していくような演奏だったが、今回は洒落て余裕のあるといったフィナーレでとても良かった。二つの旋律が交錯するコーダが見事。かつてベーム・ウィーンPOでしか聴いたことがないような美しさだ。


テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2013/08/19 18:55] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 ムーティ指揮 ウィーン1999第一幕
ムーティー1999
☆変なカツラですな。


 ここのところ、夏になると『ドン・ジョヴァンニ』を聴くことが多い。夏といえば『ドン・ジョヴァンニ』と『イドメネオ』でしょう。決して、『フィガロの結婚』『魔笛』『コジ・ファン・トゥッテ』を聴こうという気候ではありません。

 先日、カラヤンとアバドの『ドン・ジョヴァンニ』を聴いて、乗り気になって、三年前に買ってあったムーティの新しい方のDVDを見てみた。このDVDは確か、小澤指揮する『ヘンゼルとグレーテル』にアンゲリカ・キルヒシュラーガーが出演したときに、どんな歌手か気になって買ったものだ。

 その後、指揮者と歌手の双方が、なぜか気にならなくなったので見ないでしまってあった。ムーティの演奏では、ストレーレル演出のスカラ座ビデオとウィーンフィルとのCDも持っている。彼は、見かけとは違って、奇をてらったところのない伝統的でごく普通の演奏をする。その点で、アバドやバレンボイムなどよりも物足りなさを感じさせるところがある。

  アン・デア・ウィーン劇場という小劇場ですので、スカラ座やザルツブルグ音楽祭などより、ひどく質素な舞台に見えます。舞台手前の階段なんて、フェルゼンライトシューレのように舞台装置として常設されているかのような雰囲気です。その階段より奥が普通の舞台のように書き割りが動いたりします。

 そういうわけですからムーティ指揮でも、1987年ストレーレル演出のスカラ座のものに比べ、あれは非常に美しい舞台でしたから、今回見た目は格段に劣ります。演出にはほとんど何も感じませんでした。ただ進むにつれて歌手の衣装が、古代から現代に変わっていくのは、不快感もなく興味を引きました。


リッカルド・ムーティ指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
ロベルト・デ・シモーネ演出 1999.06. アン・デア・ウィーン劇場

ドン・ジョヴァンニ:カルロス・アルバレス(Carlos Alvarez)
レポレッロ:イルデブランド・ダルカンジェロ(I'ldebrando d'Arcangelo)
ドンナ・エルヴィーラ:アンナ・カテリーナ・アントナッチ(Anna Caterina Antonacci)
ドンナ・アンナ:アドリアーネ・ピエチョンカ(Adrianne Pieczonka)★★
ツェルリーナ:アンゲリカ・キルヒシュラーガー(Angelika Kirchschlager)
オッターヴィオ:ミヒャエル・シャーデ(Michael Schade)
マゼット:ロレンツォ・レガッツォ(Lorenzo Regazzo)

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2013/08/15 18:27] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 カラヤンとオザワと吉田秀和
karajan75.jpg



 先日の村上シリーズで「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を読んだ。その中に、若き日の小澤さんがベルリンフィルを振ったときのことが書いてあった。彼の指揮を映像で見ているとわかるように、非常に細かく奏者に合図を出す。

 それを見ていたカラヤン先生にこう注意されたそうだ。そんな入りの指示なんてうちのオケには必要ない。オケに任せておいて大丈夫だ。君は大きなところをしっかり固めるんだ。何度もそんなことを言われた。

 小澤さんの反論は、でもね、ぼくが細かく指示を出すと、オケの間に風が通るんですよ、と村上に説明する。わたしは、小澤さんの実演には四回接したが、カラヤンの言うことがもっともだと思う。最近は違うんだろうけど、以前の演奏はほんとうに風が通っているように感じた。

 10年ぐらい前、団体ツアーで(といっても6人だけ)ウィーンに行ったとき、ちょうど国立歌劇場では小澤征爾指揮『ドン・ジョヴァンニ』をやっていた。チケット入手はむずかしいだろうけど、まあ、それほど見たいとも思わなかった。相談した現地ガイドの女性も、まったくおすすめできないといった体で、チケットの確認もしてくれなかった。「オザワって、カラヤンの弟子でしょ」だからダメだと、言わんばかりだった。

 そのカラヤンの演奏、『ばらの騎士』と『ドン・ジョヴァンニ』では、録音がずいぶんと違う。バラは繊細きわまりないが、ジョヴァンニは重低音がかぶって細部が聴き取りにくい。この二つは、CDではもちろん、ザルツブルグ音楽祭のエアチェックを何度も聴いた。歌手にはかなり不満というか、他の歌手の方がいいんじゃないかという思いがあるが、カラヤンの演奏はすばらしい。実の詰まった老舗の羊羹。細かいことは言いたくない。


ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ★★★
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団  1985年1月 ベルリン
 
ドン・ジョヴァンニ=======サミュエル・レイミー
ドンナ・エルヴィーラ======アグネス・バルツァ★
ドンナ・アンナ=========アンナ・トモワ・シントウ★★
ドン・オッターヴィオ======イェスタ・ウィンベルイ
レポレロ============フェルッチョ・フルラネット★
ツェルリーナ==========キャスリーン・バトル★☆
マゼット============アレクサンダー・マルタ
騎士長=============パータ・ブルチュラーツェ★



新・音楽展望 1984-1990 吉田秀和 より
 カラヤンはここ数年、ザルツブルクの音楽祭で、《バラの騎士》をふり続けてきたが、今度そのCDがでた。この演奏は映画の時とは違う。それは第一幕の終り、それから終幕の大詰めとに集約的に出ている。遅い速度の上で、延々として繰り広げられる音楽は、文字道理、心のそこからつき上げてくる悲しみ、あるいは心のそこからにじみ出てくる愁いに彩らている。こういう悲しみは聴くものの心を動かさずにはおかない。それに、ここには、どんな人間も逃れられない「時間」というものの力-私たちを生みだし、育て、やがて老いと衰えに導いていく力の存在を体験する時、私たちみんなが感じる、その味わいそのものが流れているのである。カラヤンはここで、このひとの最近の状態まで来てはじめて可能になった演奏をしている。そうして私は、これを希代の名演と呼ぶのをためらわない。 (1984.11)

 もうだめだと思った一昨年、あの《バラの騎士》で「永遠の青年」といった上っ調子から立ち直り、見事に円熟した老巨匠ぶりを見せたのに驚嘆したのだったが、今年末の《ドン・ジョヴァンニ》に至っては年齢云々など突き抜けた。序曲の最初の二短調主和音の全奏以下、騎士長殺しからアンナとオッタヴィオの復讐の誓いまできいても、音楽は一切を押し流しつつ突進、時には火を吹く勢いだ。モーツァルトのこの曲がどんなデーモンを蔵する音楽か、それをこんなすごい力で実証した演奏を誰が今の彼に期待したろう。この盤は今年最大の収穫である。これをきくとカラヤンが近代合理主義演奏の代表という見方を考え直さなければならなくなる。旋律美至上と痛切な演劇性を結びつけ全人間的ドラマとするのに成功したのがこの曲のこの人である。 (1986.12)

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2013/07/22 16:34] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 マゼール パリ・オペラ座78
マゼール



 ジョセフ・ロージー監督『ドン・ジョヴァンニ』映画のサウンドトラックとして録音されたもの。マゼールとしては、二つの仕事を抱えて大忙しの時、ムリヤリ挟み込まれた仕事らしく、何度も分割してバラバラに録音している。

