『ファルスタッフ』新国立劇場公演   2007年6月19日(火)
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 2004年に新演出されたものの再演。指揮とオーケストラは活気と勢いがあってなかなか良い演奏をしている。しかし、フォルテ部分の金管楽器・打楽器が荒れているので、もう少し指揮者がコントロールできればさらに良かったのではないかと思う。以前の小澤征爾の時よりも、感動的な演奏だったのは間違いない。

 演出は随所に面白い部分があった。しかし装置が、第2幕第2場を除いて、いただけない。高さ10mぐらいの正方形パネルが4枚、「W」の字を手前に倒したような舞台。その上に3m幅ぐらいの長い板2枚で「V」の字をこちらに倒したような形で置いてある。その上空のV字には、ウインザーの眺望であろうか、半分大地、半分空の風景が描かれている。この風景画は、終始不自然だった。

 床には、フェルメールの絵にありそうな白黒の格子模様。大げさに遠近感を付けてあって、一番手前では4m角ぐらいなのだが、奥の方へ行くにしたがって小さくなり、一番奥の方は20cm角ぐらいになり、あまりに不自然な床だ。この床の模様が壁の下の方にも、少しだけ不自然にずれて描かれている。床が少ししか見えないガーター亭の時はそれほど目立たないのだが。

 第1幕第1場から第2場へは、左右にあるV字パネルが、それぞれ回転してフォード邸の外壁に変わる。第2幕第1場は逆回転して再びガーター亭にもどる。第2幕第2場になってさらに回転して、二つの小さなV字だったものが、一つの大きなV字となる。第1幕第2場、ここで登場、4人の女性の衣装の光と影が美しい。しかし、日本人歌手2人が小柄なので4人がデコボコになって並んでいる。

 第1幕第1場と第2幕第1場のガーター亭は、古びた田舎の居酒屋だから、美しくないのもしょうがない。しかし、第2幕第2場のフォード邸の部屋の中は、本当にフェルメールの絵のように美しい。床の模様や、舞台上の制約で遠近感に無理があるベッドやクラヴィコードなど、よく見ればちぐはぐは部屋ではあるが、美しい。この時だけ、上空のV字と同じように部屋も大きな3角形になって、上と下の板がピッタリ合っている。第1幕第2幕を続けて演奏し、カーテンコールもなくすぐに会場が明るくなって休憩。

 第3幕になると上空のV字はそのままあるが、その形と全然別の四角の飛び出しがあるガーター亭の外になっている。第1幕第2幕と立て続けにやったわりには、第3幕の第1場が終わるとちょっと客席が明るくなり、若干の時間をかけて第2場が始まる。

 第2場になると下の壁は全部無くなり、象徴的な木の幹らしいものが数本立っているだけ。上空のV字はそのままあり、床の格子模様がずっと舞台奥まで見える。手前だけだと良かったのだけれど、舞台奥までめいっぱい不自然な四角形で埋め尽くされていると、急に現代的な舞台装置になったようで、ものすごく違和感がある。


『ファルスタッフ』新国立劇場公演   2007年6月19日(火)7:00pm 

ダン・エッティンガー指揮  東京フィルハーモニー交響楽団
ジョナサン・ミラー演出 新国立劇場合唱団

ファルスタッフ====アラン・タイタス
アリーチェ======セレーナ・ファルノッキア
フォード=======ヴォルフガング・ブレンデル
ナネッタ=======中村 恵理
フェントン======樋口 達哉
クイックリー=====カラン・アームストロング
メグ=========大林 智子
カイウス=======大野 光彦
バルドルフォ=====大槻 孝志
ピストーラ======妻屋 秀和

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 ファルスタッフのアラン・タイタスは、1991年録音のデイヴィス盤でフォードを演じていた。この盤では、以前フォードを歌っていたロランド・パネライがファルスタッフを演じている。若い頃フォードだった歌手が、後年ファルスタッフ歌いになるのはめずらしいことではないのだろうが、パネライ同様、アラン・タイタスもファルスタッフにしては、声が若い、というか固いような気がする。決して悪くはないのだが、名ファルスタッフ歌手をたくさん聴いてきたので、いまひとつ未熟な感じがぬぐいきれない。芸達者ではある。

アリーチェのセレーナ・ファルノッキア。初めてみる歌手だが、4人の外国人歌手の中では、いちばん声が弱い。小澤指揮の時も、予定されていたカティア・リッチャレッリの代役で弱い歌手だった。したがって実演で見た2回とも、ビデオの印象とは全く違って、アリーチェこそが主役といった雰囲気がない。しかしこの人、ムーティ・スカラ座ライブのバルバラ・フリットーリ同様、美しい顔と立派な立ち振る舞いで群を抜いている。美しさでは最高の歌手のひとり。双眼鏡でしっかり見たんだから間違いない。

 フォードのヴォルフガング・ブレンデルですが、実演で聴いたのは初めてです。ビデオやレコードでは何度か聴いていて、パッとしない歌手だと思っていました。欠点もなく無難にこなしているのですが、人を感動させるようなところが微塵もない、そんな歌手だと思っていました。ところがかなりの熱演で、いちばん声を張り上げ頑張っています。感動的なフォードを聴かせてもらいました。

クイックリー婦人のカラン・アームストロング。実演は初めてですが、この人がいちばんの名歌手という印象です。小澤の時もクイックリー婦人はフィオレンツィア・コッソットでした。今まで聴いた中で、最も素晴らしい歌手です。もしかして、実演では、クイックリー婦人こそが主役なのでしょうか。

 カラン・アームストロングは1979年ショルティ盤のアリーチェと、同年バイロイトにエルザでデビューしたときのと、双方ビデオで残っていて有名です。この公演のチケットを買うときには、勘違いしてカラン・アームストロングがアリーチェを歌うのだと思いこんでいました。そしたらなんとクイックリー婦人。ショルティ盤では、女性陣ばかりか、ここの村人すべてを支配している独裁者のような強力なアリーチェを表現していました。圧倒的にアリーチェが主役でした。彼女はオペラ歌手としては異例なぐらいスタイルのいい人でしたが、18年経って、普通のオペラ歌手・プリマドンナの貫禄が出てきました。クイックリー婦人にしては立派すぎると思いますが、彼女が演じると、アリーチェとクイックリー婦人が同格に見えるから不思議です。彼女の、歌唱と演技には大変満足しました。

 演出でいちばん面白かったのは、プロンプターいじり。第1幕第1場の最後で、ファルスタッフが、首だ!役立たず、出て行け!と、子分たちを下手に追い出すところで、プロンプターボックスから手が出て、「あっちだ!」と子分に指さすところがあった。プロンプターなんて、久しぶりに意識しました。それから最後のカーテンコールでも、舞台に立った指揮者が、プロンプターボックスから伸びる手と握手する場面もあった。

 それから全体の最後、『この世はみんな道化』『最後に笑う者が本当に笑うのだ』などみんなで歌っている中、ファルスタッフが最後の一言を、言う前にプロンプターのところへ行って、分厚い総譜を取り上げて、それをめくり、しっかり見て、最後の一言。
『人間みんな、いかさま師!』と舞台全員が1F客席を指さす。
わたしは格安4F席だったので、「いかさま師」と指さされなくてすんだ。
やっぱり最後に笑えないけど、けっこう満足して帰路についた。


諸書別館 -*-とはずがたり-*- ジョナサン・ミラー演出『ファルスタッフ』/新国立劇場

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[2007/06/20 23:01] | ファルスタッフ | トラックバック(3) | コメント(4) | page top
バーンスタイン指揮 ウイーンP.O. 
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 バーンスタインといえば、1970年代末、ウイーンPOとの『フィデリオ』『ベートーヴェン交響曲全集』『ブラームス交響曲全集』などのすばらしい演奏で、一気に一流の指揮者の仲間入りをしたような印象がある。ゆったりとした大家ふうのテンポで、曲の良さを引き出し、腹の底まで味わわせてくれる、といったものだった。

 それ以前の、バーンスタインのことはほとんど知らないが、若くしてニューヨーク・フルハーモニックの音楽監督になり、その当時はめずらしかったマーラー交響曲全集を録音しているアメリカ生まれの、変わった指揮者であった。


バーンスタイン指揮 ウイーンP.O. 1966年3月・4月
ルキノ・ヴィスコンティ演出

ファルスタッフ====フィッシャ=ディースカウ
アリーチェ======イルヴァ・リガブエ
フォード=======ロランド・パネライ
ナネッタ=======グラツィエルラ・シュッティ
フェントン======フアン・オンシーナ
クイックリー=====レジーナ・レズニック
メグ=========ヒルデ・レッスル=マイダン
カイウス=======ゲルハルト・シュトルツェ
バルドルフォ=====マレイ・ディッキー
ピストーラ======エーリッヒ・クンツ

 そのアメリカ生まれの指揮者バーンスタインが、ウイーン国立歌劇場に登場して話題になったときの演目をCBSがスタジオ録音したものである。これが、やはりこの当時のバーンスタインの演奏スタイルなのだろう。もし、この演奏が一度だけのライブ体験だったら、感激して、名演だったと讃えることだろう。しかし、繰り返し聴くとなると、疑問符が付く。

 ウイーンPOによって緩和されているものの、いささか勢いだけの、活きの良さだけで勝負しているような演奏だ。第1幕導入のアタックも強すぎる。その他の部分でも早くて、強弱を付けすぎ。新人のデビューコンサートのような、神経の行き届かない演奏で、速いテンポの演奏だったら、アバドの方がずっと大人だ。

 ファルスタッフ役のフィッシャ=ディースカウは、いつもよりも役に近い雰囲気はあるものの、「ディースカウの声だ!」という気は、やっぱりする。なんだか、無理がある。そのほかの歌手では、第1幕の入りから、うれしいことに、生きのいいゲルハルト・シュトルツェの声が聞こえる。この声で、この激しい演奏が、どれだけ救われていることか。このノリノリ状態でもディースカウは、いまいちのっていない。

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[2007/06/12 10:17] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
リッカルド・ムーティ指揮 ミラノスカラ座 ブッセート公演ライブ映像
 ミラノ・スカラ座が改修中のためブッセートにあるヴェルディ劇場での公演。古いオペラ劇場らしく、舞台もオケピットも狭い。1913年の歴史的舞台を再現していると表示される。オケの人数が少ないためか、いつものようなムーティの力強いアタックや切れ味は感じられない。全体に音量が少ない。その代わり繊細な響きや、テンポの緩急の自在さが増していて、味わい深い演奏になっている。狭いせいか、歌手の声がよく聴こえる。

 舞台装置もほとんど無く、ただの書き割りに近い。重唱部分でも、派手な演技は少なく、みんな一列に並んで歌う場面も多い。そんな制約のためか、逆に歌手は細やかな演技をしているようにも思える。演出家の力量がより必要とされるのではないか。


リッカルド・ムーティ指揮 ミラノスカラ座 ヴェルディ劇場公演ライブ
ルッジェーロ・カップッチョ演出 2001年4月

ファルスタッフ====アンブロージョ・マエストリ
アリーチェ======バルバラ・フリットーリ
フォード=======ロベルト・フロンターリ
ナネッタ=======インヴァ・ムーラ
フェントン======ファン ディエゴ・フローレス
クイックリー=====ベルナデッラ・マンカ・ディ・ニッサ
メグ=========アンナ・カテリーナ・アントナッチ
カイウス=======エルネスト・カヴァッツィ
バルドルフォ=====パオロ・バルバチーニ
ピストーラ======ルイージ・ローニ