 その、万全の体制で、ちゃんとレコーディングされたわけでもないこの演奏であるが、なかなか悪くない。映画のDVDも見たが、他のモノと同様、やっぱり面白くない。映像に影響されて、マゼールの音楽もありきたりなモノに感じた。映画のためだし、やっつけ仕事なんだろうな。

 ところがどっこい、CDで音楽だけ聴いたらずっといい。フルトヴェングラー、カラヤン、クリップス、ジュリーニ、ベームなどの、テンポ推移など似ている王道の『ドン・ジョヴァンニ』演奏とは、ちょっと違っている。

 まず、低音が少なめでスッキリしている。そして、王道とテンポが違う部分は少ないが、マゼールにありがちな遅くなるようなことはなくて、フィナーレなどで速くなる部分があるぐらい。ほんの少し、古楽器演奏に近いけれど、まともな気合いの入った演奏で、好感が持てる。

 歌手は、みんなとてもいい。ライモンディとベルガンサが特に気にいった。ドンナ・アンナのエッダ・モーザーが、ちょいと粗めの歌唱だと思ったが、それも過去の名歌手と比べればのこと。繰り返し聴くと、違和感もなくなり、素直に感動する。このレコードを褒めている文章を見たことがないせいもあるが、どうせ大したことはないだろうと、先入観で避けていたのを反省した。



ロリン・マゼール指揮 パリ・オペラ座管弦楽団&合唱団 1978年

ドン・ジョヴァンニ‥‥‥ルッジェーロ・ライモンディ
レポレッロ‥‥‥ホセ・ファン・ダム
ドンナ・アンナ‥‥‥エッダ・モーザー
ドンナ・エルヴィラ‥‥‥キリ・テ・カナワ
ツェルリーナ‥‥‥テレサ・ベルガンサ
マゼット‥‥‥マルコム・キング
騎士長‥‥ジョン・マカーティ
ドン・オッターヴィオ‥‥ケネス・リーゲル

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2013/03/03 20:06] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 エストマン ドロッドニングホルム宮廷劇場1989
ostman89-2s.jpg




 これは古楽器による『ドン・ジョヴァンニ』の最初の録音です。L'Oiseau-Lyreレーベルですからホグウッド・シュレーダーの交響曲全集と同じですね。ところが先日のクイケン盤と大違いで、とっぴょうしもない演奏です。基本的に速く、たまに遅く、おふざけのような歌い方の部分もあります。


アルノルト・エストマン指揮 ドロットニングホルム宮廷劇場管弦楽団&合唱団
1989年録音。Ⅰ.74m45s  Ⅱ.79m09s  Ⅲ.補遺異稿27m。
ドン・ジョヴァンニ……ハーカン・ハーゲゴール
レポレロ……カシュマイユ
ドンナ・アンナ……アーリーン・オジェー
ドン・オッターヴィオ……ニコ・ヴァン・デル・メール
ドンナ・エルヴィラ……デラ・ジョーンズ
マゼット……ブリン・ターフェル
ツェルリーナ……バーバラ・ボニー

 序曲からして速いです。最初の音、普通の演奏では「ジャン・ジャーン・ジャーーン(低音ズーン)」といったところですが、カラヤンほどではないにしても、一本の棒のようにさっさと演奏しています。その後も、やり過ぎではと思うほどに速いです。

 序曲とかフィナーレでは、クイケン盤のように、ティンパニと金管楽器が目立つが、さらにハデにきつくなっている印象を持った。だから衝撃的演奏でもあり、楽しめる。

 レポレロ1003人のアリアは、そもそも普通の指揮者が速めに演奏するために、ちょっと遅めに感じる。逆に、普通は速く演奏する、農村のツェルリーナ登場場面がやたら遅くて、拍子抜けするが、これはこれで味わい深く、楽しめます。

 ドン・ジョヴァンニがツェルリーナを誘惑する2重唱。出だしがものすごくやさしくコミカルだ。ガーディナー盤のケルビーノのアリアのようで、思わずのけぞってしまう。こんなに羽目を外してイイのだろうか。

 
 クイケン盤がほとんど聞いたことのない歌手ばかりだったのに比べれば、オジェー、ターフェル、ボニーといった、今までのレコードで馴染みのある歌手だ。特にターフェルは、ここではマゼットだが、ショルティ盤でドン・ジョヴァンニ、アバド盤でレポレロも歌っているはずだ。だから、マゼットには実力十分ということ。

 その他の歌手は、知らない。なにしろこのセットのメンバーがちゃんと載っているページを見たことがないし、記事によって、広告によってハーゲゴールやニコ・ヴァン・デル・メールの日本語表記が違っている。定着していない名前なのだろう。間違っているかもしれない。

 ドンナ・エルヴィラを歌う、デラ・ジョーンズが聴き応えがある歌唱だと思う。他は、クイケン盤のように、他の名盤に比べれば特に言うこともないような出来である。あくまでもエストマンの指揮を楽しむべき盤だろう。

 原則としてプラハ初演版によっており、第1幕がCD1枚目、第2幕が2枚目にキッチリ入っており、短い3枚目にウィーンの演奏で差換えられたアリアなどが入っている。最初は特典付き3枚組で、その後は2枚組で発売されているようだ。第1幕フィナーレでCDが終わるのは、非常に気持ちがいい。

HMVジャパン クラシック検索

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2012/07/26 19:01] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 クイケン ラ・プティット・バンド1995
クイケン95



・歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全曲
 ヴェルナー・ヴァン・メヘレン(ドン・ジョヴァンニ)
 フーブ・クレッセンス(レポレッロ)
 クリスティーナ・ヘーグマン(ドンナ・エルヴィラ)
 エレーナ・ヴィンク(ドンナ・アンナ)
 マルクス・シェーファー(ドン・オッターヴィオ)
 ナンシー・アージェンタ(ゼルリーナ)
 ナンコ・デ・ヴリエス(マゼット)
 ハリー・ヴァン・デル・カンプ(騎士長)
 カペラ・コンポステラーナ

 シギスヴァルト・クイケン指揮 ラ・プティット・バンド
  1995年10月20日 63:04+68:02+21:35 3CD


 古楽器での「ドン・ジョヴァンニ」です。エストマンの速くて変わった演奏とは違い、極めて真っ当なテンポです。では、つまらない演奏家というと、そうではありません。ホグウッドとシュレーダーの古楽器によるモーツァルト交響曲全集が出たときに感じたような、聴き応えのある自発性の感じられる演奏です。

 「ドン・ジョヴァンニ」は、ベートーベンの第九のように、普通の穏健な演奏では満足できません。ですからいまだにフルトヴェングラーやカラヤンのような、終始異常な緊張感に包まれた演奏が好まれるわけです。それとらとは全く違ったクイケンの演奏。今バレンボイム盤も聴いていますが、バレンボイムとかムーティとかは、ジャンボ鶴田のプロレスのようですな好演、といったものですかね。

 CDの収録が普通より前倒しになっており、3枚目のCDには、フィナーレだけ、たったの21分しか入っていない。

 楽器が違うと言うよりも、楽譜の読み方が違うようで、色々なところで速さとか間が違っている。でもエストマンほど違和感は感じない。金属的なストリングスやティンパニの強調は予想通り。序曲とか、フィナーレなどの盛り上がりは、現代オケのような重低音に不足するものの、十分満足できる。

 プラハ初演版での演奏のため、エルヴィラの最後のアリアはない。問題は歌手、というよりも伴奏部分も、要するにアリアなどの歌唱部分が、バロックオペラみたいで軽いのだ。スッキリ気持ちはいいのだが、もうちょっと情念を感じたい。ドーンと打ちのめされたい。でも、後味スッキリ、いい演奏です。