 演出でちょっと変わっているところ。第2幕第1場最後にファルスタッフとフォードがガーター亭から外に出る時、音楽が終わって幕が閉まるその時、二人が幕の外に出て客席に向いてお辞儀をして第2幕の終わりとするのはおもしろい。フィナーレでも全員一列に並んで客席の方を向き、最後の台詞「人間みんないかさま師」と言うところで、客席を指さして終わる。

 ほとんど知らない歌手だが、歌手陣に特に不満はない。ファルスタッフもアリーチェも十分な歌唱だと思う。アリーチェは、先に見たライナ・カバイヴァンスカやカラン・アームストロングが凄みがありすぎて恐いアリーチェなのに対して、バルバラ・フリットーリはもう少し優しげで楽しく見ていられた。そしてプリマドンナ歌手としての貫禄もある。カラヤンのライブよりも後味がよく楽しめた。

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[2007/06/05 14:21] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
ガーディナー オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク
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ショルティ盤もいささか変わった配役をしていたが、こちらは全く知っている歌手がいない。しかし、古楽専門の歌手というわけではなく、経歴を見ると普通のオペラ歌手のようだ。オケは、ガーディナーが1990年に創設したもので、現代楽器制作者によって改良が加えられたオリジナルあるいはレプリカの楽器を使用しているそうだ。つまり古楽器演奏ということになる。この組み合わせで、ヴェルディの「レクイエム」と「聖歌四篇」の録音をすでにおこなっている。1998年6月のバーデン・バーデンで公演を行い、その成果をふまえてのレコーディングである。


ガーディナー指揮 オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク
モンテヴェルディ合唱団 1998年7月16-21日

ファルスタッフ====ジャン=フィリップ・ラフォン
アリーチェ======ヒレヴィ・マルティンペルト
フォード=======アンソニー・マイケルズ・ムーア
ナネッタ=======レベッカ・エヴァンズ
フェントン======アントネッロ・バロンビ
クイックリー=====サラ・ミンガルド
メグ=========エイリアン・ジェイムズ
カイウス=======ピーター・ブロンダー
バルドルフォ=====フランシス・エジャートン
ピストーラ======ガブリエレ・モニーチ

 第一幕では、いまひとつぱっとせず、ガーディナーにバッハの時のような凄みがないと感じた。特に、知らない歌手のせいか、主役の歌唱に違和感が強い。しかし、第二幕・第三幕と鋭い演奏にひきこまれていく。

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[2007/05/22 21:18] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
ショルティ指揮 ベルリンP.O. 1993年ライブ
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 ライブのせいか、いつものショルティのような固さがない。前回のビデオ用の演奏は、ウイーンフィルを使っているにもかかわらず、トスカニーニのような固く鋭い演奏だった。カラヤンがライブではソフトな演奏になっているように、ショルティもライブだと鋭さが後退し、テンポの緩急もはっきりついている演奏に仕上がっている。いや、だいぶ前回と時間の隔たりがあるから、自身の解釈が深まったと言えるのかもしれない。第1幕では、ショルティらしくなさにビックリし、誰よりも遅く、ぐっとテンポを落として演奏している部分もあり面白く聴けた。

ショルティ指揮 ベルリンPO 1993年3月6、8日録音 

ベルリンフィルハーモニーにおける演奏会形式のライブ録音

ファルスタッフ====ヨセ・ヴァン・ダム
アリーチェ======ルチアーナ・セッラ
フォード=======パオロ・コーニ
ナネッタ=======エリザベス・ノイベルイ・シュルツ
フェントン======ルーカ・カノニーチ
クイックリー=====マリアーナ・リポヴシェク
メグ=========スーザン・グラハム
カイウス=======キム・ペグリー
バルドルフォ=====ピエール・ルフェーブル
ピストーラ======マリオ・ルベーリ


 ファルスタッフという役は、ヴェルディの他のオペラのバリトン役をこなした人が、晩年になって取り上げるのが一般的である。ところがショルティのファルスタッフはちょっと変わっている。1963年の録音ではエヴァンズ、1979年のビデオではバキエ、そして今回1993年のヴァン・ダムである。あまりヴェルディのオペラで活躍していない歌手たちである。ファルスタッフで定評のある歌手を使わないのは、ショルティの考えあってのことだろう。

 そのせいで、ファルスタッフとアリーチェが、いまひとつその役らしくない。それが今まで聴いてきた他の全曲盤とちがって楽しめない原因だと思う。ショルティのオペラは、どちらかというと完璧な歌手陣に対して、指揮が固くて見劣りがするのが多かったような気がするが、ことファルスタッフに関しては逆で、ショルティの指揮の立派さに歌手陣がついていっていない。

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[2007/05/21 23:45] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
ショルティ指揮 ウイーンPO 1979年 ビデオ 第3幕
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 第1場 さらにファルスタッフを懲らしめるために、おびき出しの手紙を書く、恐ろしいアリーチェ。洗濯場でびしょぬれのファルスタッフが、ガーター亭の主人に、熱い酒を頼むところから音楽が始まる。「長年立派な騎士として生きてきたのに、洗濯物と一緒に川へ投げ込まれるとは」「世も末だ」「美徳などない」と嘆いているファルスタッフを、女性陣が陰で見て笑っている。全く同情する。

 そこへ、クイックリー婦人が手紙を持って現れる。悪魔を見たかのように驚いてひっくり返る。「ウインザー公園の樫の木の下で待っている」というアリーチェの手紙を読み上げる。

 第2場 仮装してみんなで出ていくが、実演ではなく映画のため、本格的な仮装をしている。よくあるオペラの仮面舞踏会ふうの仮面ではなく、ハロウイーンなどの完全な仮装である。ファルスタッフがいるところへ、まず、ナネッタの妖精が現れ、20人ぐらいの子供まで妖精姿にして登場する。町ぐるみで「ドッキリ」を仕掛けているのか。「あっ!人間がいた!」とファルスタッフをみんなでこづき回して、いじめる。