モーツァルト:歌劇「ドン・ジョバンニ」全曲クイケン


HMVジャパン クラシック検索

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2012/07/13 21:11] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(1) | page top
「ドン・ジョヴァンニ」HL レーヴライン指揮 ベルリンRSO63
ハンス・レーヴライン



 以前 ライトナー指揮『フィガロの結婚』で採り上げた。そこで書いたのを再び。
[ドイツ語歌唱によるオペラ・ハイライト・シリーズ]
 「ドイツ・グラモフォンで豪華歌手陣を起用し、録音されたドイツ語によるオペラ・ハイライト集をリリース!! 」
 全曲盤からの抜粋ではなく、始めっからハイライト盤として企画されたものらしい。しかも、ドイツ語で。シリーズとあるから他にも似たようなものがあるのだろうが、とんと知らない。

 とんと知らなかったのであるが、今回、2枚目が手に入ったのだ。フィガロでは、ドイツ語版はよくあって、もう5~6枚聴いているはずだ。しかし、「ドン・ジョヴァンニ」では初めて(だと思う)。


ハンス・レーヴライン指揮 ベルリン放送交響楽団 1963年2月

ドン・ジョヴァンニ……ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
ドンナ・アンナ……クレア・ワトソン
ドン・オッターヴィオ……エルンスト・ヘフリガー
ドンナ・エルヴィラ……★イレーヌ・サレムカ
レポレロ……ワルター・ベリー
ツェルリーナ……リタ・シュトライヒ


 ドイツ語であるし、ハイライト盤だけといのも他にないが、ライトナー指揮ベルリンフィルと比べても、知らない指揮者だし。なんとなく手を抜いている感じがする。 オケに関しては、今まで採り上げた中で、最も見劣りがする…ような気がする。

 ような気がする、というのもいいかげんな意見だが、(3回聴いたけど)ようするにまともに聴く気にならないのだ。フィガロと違って、ドイツ語に違和感ありありなのだ。特にツェルリーナの薬屋の歌。せっかくリタ・シュトライヒを使いながら、全然雰囲気が出ていない。

 フィッシャー・ディースカウは、この前後に同じDGで、フリッチャイとベームの全曲盤に参加しているから、間違いないかと思いきや、変だ。まあ、3曲歌っただけでは、気分が乗らないのだろうが、リートのような軽い歌い方だ。

 比較的気分がいいのが、ヘフリガーのドン・オッターヴィオとドンナ・エルヴィラのイレーヌ・サレムカ。サレムカって変な名前だが、とてもいい。アリア1曲に4重唱だけ。その第2幕のアリアは、普通の全曲盤の歌唱として十分な出来だ。

 しかもこの特別企画、全曲盤からの抜粋だったら、フィナーレや地獄落ちのようないい場面は、出し惜しみしてもいいと思う。しかしこれはハイライト盤だけなのだから、もうちょっと盛り込まないと物足りないぞ。
 
エルヴィラの第2幕のアリアがあって、最後がレポレロの「ああ、お許しください」という、短くて、あってもなくてもいいような曲。アンナのアリアもどこかのフィナーレも入っていない。なんか一人あたり2曲歌えばそれでいいみたいなハイライト盤だ。

 名歌手の飼い殺しみたいなレコーディング。もったいない。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2012/07/08 17:41] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 ジュリーニ指揮 1970年ライブ
ヤノヴィッツ


 先日とりあげたEMIのフィルハーモニア盤に勝るとも劣らないキャストです。
 いや、前回騎士長「ゴットローブ・フリック」に勝るとも劣らない強面な名前、ニコライ・ギャウロフとセスト・ブルスカンティーニでまず、なんだかすごい。

 そして、アルフレード・クラウスにセーナ・ユリナッチです。ユリナッチとブルスカンティーニが夫婦だと、歌手紹介に目立たなく書いてました。

 いやいや、一番大事なのは、ドンナ・アンナを歌うグンドラ・ヤノヴィッツ。


『ドン・ジョヴァンニ』 ジュリーニ指揮RAI放送ローマ管弦楽団
RAIローマ 1970年5月12日モノライブ収録 T.T.63:29+45:18+60:11

ドン・ジョヴァンニ:ニコライ・ギャウロフ
ドンナ・アンナ:グンドラ・ヤノヴィッツ
ドンナ・エルヴィラ:セーナ・ユリナッチ
ドン・オッターヴィオ:アルフレード・クラウス
レポレロ:セスト・ブルスカンティーニ
騎士長:ディミテル・ペトコフ
マゼット:ワルター・モナケシ
ツェルリーナ:オリヴィエラ・ミルジャコヴィチ


 ところでまず驚いたのが、これまた意外なことに、序曲の演奏がとてもいい。かつての名盤を聴くときでも、序曲は途中ではしょって、進めちゃうことが多いのだけれど、ジュリーニの序曲には、引き込まれてしまった。この演奏で十分だ。全体的には、他の演奏に比べると、低音不足は感じられますが、立派なオケの演奏です。

  ニコライ・ギャウロフとアルフレード・クラウスは特にすばらしいし、名前を知らない他の歌手も十分満足できる声です。ただユリナッチとブルスカンティーニという、ちょっと古めのモーツァルトオペラに、ちょくちょく顔を出していた2人ですが、ここではちょっとした不満があります。エルヴィラにしてはヤワで、レポレロにしては柔軟性に欠ける。

 ヤノヴィッツのドンナ・アンナは、正規録音ではありませんでした。CDの海賊版(って今でも言うのかな?)では数種あります。これは「新潮オペラCDブック14」という本のくくりに入っています。まあ、どっちにしてもめったに見かけることはありません。

 かつてのマルシャリンとか伯爵夫人とかフィオルディリージを歌うようなプリマ歌手は、つまりシュワルツコップとデラ=カーザは、ドンナ・エルヴィラを歌っていたから、ヤノヴィッツがアンナを歌うとは意外な展開です。まあ、どっちも彼女に向いているとは思えません。

 カラヤンのマルシャリンとか伯爵夫人である、アンナ・トモワ=シントウもドンナ・アンナですが、こっちはピッタリです。というか、ほとんど最高のアンナでしょう。それに比べると、ヤノヴィッツは線の細い、その分高い声が出るアンナです。

 グルベローヴァも歌っていますが、トモワ=シントウよりです。むしろ若い頃のグルベローヴァにありそうな高い声です。この点で、ニルソンやサザーランドよりも安心して聴けます。最初は彼女の歌うジークリンデみたいに違和感ありありでしたが、数回聴いたら納得できました。ライブですし、演目からしても、熱血歌唱が聴けます。

最高の伯爵夫人、グンドラ・ヤノヴィッツのドンナ・アンナ。
もっと早く聴くべきでした。



モーツァルト フィガロの結婚 (新潮オペラCDブック)
新潮オペラCDブック 14

モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ ハイライト
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(全曲)


テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2012/06/30 19:34] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 マックス・ルドルフ指揮 1955年
ルドルフ55




 ここのところ『ドン・ジョヴァンニ』の、ジュリーニ盤とクリップス盤を聴いていました。そこへ新しいCDが手に入りました。イタリア・チェトラのスタジオ録音のようです。デッカのクリップス盤と同じ1955年の録音ですが、もちろんモノラルです。

 この盤のウリは、なんといっても ジュゼッペ・タッデイです。カラヤンの『ファルスタッフ』の映像でなんども見た、なじみの歌手ですね。しかし、太って好々爺とした体格のイメージと全く違って、若い頃の彼は、まさにドン・ジョヴァンニにふさわしい、いい男に見えます。

 有名な録音では、カラヤンの『ファルスタッフ』『トスカ』、ベームの『コジ・ファン・トゥッテ』、ジュリーニの『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』、シッパーズ指揮の『マクベス』などです。

 といいますか、タッデイ以外の歌手は、聞いたことのない歌手で、指揮者もオケも初めて聴きます。そして1955年のモノラル録音とすれば期待しないで聴き始めるのもムリがないところ。


モーツァルト
歌劇《ドン・ジョヴァンニ》

ドン・ジョヴァンニ ジュゼッペ・タッデイ(バリトン)
ドンナ・アンナ メリー・カーティス・ヴェルナ(ソプラノ)
騎士長 アントニオ・ゼルビーニ(バス)
オッターヴィオ チェーザレ・ヴァレッティ(テノール)
ドンナ・エルヴィーラ カルラ・ガヴァッツィ(ソプラノ)
ツェルリーナ エルダ・リベッティ(ソプラノ)
レポレッロ イタロ・ターヨ(バス)
マゼット ヴィート・ススカ(バス)

トリノ放送管弦楽団&合唱団 モノラル録音:1955年6月28日 チェトラ
指揮:マックス・ルドルフ


 音を出して驚きました。ステレオ初年度のデッカ録音のモーツァルトシリーズよりも、インパクトの強い音がします。モノラル録音のせいか、肉太のしっかりした音です。昔の録音にありがちな、オケ控えめで歌手優先。

 いつもは頼りないオッターヴィオでさえ、ヘンデンテノールのようです。レポレロも立派な声で、どっちがドン・ジョヴァンニなのかわかりにくいぐらいです。タッデイもジュリーニ盤ではレポレロを歌っています。どっちでも歌えるのでしょうけど。

 ドンナ・エルヴィーラも、先のシュワルツコップではないけれど、力強い声。ツェルリーナも演技過剰。コブシの入った特徴的な歌い方で興味深い。逆に、相対的にドン・ジョヴァンニやドンナ・アンナがそれほど目立たないという結果にもなっている。

 「ドン・ジョヴァンニ」の演奏にしては、と但し書きを付けなくてはいけないにしても、名盤であるジュリーニ盤とクリップス盤が、良識のある穏健派?に思えてくる。ムーティなんかは、もっと普通の演奏ですね。

 歌手優先の録音と言っても、序曲とか地獄落ちとか、各フィナーレではオケも声を嗄らして応援。熱血歌手同様、郵政民営化賛成か反対か!まさに政治生命をかけて法案を成立させるかのようです。この興奮は、なんだか怒濤の超名演・ワルター盤に近い。


モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ

HMVジャパン クラシック検索

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2012/06/26 18:15] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 ジュリーニ指揮 1959年 第2幕
ジュリーニ59



 ジュリーニのオケは、ベームに似ていて、低音少なめで繊細。特に誇張したところはないので、深刻でも重厚でもない。スィトナー盤は、聴いたことがないが、恐らく似たような傾向だと思う。したがって、人によっては、あるいは時によっては、これといった特色のない、つまらない演奏に感じることもあるだろう。

 フィナーレなどの締めは、ベームにやや劣ると感じられるが、快速で気持ちがいい。問題は歌手。肝心のドン・ジョヴァンニとドンナ・アンナが弱い。騎士長のゴットローブ・フリックも、名前に似合わず弱い。

 ヴェヒターがドン・ジョヴァンニを歌うっていうのが、そもそも考えられない。「こうもり」や「タンホイザー」でよく聴いていた。だからっていうわけではないが、レポレロのタッディよりも優しい男だと思うぞ。

 ドンナ・アンナのジョーン・サザーランドでありますが、ほぼ「ホフマン物語」しか聴いた覚えがない。思い出せない。恐らく、生で聴くと、スゴイ声の歌手なんだろうけれど、録音では持ち味が出ないのだと、好意的に解釈する。オランピアなんて、グルベローヴァよりもいいし。

 彼女のアンナは、同じように畑違いの、同種のソプラノである、ニルソンやグルベローヴァよりも、明らかに押しが弱い。ツェルリーナがムリして歌ってるぽい。発音も、なんだかたどたどしい。言い過ぎましたが、無理やり違いを考えると、こんな感じですね。

 さてエルヴィラのシュヴァルツコップです。
これが、とてもいいのです。評判からすれば、そんなことあたりまえ、なのでしょう。でも、ジュリーニの『フィガロの結婚』、ベームの『コジ・ファン・トゥッテ』が特にいいと思わないので、ついでにここで歌っているシュヴァルツコップもいいと思っていませんでした。

 ああ、若い頃のシュヴァルツコップはよかったのに、60年頃になるともうダメなんだと、思っていました。やっぱりEMIの技術的何かのせいなのではないかという疑いが深まってきました。

 ついでにフルトヴェングラーの53年のライブでのシュヴァルツコップの歌唱も聴いてみました。このジュリーニ盤の方がいいですね。というかここでのエルヴィラ以上の歌唱は思いつきません。

 伯爵夫人ロジーナでは、古い方のカラヤンとフルトヴェングラー盤の方が、良いと思いますが、これはジュリーニ盤がいいです。ロジーナとフィオルディリージ、エルヴィラとマルシャリンは、デラ=カーザとダブルキャストみたいに公演して、あるいはレコーディングして、どっちかが記録に残ってますが、ほぼシュヴァルツコップで決まり。ですよね。


モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ ハイライト
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(全曲)


テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2012/06/22 20:54] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(1) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 ジュリーニ指揮 1959年 第1幕
ジュリーニ59



 ジュリーニ指揮の「ドン・ジョヴァンニ」は、かつては名盤としてよく採り上げられていたものです。しかし聴いていませんでした。なぜなら、LPからCDになった頃、初めて期待して買った『フィガロの結婚』のCDがジュリーニ盤でした。これまた名盤として誉れ高いものですが、良くありませんでした。

 両方とも、EMIレッグ・プロデュースで、クレンペラーの代役としてのジュリーニ起用です。だから、この「ドン・ジョヴァンニ」は、いままで興味を示さずにいたのです。いかに『フィガロ』にガッカリしたか。


『ドン・ジョヴァンニ』 ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団
ロンドン,アビー・ロード・スタジオ EMI 1959.10/7~15、11/23,24 61m+65m+36m

ドン・ジョヴァンニ:エヴァーハルト・ヴェヒター
ドンナ・アンナ:ジョーン・サザーランド
ドンナ・エルヴィラ:エリザベート・シュヴァルツコップ
ドン・オッターヴィオ:ルイジ・アルヴァ
レポレロ:ジュセッペ・タッディ
騎士長:ゴットローブ・フリック
マゼット:ピエロ・カプッチルリ
ツェルリーナ:グラツィエルラ・シゥッティ


 名盤として有名なこの『フィガロの結婚』、ベームの『コジ・ファン・トゥッテ』、その他カラヤンのこの時期のレコーディング。どうも気に入らないのです。ベームの演奏なんて、55年のデッカ、74年のグラモフォン盤の方が好きです。(だからこの頃のは、あんまり聴いていない)

 それが、予想に反して,今回の『ドン・ジョヴァンニ』は名演だと思いました。フルトヴェングラー、ワルター、クリップス、ベーム、クレンペラー、カラヤンを除けば、十分名盤でしょう。音が気持ちいいのです。

 なぜそうなのか、考えてみました。この当時のEMIフィルハーモニアの録音のほとんどは、キングスウェイホールとなっています。ところが今回、他にここを使った例があるのか知らないけれど、アビー・ロード・スタジオ録音です。ビートルズのアビー・ロードです。