 そのうち、酒の匂いをさせた元手下バルドルフォに気づいて、この劇がインチキであることを悟る。そこでフォードが現れ、フォンターナがフォードであったことをばらす。ファルスタッフは、またまたビックリ。「おまえたちみんな塩のない料理だ」「俺なしでどうする」と開き直る。

 娘とカイウスを結婚させようと画策しているフォードが、カイウスとベールをかぶった女性の結婚を認めようとする。そこへアリーチェが、もう一組結婚するカップルがいるので、一緒に祝福する事を頼む。フォードが二組を祝福して、ヴェールを取ると、カイウスの相手はナネッタではなく、追加のもう一組がフェントンとナンネッタだった。アリーチェのしわざである。フェントンとナンネッタは、つまらないカップルであるが、「ばらの騎士」同様、若いだけがとりえの、なんでもない相手を選ぶもののようだ。若い頃には見かけが一番大事ですから。

 結婚の約束を一方的に反故にされたカイウス、ファルスタッフはもとより、フォードまで妻を疑ったという理由で、アリーチェに怒られている。アリーチェはすべての男を、虐げなければ気が済まないのだろうか。ファルスタッフはカメラ目線で、得意げに歌う。「人間すべていかさま師」「最後に笑う者が、本当に笑う」・・・・笑えない。

 アリーチェ役のカラン・アームストロングは、この年、バイロイトにエルザでデビューしている。同じくこの年、この演出をしている、ベルリンドイツオペラ監督でもあるゲッツ・フリードリッヒと結婚している。この映像ではファルスタッフよりもアリーチェの方が、主役の印象が強い。

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[2007/05/12 21:40] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
ショルティ指揮 ウイーンPO 1979年 ビデオ 第2幕
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 第2幕の音楽が始まる前に、幕間になにが起こっているのか、すじの進行具合のナレーションが入る。第1場のフォードの歌は、やっぱり「ドン・カルロ」のフィリッポのアリアの雰囲気がむんむんしている。

 その中の、一部カラヤン盤と訳が違って、よりわかりやすくなっている。
「ドイツ人にビールをあずけてもいい、オランダ人に配膳をまかせてもいい、トルコ人にタバコをあずけてもいい、しかし女房は目を離したらいけない」という訳。ドイツ人はビールを飲まずにはいられない、オランダ人は食事の準備中につまみ食いをする、トルコ人に禁煙は無理、というふうにとれる。この人たちと同じように、女房も必ず浮気をする生き物だから、監視を怠るな。つまみ食いは許しても、浮気を許すな、である。

 ファルスタッフが着飾って出てきて、フォードと、どちらが先に外に出るかを譲り合い、結局二人肩を組んで出るところ、ファルスタッフが太っているから出口につっかえてしまう。

 第2場 なぜだかアリーチェだけお風呂に入っている。他の女性は洗濯物の仕分けをしている。アリーチェ役のカラン・アームストロング、バイロイトの「ローエングリン」の映像より老けた印象がする。クイックリー婦人は、実演で見たコッソットに近い。ナネッタは、若き日のルチア・ポップみたいでかわいい。

ファルスタッフが部屋に入ってきて、始めてアリーチェに会ったとき、かわいい女を演じていて、なかなか見ていても気持ちいい。10人以上の手下を連れたフォードが、ついたての後ろに隠れているファルスタッフも、フェントンとナンネッタも見つけられないのはいかにも不自然だ。

 最後に、ファルスタッフを洗濯場の水の中に落とした後、アリーチェがフォードをにらみつけ、困惑した顔のフォード、そしてさらに渋い顔をするアリーチェのアップで第2幕が終わる。「私のことを疑ったわね!」と「ナネッタをハゲのカイウスと結婚させるつもり!」と言いたいものと思われる。

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[2007/05/11 21:08] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
ショルティ指揮 ウイーンPO 1979年 ビデオ 第1幕
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 これはユニテルの映画であるから、音楽を先に録音し、それにあわせて歌手が演技をして録画したものである。したがって、「くちパク」の、つまり口と声が合っていない不自然なところがある。通常のライブに比べて演技も大げさに感じる。舞台セットは時代背景に忠実、説明的で初心者にもわかりやすい。ファルスタッフと部下以外の配役は、映り栄えがする美しい顔の歌手を選んでいるようだ。

 映像が始まって3分ぐらい、タイトルロールが流れているあいだずっと、ファルスタッフの顔のアップ。パックをしているみたいに目・鼻・口部分以外に、包帯の切れ端のようなものを貼り付けている。その顔と、しばらくにらめっこ。カメラが引いて全身が映るのと同時に、威勢のいい音楽が始まる。入りのオケ全奏のアタックは強くて、トスカニーニに近い。キビキビしていて、音楽だけ聴いていると気持ちがいい。しかし、進行しているドタバタ劇に対して、緊張感と迫力がありすぎやしないか。


サー・ゲオルグ・ショルティ指揮 ウイーンPO 1979年録画  VHS
ゲッツ・フリードリッヒ演出 ユニテル制作ビデオ

ファルスタッフ====ガブリエル・バキエ
アリーチェ======カラン・アームストロング
フォード=======リチャード・スティルウェル
ナネッタ=======ユッタ・レナーテ・イーロフ
フェントン======マックス・ルネ・コソッティ
クイックリー=====マルタ・シルマイ
メグ=========シルヴィア・リンデンストランド
カイウス=======ジョン・ラニガン
バルドルフォ=====ペーター・マウス
ピストーラ======ウルリック・コールド