 キングスウェイホール録音でも、64年のクレンペラー「魔笛」はいい音です。これはレッグがスタジオから追い出され、ピーター・アンドリューがプロデュースしているせい?。1955年録音のデッカのモーツァルト4部作や「影のない女」を制作したオロフと共に、EMIに移籍していました。

 というわけで、アビー・ロード・スタジオのせいなのか、初期のCDマスタリングの音が悪すぎたのか、エンジニアが変わったのか、原因は良くわかりません。ビートルズもラバー・ソウルとリボルバー、ホワイトアルバムとアビーロード、まさにそこで、全く音が変わっていますよね。

 なにを今さらでありますが、
 この『ドン・ジョヴァンニ』、ジュリーニを見直すような良い演奏です。



モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ ハイライト
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(全曲)

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2012/06/19 18:25] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(1) | コメント(0) | page top
「ドン・ジョヴァンニ」 ベーム指揮 プラハ1966 第1幕
bohm66LP.jpg





 ベームの「ドン・ジョヴァンニ」といえば、1977年のザルツブルグ音楽祭ライブの方が有名です。なぜこのベーム唯一のスタジオ録音が、それほど人気がないかというと、オケがウィーンとかベルリンとかフィルハーモニアとかじゃないせいもあるのではないかと思います。なにしろプラハ国立劇場管弦楽団とプラハ・チェコ合唱団です。

 ベーム以外でも、めったに聞くことのない名前ですが、よく考えると、モーツァルトに「ドン・ジョヴァンニ」を注文したのは、そして初演したのは、プラハでしたね。そのせいか、このレコーディング風景は映像も残されているようです。

 現代の、たとえばガーディナーとかハーディングとかの演奏、あのアバドでさえ少し古いものとは全く違った演奏をします。アバドにはもっとゆったり堂々とした、横綱のような演奏をしてほしかったのに、現代的で早くて軽い仕上がりになっており、がっかりしているこのごろの演奏です。

 そういう現代的演奏に比べると、ベーム1977年盤を買った当時からなんとなく感じてはいましたが、フルトヴェングラー、カラヤン、ベーム新の演奏は、かなり近いものです。同じ伝統に生きているのでしょう。他の曲はそうではありませんが、「ドン・ジョヴァンニ」はそう感じます。

 ところがこの1966年のプラハ盤は、ちょっと違います。非常に繊細な表現で、フィナーレのような、強烈な全奏部分でも、弱めにソフトに仕上げています。テンポには、ハッとするような奇をてらったところはありません。

 ベームは、『コジ・ファン・トゥッテ』でも『フィガロの結婚』でもフィナーレが、他の指揮者に比べて、特別感動的に仕上がっています。フルトヴェングラー、カラヤンともに「tutto tutto gia gi sa」からの第1幕終結部、ありあまる勢いを押さえるかのような、平坦な終わり方をします。なにか含みがあるようです。

 ベームの演奏は、特にこの66年盤は、ちゃんと熱く盛り上がって、感動につつまれ終わります。オケが弱めなのに、歌手の声がよく通るので、熱気が伝わってきます。

 ベームの1967年盤と1977年盤はずいぶん違った演奏です。歌手の名前だけ見れば、文句なく1967年盤ですよ。ペーター・シュライアーだけ共通しているのも、なんだか良いですね。


ドン・ジョヴァンニ……ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
ドンナ・アンナ……ビルギット・ニルソン
ドン・オッターヴィオ……ペーター・シュライアー
ドンナ・エルヴィラ……マーティナ・アーロヨ
レポレロ……エツィオ・フラジェルロ
マゼット……アルフレード・マリオッティ
ツェルリーナ……レリ・グリスト
騎士長……マルッティ・タルヴェラ
プラハ国立歌劇場管弦楽団&プラハ・チェコ合唱団
1967年2~3月、プラハ


ドン・ジョヴァンニ……シェリル・ミルンズ
ドンナ・アンナ……アンナ・トモワ・シントウ
ドン・オッターヴィオ……ペーター・シュライアー
ドンナ・エルヴィラ……テレサ・ツィリス・ガラ
レポレロ……ワルター・ベリー
マゼット……ダーレ・デュージング
ツェルリーナ……エディト・マティス
騎士長……ジョン・マカーディ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団&ウィーン国立歌劇場合唱団
1977年7月29~30日、8月1、4、8、18、27日、ザルツブルク



 

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2012/02/23 21:31] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 バレンボイム指揮 スカラ座 第2幕
netrepco1.jpg



 さて、エルヴィーラのアリア。これも重要な曲だ。ここで、5重の奥行き舞台の奥にさらに10重ぐらいの書き割り奥行き舞台装置が現れる。ものすごい遠近法というか、トンネル状に奥行きがある。しかし、そっちに気が取られて、歌に集中できない。

 そしてエルヴィーラのアリアが終わると、その書き割り15重の舞台が全部、上に持ち上げられて、舞台上は倉庫の中のようになる。だから、そんなところで驚かすなって。

 その背景に、何やら四角くてペラペラのものがあると思っていたら、最初に出てきたスクリーン状の鏡だった。その鏡に映る、客席側舞台の上と左右の幕が映っていたのだ。さらに良く見ると、客席の人たちまで映っている。

 騎士長が登場して、ジョヴァンニを誘うところ。なんと、その鏡の中央部で騎士長が歌っている。これも最初に映し出された、ローヤルボックスに座る、ナポリターノ大統領夫妻とモンティ首相夫妻の間に立って歌っているのが、ペラペラ鏡に映っているのだ。おお怖い。心霊写真の幽霊みたいだ。(まあ、死んでるんだけど)

 さて第2幕のアンナの大アリアもたいへん見事なもの。同じ名前ながらアンナ・トモワ=シントウの歌唱に近い。それにしても、アンナ・ネトレプコにしてからが、1幕・2幕のアリアしか印象にない。他の歌手の歌はもちろん、印象に薄い。生ではなくて、ビデオなのでなおさら演出にのみ引きずり回された感じだ。

 フィナーレの幕が開くと、今度は平面書き割りのスカラ座客席。先に鏡に映っていた5階までの全体像だ。その前に、左右に長すぎる最後の晩餐風白い食卓。舞台の端から端まであるくらい長い。そこへ、エルヴィーラがやってきてテーブルの上に乗る。下着姿で色っぽく迫る。またまた歌の内容とは違い、2人は楽しく抱き合っている。アンナもエルヴィーラも抱かれたいのである。

 その平面書き割り板が上がって、煙の中に騎士長の登場。今度も背景はスカラ座客席だ。しかも、妙にブレがあって不安定さを感じると思ったら、3段階の奥行きのある曲面のハリボテを重ねたものだ。どんだけ、バリエーションをつけるねん。

 あいかわらず騎士長は、胸から血を滴らせており、こんどはジョヴァンニを刺す。ジョヴァンニが倒れると、舞台上は真っ赤に燃え上がるが、同時に上から大ハリボテ緞帳が下りてくる。同時に、左右から他の5人が出てくるのだが、緞帳で狭くなってくる赤い背景に、5人のシルエットが美しく映る。

 さらに5重唱が終わる終結部、後ろの大ハリボテ緞帳が上がると、ジョヴァンニがタバコを吸いながら前に向かって歩いてくる。それと同時に細長い亀裂が出来て、夜の女王の地獄落ちのように、5人だけ下に落ちていって、ジョヴァンニのみ舞台に残る。

 4人の名歌手は、やや歳をとったかなという気がしてしまう。
まあ、死なない「ドン・ジョヴァンニ」は、だれしも見てみたいのでは。 
ロバート・カーセンと、アンナ・ネトレプコの一人舞台だった。


ダニエル・バレンボイム指揮  ミラノ・スカラ座O&Cho BS ★★
ロバート・カーセン演出  2011年12月7日ライブ収録、25日放映
 Ⅰ.93m45s(序曲 5m59s)  Ⅱ.83m10s

ドン・ジョヴァンニ=======ペーター・マッテイ☆
ドンナ・エルヴィーラ======バルバラ・フリットリ
ドンナ・アンナ=========アンナ・ネトレプコ★★
ドン・オッターヴィオ======ジュゼッペ・フィリアノーティ
レポレロ============ブリン・ターフェル★
ツェルリーナ==========アンナ・プロハスカ
マゼット============ステファン・コツァン
騎士長=============クワンチュル・ユン

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2011/12/29 16:53] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 バレンボイム指揮 スカラ座 第中幕
スカラ2011-3

スカラ2011-2



 マゼットはスネ夫で、ツェルリーナもお似合いな感じだ。スーツ着てるけど、そして回りのみんなもドレスアップしているが、主役たちに比べてひどく見劣りがする。それでもいいのだけど。

 ハリボテ幕の板を裏返しにして重ねた背景が、村の祭りの舞台。これが、なんだか普通の舞台っぽい。ジョヴァンニとツェルリーナの2重唱は、そこそこ。別の上着を着たエルヴィーラが現れて、みんなを説得する5重唱。ハリボテ大幕1枚の前で起こる。

 さて、ジョヴァンニが「アディーオ」と去ると、あの男こそ犯人と気づく、アンナの大アリア。ここでネトレプコが本領発揮。なにしろ太っているので、容姿よりも歌唱力で他の歌手を圧倒。どこで歌っても、グルベローヴァの時のように、ネトレプコだけ声量が違って他の歌手がみすぼらしい。

 戦艦大和を使った、大砲巨艦主義のような戦いはどうしたものだろう。しかしここが第1幕で、最も良かったところです。歌い終わると、パンダのような大きめのサングラスをかける。

 ここからフィナーレに入る時、今までもずっと舞台の緞帳ハリボテだけの舞台装置だったが、古いオペラ劇場にありがちな、舞台の奥に向かって段々小さくなっていく、左右の柱と天蓋が5重に重なって奥行きを感じさせる舞台装置となる。

 アンナ、エルヴィーラ、オッターヴィオの3人が、左手から歩いてきて、指揮者バレンボイムの後ろに立つ。舞台上のレポレロとピットを挟んで招待される。それから前を向いて歌う。客席の人は、歌手が近すぎてビックリじゃないのかな。

 最後にドン・ジョヴァンニがみんなに追い詰められる場面では、村人全体が、パーティーのドレスを脱ぎ、スーツ姿になって迫ってくる。バレンボイムの指揮は、アバド、ガーディナー、ショルティ、ハーディングなど最近の颯爽とした速めの演奏と違って、古い重厚長大、ゆったりテンポの演奏だ。


 第2幕は、いままでとちょっと違う舞台の変化がある。
大ハリボテ中幕に窓が開いており、そこからエルヴィーラが歌うのを、ジョヴァンニとレポレロがからかっている。

 その中幕が上がると、エルヴィーラが現れる。やいなや、その後ろの同じデザインの幕も上がる。と見せかけて、実は、ジョヴァンニのいる舞台前方はそのままで、奥の方が床ごと1mぐらい持ち上がる。演出がちょっと面白くなってきた。

 ジョヴァンニがセレナーデを歌うと、メイド姿の女の子が飛び込んできて、キスをする。彼は時々、上の世界へ行って、レポレロのふりをする。が、下に降りると、他の人には見えない設定だ。

 ツェルリーナの薬の歌は上で、下ではジョヴァンニとメイドがいちゃついているのである。この時舞台奥は、1幕フィナーレの時と同じ5重に奥行きを出している舞台。

 さて、ここで中幕フィナーレです。正確に言うと、フィナーレのような重唱曲です。この盛り上がりが終わったとたん、下段にいた2人は、右手に立ち去ります。このとき、いつのまにか、メイドは真っ裸になっています。それも、右に行きかけて、忘れ物を取るために、いったん体前を客席側に見えるようにぐるっと回転してもどります。ブーツを履いているだけで、完全に裸でした。

 このように、歌が終わるたびに、ビックリする刺激入り演出で、名唱を味わうというようなところは皆無であります。


テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2011/12/28 18:23] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 バレンボイム指揮 スカラ座 第1幕
スカラ2011-1



 クリスマス12月25日の夜と言えば、小田和正「クリスマスの約束」ですが、同じ時間にスカラ座の今シーズン・オープニング『ドン・ジョヴァンニ』の放映があります。「クリスマスの約束」は、年々、ゲストが増えるほどに、レベルが下がっているような気がします。なんだか、若者に合わせているばっかりで。

 そんなものはちょっとだけにしておいて、スカラ座です。バレンボイムの音楽監督就任最初の記念すべきプログラムでありまして、力が入っています。 ナポリターノ大統領夫妻とモンティ首相夫妻がロイヤルボックスに立って一礼し、国歌を演奏してから、本番が始まります。

 まず、配役を見ていただければ、主役の4人が実力者です。マッテイ、フリットリ、アンナ・ネトレプコ、ターフェルと、期待でむずむずしてきますね。で、この4人は配役にピッタリですが、他のキャストは見ためが異質です。


ダニエル・バレンボイム指揮  ミラノ・スカラ座O&Cho BS ★★
ロバート・カーセン演出  2011年12月7日ライブ収録、25日放映
 
Ⅰ.93m45s(序曲 5m59s)  Ⅱ.83m10s

ドン・ジョヴァンニ=======ペーター・マッテイ☆
ドンナ・エルヴィーラ======バルバラ・フリットリ
ドンナ・アンナ=========アンナ・ネトレプコ★★
ドン・オッターヴィオ======ジュゼッペ・フィリアノーティ
レポレロ============ブリン・ターフェル★
ツェルリーナ==========アンナ・プロハスカ
マゼット============ステファン・コツァン
騎士長=============クワンチュル・ユン


 ドン・ジョヴァンニが客席後ろから歩いてきて、指揮者の後ろまで来たところで、タクトが振り下ろされる。重低音が響き渡るやいなや、走り出したジョヴァンニは左手を通って舞台の緞帳を引き落とす。中には、客席があった。スカラ座の5階建て馬蹄形の客席が、鏡に映し出されている。鏡といっても、薄いペラペラなもので、真っ直ぐにではなくて、ポヨーンポヨーンと揺れながら、客席を映し出していた。

 幕が開くと、中間の幕の手前にベッドがある。今回は、スカラ座の緞帳と同じ模様を描いた、ハリボテの幕が、何層にも重なって出てくるのだ。だから舞台装置的には、変化がなくて面白味に欠ける。

 そのベッドの上で、おっぱいがこぼれ落ちそうなアンナ(どっちもアンナだなー)とドン・ジョヴァンニのマッテイが、けっこう楽しくくんずほぐれつしている。アンナはセリフでは拒否しているが、演技はジョヴァンニを受け入れている。

 そんなことよりも、衝撃的なのは、あのアンナ・ネトレプコが太っているのだ。だから、馴染みのネトのような気がしない。マーガレット・プライスか若き日のビルギット・ニルソンみたいだ。昨年の「椿姫」では、こうじゃなかったのに。なんだか、楽しくないぞ。

 そして騎士長は、出てくるなり刺され、胸から赤い血が噴き出して、ベッドの上に倒れる。それにさわった、ジョヴァンニもアンナも服に血が付く。アンナは左胸が赤くなる。なにもこんなところ、生々しく現実的に見せなくてもいいじゃないか。

 この舞台装置は質素でありながら、写実的な演出は、始めのうち反抗的な気分がふつふつと湧いてきて、演奏に集中できなくてこまった。演出が目立つな!