 第1幕第1場と第2場の間に、音楽なしの3分ぐらいの映像が挿入されている。イギリスの田舎町で、子供がファルスタッフからの手紙を二軒の家に配達するシーンだ。

 アリーチェがメグを呼んで、「大変なことがあったのよ」と、お互い手紙を交換して読み上げる。「あたし、軽く見られたのよ!」と、大変な剣幕。なぜ、二人に手紙を出しただけで、みんなの笑いものにされ、ひどい目に合わせられなくてはならないのか、女性陣の精神構造がいまいちわからない。アリーチェの統率力と手腕に脱帽ではあるが、いささか能力を誇示しすぎているようにもみえる。

 第1幕の終わりで、音楽がすべて終わりきらないうちに、映像に合わせてフェードアウトしてしまう。映画とはいえ、こんなことショルティが許すのか。

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[2007/05/08 12:08] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
カラヤン ザルツブルグライブによる 第3幕 ほとんどあらすじ
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第3幕 第1場 ガーター亭の前

 管弦楽による印象的な短い前奏がある。水の中に落され、さんざんのファルスタッフ。ワインを注文してからぶつぶつ不満を歌う。「ひどい世の中だ」「美徳なんてない」「すべて地に落ちた」「行け、老いたるジョン。お前の道を行け。お前が死んだら、真の男らしい男がいなくなる」第2幕第1場と同じ旋律も出てくる。「ひどい日だった」と言いながらだんだん気分が良くなってくる。「腹に入ったテムズ川の水に、ぶどう酒を注いでやるか」かなり長めのモノローグ。ここで、落とされたのがテムズ川だったことがわかる。この当時だって、かなり汚いはずだ。

 そこへクイックリー婦人現れる。「Reverenza」という第2幕第1場でも、第3幕第2場でも、婦人が登場するとき発する慇懃な挨拶をする。ファルスタッフは、やっと持ち直した気分も再びどん底に。悪魔が現れたかのような顔で、先ほどの仕打ちを非難する。それは誤解で、アリーチェは気があるからと手紙をわたす。手紙には「ハーンの樫の木の下で待つように」と書かれている。機嫌を取り戻したファルスタッフは、クイックリー婦人と共に外へ出る。その一部始終をみんなが後ろの塀からのぞいて見ている。フォードやフェントンまで。
 
ファルスタッフとクイックリー婦人がいなくなると、アリーチェ率いる全員が入ってきて復讐の手はずのうち合わせ。「女の復讐に失敗はない」と歌うのを聴いてフォードも居心地がわるそう。さらに「あなただって罰を受けてもいいわ」と、もう悪魔みたいなアリーチェだ。アリーチェ役のライナ・カバイヴァンスカは本当に凄みのある顔をしている。そしてみんなに指図をする。「森の緑の精・・・メグ」「妖精の女王・・・ナネッタ」「魔女・・・クイックリー婦人」そして「ハーンの樫の木の前で」と言って解散する。

 その後、フォードとカイウスが出てきて、結婚の手はずを打ち合わせる。ヴェールをかぶった娘と僧服の君を祝福するという。そんな話を、クイックリー婦人が窓からのぞき見をしていて、ナネッタに告げにいく。

 

第3幕 第2場 ウインザーの庭

 静かな前奏に始まり、幕が開くと、暗めの照明、中央に大きく古そうな樫の木。すぐにフェントンが愛の歌を歌い出す。唯一のフェントンのソロ。しばらく歌っていると第1幕第2場の「口づけされた唇は、幸せを忘れない」を繰り返して終わる。アリーチェが女性隊とフェントンに「言われたとおりにしなさいよ」「チャンスは来るように、去っても行くのよ」と厳しく仕切る。

 鹿の角をつけたファルスタッフが現れると、12時の鐘が鳴る。鐘の数を数えるファルスタッフの声が、これから起こる事件の不気味さを暗示する。アリーチェに「君はワシのもんだ」と言って近づくと、「助けてー」という声がどこかから聞こえる。アリーチェは、誰か来るからという理由で、どこかに去ってゆく。ファルスタッフだけになったところで、ナネッタ扮する妖精が現れて歌う。歌のあいだ、白い布をかぶったダンサーが幽霊風に踊る。この妖精の歌も、ナネッタ唯一のソロで、意外に長く美しい曲。

 「人間がいるぞ」という掛け声で、ファルスタッフのまわりに大勢の仮装した妖精仲間(?)が現れる。キリギリスのような10人ぐらいの子供が、ファルスタッフを棒でつつきまわし、その後、大人みんなで取り囲み「後悔しているとあやまれ」とせまる。全員で30人ぐらい。ファルスタッフもたまりかねて、みんなに謝る。

 その中の一人が酒臭いのに気づいたファルスタッフが、頭巾を引っ張るとバルドルフォが出てきた。クイックリー婦人も現れ再度「Reverenza」。みんなに騙されたということを悟ったファルスタッフは開きなおる。そこへフォンタナが現れたと思って話しかけるファルスタッフに、アリーチェが自分の旦那だとばらす。ファルスタッフはまたまたビックリ。「ワシがいなけりゃなにも出来ないくせに」「ワシがお前らを利口にしてやっているんだ」と愚痴っぽくなってくる。

 最後にフォードには、娘とカイウスを結婚させるという計画がある。仮装している二人を連れてきて、祝福するというと、アリーチェがもう一組も一緒に祝福してくれるよう頼む。フォードは格調高く、二組の結婚を祝福する。ところがヴェールを取ると、カイウスの相手はバルドルフォで、もう一組がナネッタとフェントンだった。あっけにとられるフォードとカイウス。「自分の罠にはまることもよくある事よ」とアリーチェ。「人間たるもの、多少のごたごたは甘んじて受けねばならない」とあきらめ顔のフォード。アリーチェ隊の最後の大芝居は、ファルスタッフを懲らしめることを口実にして、実は娘の結婚を自分の意に沿うように持っていくためだったのだ。

映像的な見た目では、メグ役のシュミットが断然美しい。アリーチェ役のカバイヴァンスカは恐い。タディとルートヴィヒの歌唱は文句のつけようがないし、ツェドニクの声もすばらしい。パネライは後にファルスタッフも歌うが、フォードがお似合いだ。