 エルヴィーラはバルバラ・フリットリ。彼女だけ、リサイタルで聴いたことがあるので、残念ではありますが、歌は残念です。他の3人に比べ非力に感じます。帽子にマフラーにロングコート。スーツケース2個を引いた侍女をしたがえての登場です。ジョヴァンニを捜すツアー中に立ち寄ったという体ですね。

 この役は、アン・マレーとかユリア・ヴァラディの方が、古くはシュヴァルツコップなどの方が、適役ではないか。エルヴィーラこそが、このオペラの主役だと思っている。

 ジョヴァンニを見つけると、コートを脱いで、黒い下着姿になる。これはエルヴィーラだけではなくて、他の女性もその傾向がある。いいことだ。先ほどから言っている、舞台の幕のついたてが4枚、くんずほぐれつ移動して、後ろに人が隠れたりしている。

 レポレロはブリン・ターフェル。ガーディナー盤では、マゼットを、ショルティ盤ではジョヴァンニを歌っているから、どの役でも立派に歌えるのだが、今回は上背のあるマッテイに主役をゆずってやった、というところか。

 その1003人アリアでは、ついたてを裏にすると、何やら細かい線が引いてある。くさび形文字にも見えるが、5本の線がひとまとめになっている。日本の「正」の字を書いて数を書き留める方法と同じって事か。それでまあ、1003人制覇の証明とする。しかし、よっぽど目が良くないと、あるいは舞台に近くないと見えないのではないか。

 レポレロが歌い終わって去ると、エルヴィーラは、なぜか残してあったレポレロの上着を着て立ち去る。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2011/12/26 21:59] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(4) | page top
「ドン・ジョヴァンニ」 ブルーノ・ワルター指揮 メトロポリタン歌劇場ライブ1942
pinza.jpg

☆エツィオ・ピンツァの「ドン・ジョヴァンニ」 違うCDだけど


 先週、いつもは見ることのないブックオフの中古CDコーナーを見ていて、\1250の値札がついた「ドン・ジョヴァンニ」のCDを見つけた。けっこう他のCDは、高くて買う気がしなかったが、これなら外してもいい値段だ。音、悪そうだし。

 ワルターということはわかるが、輸入盤なので、配役などわかりにくかった。
ピンツァ、ノヴォトナ、サヤン、キプニスとメトの常連みたいな歌手が載っているので、まあ、あの有名なワルター盤だろうとおもって買った。

ブルーノ・ワルター指揮 07/03/1942 NUOVA ERA 1989 Made in Italy
ドン・ジョヴァンニ=======エツィオ・ピンツァ
ドンナ・エルヴィーラ======JARMILA・ノヴォトナ
ドンナ・アンナ=========ROSA・バンプトン
ドン・オッターヴィオ======シャルル・クルマン
レポレロ============アレクサンダー・キプニス
ツェルリーナ==========BIDU・サヤン
マゼット============マック・ハーレル
騎士長=============ノーマン・コードン


 これが聴いてみたら、音質が良い。
今まで、メトのライブというと、「ジークフリート、タンホイザー、フィガロの結婚」を持っているが、そのどれよりも音がいい。最近聴き直した、「フルトヴェングラーのスカラ座リング」よりもはるかに良くて、カラヤンの1950年スタジオ録音の『フィガロの結婚』と同じくらい聴きやすい。

 なにしろ安価に売っていないために、名演と評判の高い、1937年ザルツブルグ音楽祭ライブは、両方とも聴いていない。したがって、こっちの方がすごいとは言えないのだが。このメトのワルター録音、「フィガロ」は音質がひどくて楽しめなかったが、「ドン・ジョヴァンニ」はひと味違う。

 最近、現代的なキビキビ速くて軽い演奏が多くて、ガーディナー、ハーディング、そして期待していたアバドなどの演奏に、ちょっとガッカリしていたところだ。そこにこの圧倒的名演。まだ、フルトヴェングラーもベームもカラヤンも採り上げていないけど、このワルター盤が、もっとも衝撃を受けた演奏であるのは間違いない。
なにしろ、もう4回も聴いた。

 こんなに激しく胸を掻きむしる「ドン・ジョヴァンニ」は聴いたことがない。
序曲から、オケの全奏にティンパニの強打が、まるで絨毯爆撃のよう。最初からエツィオ・ピンツァの見事な声量のある声。こんなエンジン吹かしすぎの演奏で、最後まで持つのだろうか。

 エツィオ・ピンツァは、ワルターのザルツブルグ、メト両方の「ドン・ジョヴァンニ」「フィガロの結婚」で主役を歌っている。ピンツァなしでは上演できない。

  ピンツァについてドナルド・キーンの本から抜粋すると。
《敬愛する数多くの女性歌手の中から、さらに最愛の歌い手をただ一人選び出すなどということは、至難の業といっていい。フラグスタート?シュヴァルツコップ?カラス?それとも現役の誰か?その時の気分によって、答えは変わりそうだ。だが、男性歌手の場合、誰が最高か、まったく疑念の余地がない。エツィオ・ピンツァだ。》

 ドン・ジョヴァンニもドンナ・アンナも、もちろん指揮もフルトヴェングラー盤よりもいい。そして、序曲もさることながら、なんといっても第10曲ドンナ・アンナのレチタティーヴァとアリア。この曲は、このオペラの要、「ドン・ジョヴァンニ」の主題のような曲。アンナは、ドン・ジョヴァンニこそ、父親を殺した犯人と気づき、ここに復讐を誓う。ベーム、カラヤン両盤で歌っている、アンナ・トモワ=シントウも大好きだが、それもいまや霞んでしまう。

 第1幕フィナーレも、フルトヴェングラー、ベーム、カラヤンなどの巨匠は、テンポをほとんど変えないで、はやるオケと歌手を押さえるような緊張感を出しているが、ワルターは歌手がオケに付いていけないぐらい、ここまでやるか、思い切り盛り上げている。

 地獄落ちでは、騎士長の最低音に、ティンパニの強打、ピンツァの雄叫び、花火のような効果音まで加わって、ほんとに爆撃されているようだ。拍手が入っても、間髪を入れずの6重唱では、普通はちょっと気分を変え、しゃれた雰囲気にして終わるものだが、歌手たちは声を嗄らして歌い、拍手もかぶる怒濤の進撃のうちに曲が終わっている。






  


  

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2011/11/15 18:48] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
カール・ベームのモーツァルト・オペラ録音
bhom2shoss.jpg

☆写真の二つは違うモノです。


 数ヶ月前、ほとんど20年ぶりぐらいに、ベーム1968年の『フィガロの結婚』ベルリン・ドイツ・オペラ盤を聴き直してみた。もともと最高の演奏だと思っていたのだが、いろいろな盤を聴いてきて、さらに一層、磨き抜かれたような演奏に感じた。


 ベームのスタジオ録音は、カラヤンと比べてなんだか妙だ。
まず、私の聴いているのでは、1955年に英デッカがステレオ録音を始めた年に、『フィガロの結婚』、「コジ・ファン・トゥッテ」、『ドン・ジョヴァンニ』、「魔法の笛」、『運命の力』、『影のない女』があり、そのうち、なんと半分の3つがベームの指揮でウィーン・フィル。ここまでは快進撃です。