 全てこの世は冗談だ。人は生まれついての道化者。お互い相手を笑い者にしているが、最後に笑う者が、本当に笑っているのだ。と、みんなで歌いながら終わるのだが、フェントン以外の男性陣は、笑える状況ではない。長大なフーガを使ったアンサンブルで、ヴェルディの天才が生んだ最大のフィナーレで幕を閉じる。

映像的な見た目では、メグ役のシュミットが断然美しい。アリーチェ役のカバイヴァンスカは恐い。タディとルートヴィヒの歌唱は文句のつけようがないし、ツェドニクの声もすばらしい。パネライは後にファルスタッフも歌うが、フォードがお似合いだ。

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[2007/05/05 17:40] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
カラヤン ザルツブルグライブによる 第2幕 ほとんどあらすじ
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第2幕 第1場 ガーター亭

 かつて追い出された子分2人がファルスタッフに詫びを入れ、戻ってくる。すぐにクイックリー婦人を招き入れる。2時から3時の間にフォード邸に来てくれという、アリーチェの言葉を伝える。メグもファルスタッフのことを好いているけれども、こちらはご主人が家にいるので会えない。そして二人とも、お互いのことは知らないと告げる。

 クイックリー婦人が帰ると、第1場に3回出てくる軽快な音楽とともに、「アリーチェはワシのものだ!」と歌い出す。そこへフォンタナという人物が現れる。「金は何者にも勝つ」と歌いながら、ファルスタッフにお金を渡し、味方に付ける。そしてアリーチェに恋をしているが、まったく相手にしてもらえないことを告げる。まずファルスタッフが彼女の固い操をやぶって、心を開いてくれれば、自分にもチャンスがまわってくるかもしれない。だから、ファルスタッフを応援するのだと言う。

 いい気分で調子にのったファルスタッフは、アリーチェはもうすぐ自分のものになる手はずだと計画を話す。まぬけな亭主がいない隙に、フォード邸に入って寝取ってやる。あいつは角の生えた牡牛だ、うすのろ亭主め!と本人を目の前にして自慢げに歌って、したくをするためにその場を去る。

 残されたフォードは苦悩する。ここから音楽が「ドン・カルロ」風になる。「自分は愚か者だ、目を覚ませ」「結婚なんて地獄だ」「女なんてバカだ」「ドイツ人にビールを、オランダ人に食べ物を、トルコ人に酒をやっても、女房はだれにもやらない」「俺が牡牛だと」「寝取られ男に角が生えるだと」と、シェイクスピアによる当時の警句があふれ出す。浮気現場を見つけて、仕返しをすることを決意するフォード。ほとんどアリアらしいアリアのないこのオペラで、いちばん力強い独唱になっている。どんどんドン・カルロのフィリッポのアリアに近づいてくるが、この劇には大げさすぎる音楽表現で、ヴェルディがパロディ曲を作って遊んでいるようにも見える。

 ファルスタッフが着飾って登場する。フォンタナと一緒に出て行こうとするが、お互いに「お先にどうぞ」と譲り合ってなかなか出ていかない。「フィガロ」のスザンナとマルチェリーナの二重唱のパロディか。結局、二人並んで出ていく。ファルスタッフのモノローグ時の軽快な音楽が第1場を閉める。


第2幕 第2場 フォード邸の一室

 クイックリー婦人が、ガーター亭での話を、ファルスタッフのモノマネも入れて、アリーチェとメグに話す。2時から3時にやってくるという。この時間はシエスタだけれども、働き者のフォードは、ふだんお昼を食べに帰ってこないということを現している。ナネッタが飛び込んできて、父親のフォードがカイウスと結婚しろと強要しているとアリーチェに告げる。あんなバカの老いぼれ何かと結婚させないとアリーチェ。使用人が大きな洗濯かごを持ってくる。女性陣はついたてを用意。

 アリーチェがリュートを弾いているところへファルスタッフが登場。フォードさんは一人で余生をおくり、アリーチェは騎士の妻になる。愛してる。あなたを千年も待っていたと、迫ってくるファルスタッフ。のらりくらりとかわしているアリーチェだが、いよいよ危なくなってきた。そこへクイックリー婦人が、メグがやってきたと叫ぶ。ファルスタッフはついたての後ろに隠れる。メグが入ってくるなり、フォードが手下を連れて間男を捕まえに来ると言う。見つけだして殺すそうだ。隠れているファルスタッフに聞こえるように大げさに言う。お芝居をしているのかと思うと・・・本当。

 フォード隊が入ってくる。まず洗濯かごの中を探すがいない。ついたて以外を一通り探ると他の部屋に探しに行く。女性陣がファルスタッフを洗濯かごの方へ導き、中にファルスタッフをむりやり入れる。他人のことが眼中にないフェントンとナネッタがついたての後ろに隠れていちゃいちゃ歌い出す。この二人の歌も、このオペラではめずらしく普通の愛の歌。戻ってきたフォード隊が、ついたての後ろに誰かいるのを発見。およそ3分くらいかけて、しずかにゆっくり、周りを包囲してついたてを倒す。そこにいたのはファルスタッフとアリーチェではなくてフェントンとナネッタだった。この部分も「フィガロ」第一幕4重唱のパロディではないか。

 二人はすぐに部屋から逃げ出す。フォード隊もそれを追いかけて部屋から出ていく。アリーチェは使用人を呼んで、それからフォードも呼んで、洗濯かごを窓の外にひっくり返して、洗濯物に包まれたファルスタッフを水場に落とす。落ちていくところは見えないけれども、落ちちゃった、ばんざーい!、みんなで大笑いする。

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[2007/05/03 15:16] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
カラヤン ザルツブルグライブ 第1幕 ふたたび
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 カラヤンのザルツブルグ音楽祭ライブビデオから始めよう。またカラヤンか!とお思いでしょうが、これがなかなかミスのない規範的な演奏でありながら、スタジオ録音と違って厳しいところのないソフトな演奏で、バックグラウンドオペラ(?)にピッタリなのです。見ながら、あらすじを書き取ったり、歌手の違いを考えたりするのをじゃましない映像作品です。刺激が少なくてつまらないとも言えますが、オケの余裕と響きの豊かさを感じます。

カラヤン ウイーンPO ザルツブルグ音楽祭1982年ライブ

ファルスタッフ====ジュゼッペ・タデイ
アリーチェ======ライナ・カバイヴァンスカ
フォード=======ローランド・パネライ
ナネッタ=======ジャネット・ペリー
フェントン======フランシスコ・アライサ
クイックリー=====クリスタ・ルートヴィヒ
メグ=========トゥルデリーゼ・シュミット
カイウス=======ピエロ・デ・パルマ
バルドルフォ=====ハインツ・ツェドニク
ピストーラ======フェデリコ・ダヴィア


 第1幕第1場 ガーター亭
 
 いきなり快活なアタック、そしてドタバタ飛び跳ねる。前奏曲もなしの、そんな音楽で始まる。場所は15世紀イギリスのウインザー。ファルスタッフと子分2人がいる居酒屋ガーター亭に、怒り心頭の医師カイウスが飛び込んでくる。カイウスは、なぜだかいつもハゲている。昨晩、ファルスタッフの子分が、カイウスを泥酔させて財布を盗んだという。バルドルフォがハインツ・ツェドニク。二人ともキャラクターテノールだから、ミーメが二人で騒いでいるような面白さがある。ここで偉大なファルスタッフは全く相手にせず、3人で追い返す。カイウスが出ていくとき、子分二人が「アーメン」と調子っぱずれに歌う。

 カイウスがいなくなると、子分に対して「盗みはもっと優雅にやるもんだ」と言い聞かせる。酒をもう一杯注文すると、店主は勘定書を指さし、もうお金が足りないというそぶりを見せる。ファルスタッフは、金がなくなるのはお前たちのせいだと怒るが、それはそれとして、自分のことを好いている女がいると話をきり出す。この町の大金持ちの奥様であるアリーチェとメグがファルスタッフに夢中だという。ワシもまだ衰えちゃいない、とご満悦のようす。

 子分二人に手紙を届けるよう言いつけると、二人は騎士の名誉にかけて、そんな仕事はできないと言う。サルティンバンコ(いかさまやろう)!と言い放ち、手紙を子供に届けさせる。ここからファルスタッフの一人舞台で、音楽も盛り上がってくる。「名誉だと!」「名誉で腹がふくれるか、折れた骨が治せるか」「名誉なんて、ただの言葉だ」「ワシにはそんなものいらない」怒りが爆発したファルスタッフは剣を抜いて二人を追い出してしまう。

第一幕 第二場 フォード邸の庭 

 アリーチェ、メグ、ナネッタひそひそ話。大変なことがあったと言い合っている。アリーチェがファルスタッフから手紙をもらったというと、メグも同じようにもらったという。二人は手紙を取り替えっこして、文面を読み上げる。名前を変えてあるだけで文面はまったく同じ。「フィガロ」の手紙の二重唱のように、手紙の文面を楽しく高らかに歌い上げる。「わたし、ばかにされたわ」「仕返しして、笑いものにしなくっちゃ」と言うアリーチェにほかの三人も同調。アリーチェのこの不可解なほどの怒りは、手紙をよこしたことではなく、中身がメグと同じ内容だったことのようにも思える。

 そこへフォード、カイウス、フェントンに、ファルスタッフに解雇されたピストラ、パルドルフォをともなって登場。ファルスタッフがフォード邸に乗り込んできて、奥様とお金を盗みますよ、かつての子分が言いつける。この男性陣と女性陣のごたごたの合間にフェントンとナネッタはイチャイチャする。「口づけをおぼえた唇は、幸せを失わない」なんて歌って、誰かが戻ってくると止めるのだが、だれもいなくなるとすぐにくっつき合う。フェントン役のアライサは南イタリア人によくいるような小男で、かわいらしい。
 
 フォード隊がふたたび現れて、フォードが他の人に変装してファルスタッフを探ろうという計画を話し合う。お屋敷の二階からアリーチェ隊4人、庭にフォード隊5人、互いにテンポの違う合唱が重なり合って、不思議な盛り上がりを見せる。

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[2007/04/29 18:53] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
カラヤン ザルツブルグライブ 第1幕 take1
 今日は、うちの シビックTipeR で『内牧公園』に出かけました。車でよったり、歩いていったり、ここは毎週訪れているのですが、今日はとりわけ美しかった。

 古戦場跡のような紡錘形をした周囲約7キロの散歩道と林に囲まれた田園です。新宿御苑も、桜の後がすばらしかったですけれど、自然まっただ中のここもきれいです。
 新緑の雑草が生えた水田のなかに、ところどころ耕して赤茶けた真新しい土が、美瑛のパッチワークの丘のようにまだらの色違いの美しさをみせる。その後ろにはなぜだか紅葉の終わり頃のような赤茶けた色の森。新しく造成された菖蒲園と蓮池に映る空。そして歩道の両側には満開の背の高い菜の花。黄色につつまれ歩く。全てが清らかな国がある。

 なんて幸せな時間なんでしょう。ただ歩いているだけでしあわせなのが、しあわせです。
人生、楽しんだ者が勝ちです。酒もってこんかーい!
本物のならず者、行け行けジョン。どんと行け行け。サモトラケのにけ。
と、むりやり話を『ファルスタッフ』に持っていく。一杯ひっかけないと始められないぜ。
   