 ところが、デッカに、ベーム嫌いのカルショーがやってくるや、追い出される。(まあ、そのように見える)そして、残念ながら、ショルティが救われる。

 その後、
『フィガロの結婚』1956 ウィーン交響楽団 フィリップス (未聴)
「コジ・ファン・トゥッテ」1962 フィルハーモニア EMI
「魔法の笛」1964 ベルリン・フィル グラモフォン
「ドン・ジョヴァンニ」1967 プラハ国立歌劇場 グラモフォン (未聴)
『フィガロの結婚』1968 ベルリン・ドイツ・オペラ グラモフォン

 このうち、3つは押しも押されもしない名盤であるが、なんと、オーケストラが全部違っているのだ。コンナコトって普通、ありえないと思うのだが。まあ、これでも快進撃ではある。

 途中、私の嫌いな、「ユニテル映画」も制作されるが不問に処す。ウィーン・フィルの演奏で、音声だけならそんなに悪くない。


 そのあとはグラモフォンから(予算がないのか)ライブ録音。
「コジ・ファン・トゥッテ」1974年8月28日、ザルツブルク音楽祭。
「ドン・ジョヴァンニ」1977年7月29~30日、8月1、4、8、18、27日、ザルツブルク、当然ウィーン・フィル。

 この「コジ・ファン・トゥッテ」誕生日一発録りライブは、名盤で、確か吉田秀和も、ベームの名盤と言うよりも、モーツァルト演奏史に残る演奏!みたいなことを書いていた。

 さて、この1977年ライブ「ドン・ジョヴァンニ」。ベームの亡くなった頃に出たような気がするが、はたしてベーム本人のOKが出ていたのだろうか。それと、この件は、どこにも書いてあるものを見つけられないので、知っている人は教えてほしい。当初LPの演奏と、(もちろんそれと同じ表紙のCDも出ていた)廉価版で出ているCDのテイクが違うのだ。

 元LPの方が、編集が強いみたいで、歌をキッチリ歌っている。見事な歌唱が入っている。それに対して、廉価版は、こっちも編集してあるのだろうが、ちょっと生中継っぽいラフさと自然さがある。「コジ・ファン・トゥッテ」の音に近い。ラジオ放送用に作ったものかもしれない。

 今回は、あらためて聴いた『フィガロの結婚』がよかったので、「魔法の笛」も聴き直してみようかと思って、聴いて、それを書こうとし始めたら、こうなったのでした。

そこで一言、1964年ぐらいまでのディースカウはいける。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2011/08/04 20:16] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ドン・ジョヴァンニ』 新国立劇場 2008年12月9日公演
新国0812

★★
20081211
コンスタンティン・トリンクス指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
グリシャ・アサガロフ演出 、美術・衣裳 ルイジ・ペーレゴ  新国立劇場合唱団
新国立劇場 2008年12月9日公演

Ⅰ.85m 休憩25m Ⅱ.80m アバウトです。

ドン・ジョヴァンニ======★ルチオ・ガッロ(バリトン)
レポレッロ==========アンドレア・コンチェッティ(バス)
マゼット===========久保和範(バス)
ドン・オッターヴィオ=====★ホアン・ホセ・ロペラ(テノール)
ドンナ・アンナ========エレーナ・モシュク(ソプラノ)
ドンナ・エルヴィーラ=====アガ・ミコライ(ソプラノ)
ツェルリーナ=========高橋薫子(ソプラノ)
騎士長============長谷川 顯(バス)


 今回の新演出『ドン・ジョヴァンニ』、新国立劇場にしては、めずらしく、満足です。
前回の「リゴレット」は(も)、特におもしろくなかったし。
B席3FL4-5という、横ではあるが、かなり前方の席で、2Fセンターよりも声がよく聞こえそうな気もするぐらい良い席。まあ、そのように、席がよかったせいも考えられるが、感動的な良い演奏だった。

 先に悪いところを言うと、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。よく聴いているフルトヴェングラー、ベーム、カラヤンなどなどの音とものすごく違う。音の成分の何かが欠けている。楽器が足りないのじゃないかと思うぐらいだ。金管とヴァイオリンの音は普通に聞こえるのだが、他の音が足りない。

 ヴェルディのオペラの時は、「仮面舞踏会」「ドン・カルロ」「リゴレット」など、大して感動もしなかったが、こんな不満は感じなかった。もしかして、それらより聞き慣れている『ドン・ジョヴァンニ』だからこそ、不満を感じるのか。

 演出の舞台装置は、思った以上に威厳と変化があって感動的だった。全体的に不満はないが、チェスの駒の馬みたいなのが、随所に出てきて違和感を感じた。背景にヴェネチアらしい映像がときおり映るのだが、本物のヴェネチアではなく、あくまでもそれらしく作った白黒写真。こりゃあ変だ!、もうちょっとうまく作れば、と思った。

 演出のグリシャ・アサガロフ。解説によると、ウィーン国立歌劇場主席演出家、チューリッヒ歌劇場芸術監督だそうな。そんな偉い人だとは、つゆ知らず、失礼しました。  

 コンスタンティン・トリンクスの指揮も、もちろん初めての経験だ。じゃっかん速めの演奏で、第1幕フィナーレなどは、大指揮者はほとんどテンポを変えないが、終結に向かってさらにテンポを速めた。まだ若い指揮者だから、速くして盛り上げるのが普通だろう。でも、しかし、ツボは外さず、感動的だった。

主役の中で、残念なことに、ひときわ声に力がないのがドンナ・エルヴィーラのアガ・ミコライ。だいたいこの役は、いちばん有名なベテラン歌手が歌うものだ。以前実演で聴いたときも、この役が、もっとも心に響いた。したがって、両幕のアリアはもちろん、フィナーレの盛り上がりを削ぐ結果になっている。

日本人の歌手では、騎士長の長谷川顯が、まったく立派な声でビックリした。マゼットとツェルリーナもそんなに悪くない。ただ発音が、いつも聴いているのと、ちょっと違うような気がする部分もある。この2人が出てくる、農民の場面は、他の部分に比べて聞き劣りがした。つまらなかったのだ。

レポレッロは、ちょっと声が弱いが、ドン・ジョヴァンニとの違いが分かりやすくて、かえってよかったような気もする。歌い回しに問題は感じない。

 ドンナ・アンナのエレーナ・モシュク。声も立派で、彼女が出てくる場面の緊張感はひときわ優れており、特に、第10曲、ドン・ジョヴァンニが犯人だと気づくところが第1幕でもっとも切迫していた。オケの演奏は、むしろ凡庸であった。ずっと最高だと思っていたのだが、第2幕、フィナーレ直前の大アリアが歌えていないのが残念でした。

 ドン・オッターヴィオ役、★ホアン・ホセ・ロペラは、むしろ、声が立派すぎる。声に力があるだけではなくて、大抵つまらない両幕のアリアが、しっかり存在意義のある歌になっていた。マイスタージンガーのヴァルターのように、歌い出すと、舞台がキリッとしまる。

 さて、たいてい残念な思いのする、主役ドン・ジョヴァンニであるが、★ルチオ・ガッロはほとんど文句のない立派なできばえ。シャンパンの歌は十分力強いし、ツェルリーナとの2重唱も美しく、セレナーデもうっとりするほど魅惑的。そして、めったにないことに、声に力がある。彼ならアルマヴィーヴァ伯爵も期待できるのではないか。

 『ドン・ジョヴァンニ』の微妙な動きのフィナーレを快速で締めくくった後、オケのみんなに思いっきり拍手をして、指揮者は去っていった。まだ、10回ぐらいしか見てないけど、わたしが接した新国立劇場公演の中で、もっとも感動したものに違いない。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2008/12/13 17:18] | ドン・ジョヴァンニ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
| ホーム | 次のページ>>