 カラヤンのザルツブルグ音楽祭ライブビデオから始めよう。またカラヤンか!とお思いでしょうが、これがなかなかミスのない規範的な演奏でありながら、スタジオ録音と違って厳しいところのないソフトな演奏で、バックグラウンドオペラ(?)にピッタリなのです。見ながら、あらすじを書き取ったり、歌手の違いを考えたりするのをじゃましない映像作品です。刺激が少なくてつまらないとも言えますが、オケの余裕と響きの豊かさを感じます。

カラヤン ウイーンPO ザルツブルグ音楽祭1982年ライブ

ファルスタッフ====ジュゼッペ・タデイ
アリーチェ======ライナ・カバイヴァンスカ
フォード=======ローランド・パネライ
ナネッタ=======ジャネット・ペリー
フェントン======フランシスコ・アライサ
クイックリー=====クリスタ・ルートヴィヒ
メグ=========トゥルデリーゼ・シュミット
カイウス=======ピエロ・デ・パルマ
バルドルフォ=====ハインツ・ツェドニク
ピストーラ======フェデリコ・ダヴィア


 第1幕第1場 いきなり快活なアタック、そしてドタバタ飛び跳ねる。前奏曲もなしの、そんな音楽で始まる。場所は15世紀イギリスのウインザー。ファルスタッフと子分2人がいる居酒屋ガーター亭に、怒り心頭の医師カイウスが飛び込んでくる。カイウスは、なぜだかいつもハゲている。昨晩、ファルスタッフの子分が、カイウスを泥酔させて財布を盗んだという。バルドルフォがハインツ・ツェドニク。二人ともキャラクターテノールだから、ミーメが二人で騒いでいるような面白さがある。ここで偉大なファルスタッフは全く相手にせず、3人で追い返す。カイウスが出ていくとき、子分二人が「アーメン」と調子っぱずれに歌う。

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[2007/04/24 23:16] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『ファルスタッフ』はスタジオ録音向きのオペラか
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 NHK教育で『グラインドボーン音楽祭2006、コジ・ファン・トゥッテ』をやっていた。ハイライトではあるが、3時間のものを2時間にしたようなものだから、かなりの部分が見られるわけだ。実演で見た数でいうと「フィガロ」がいちばん多いけれど、テレビ放映されたものを見るのはこの「コジ」が、ちょっと思い出すだけでも5回と、いちばん多い。ムーティ・スカラ座、アーノンクール・ウイーン、チューリッヒ歌劇場、バレンボイム・ベルリン、そして今回のグラインドボーン音楽祭ということになる。そのどれもが面白く、感動させられた。

 今回の演出は、とりわけ演技が細かい。オペラ歌手にここまで演技をさせるかと思うぐらい、こまかく激しい動きをしている。決して型にはまった演技をしているわけではなくて、本当に苦悩しているような表情だ。まさか、TV放映を意識しての演出でもあるまい。オケの演奏も激しくかつ端正で、ライブでここまでやれるとは。いつも苦しい結末が待っているのだけれど、見終わった後は満足感と同時に「こんな終わり方でいいの?」と考えさせられる。わたしたちは、こういう世の中を、男と女の世界を生き抜いていかなければならないのだよ・・・なんてね。

 ドナルド・キーンも「3大だけがモーツアルトではあるまいに」という文章で、コジを讃えている。「フィガロ」「ドンジョヴァンニ」「魔笛」だけが大人気だけど、「コジ」も同じように素敵ですよと言っているのだ。モーツアルトのオペラの中では、一段低い扱いを受けながらも、このようにたくさんのビデオ、そしてCDも「フィガロ」並の数が販売されている。コジは映像向きの音楽なのか。

 たとえば「フィガロ」では、実演では何度も感動的な場面に遭遇したが、レコードやビデオでは、それぞれに不満点があって、これは満足したという決定版がない。それに対して「トリスタンとイゾルデ」を実演で見ると、テノールがダメだったとかいろいろの不満が出て、満足するということはちょっと考えられないが、レコードではフルトヴェングラーをはじめ、名盤が目白押しだ。

 画家でいうとゴッホとルノワール。この二人は、実物をたくさん見た人にはわかることだが、特にほかの画家に比べて優れているわけではない。しかし映像や印刷物にすると格段に印象深い作品に見える。したがって、本物をあまり見ない人には、とても人気のある画家なわけです。どちらが優れているか、という部分はぬきにしても、再生製品向き・不向きがあるということは十分考えられると思います。

 ヴェルディの人気オペラといえば「椿姫」「トロヴァトーレ」「リゴレット」「アイーダ」「オテロ」「仮面舞踏会」「ドン・カルロ」などやたらとたくさんあるので『ファルスタッフ』は、目立たない存在です。しかしこの『ファルスタッフ』には、スタジオ録音レコードの名盤、目白押しです。トスカニーニ、カラヤンのスタジオ録音は、信じられないような出来映え。そのカラヤンにして、ザルツブルグライブ映像では、いくぶん弛んだ演奏をしています。ビデオだったらショルティの映画ものの方が立派にできている。

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 『ファルスタッフ』ライブでは、一度しか体験したことはない。リッチャレッリが変更になったものの、依然として素晴らしい歌手陣に、小澤征爾指揮のオペラ公演である。

小澤征爾指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 1993.5.18or20

ファルスタッフ====ベンジャミン・ラクソン
アリーチェ======ダイアナ・ソヴィエロ(カティア・リッチャレッリの代役)
フォード=======パオロ・コーニ
ナネッタ=======ドーン・アプショウ
フェントン======フランク・ロパルド
クイックリー=====フィオレンツァ・コッソット
メグ=========ジェーン・バネル
カイウス=======ダグラス・ペリー
バルドルフォ=====デイヴィッド・ゴードン
ピストーラ======イーヴォ・ヴィンコ(コッソットの夫)

 コッソットはよく通るダミ声でいいのだけれど、いささかドスが効きすぎている。やっぱりこの人は「トロヴァトーレ」でしょう。このころのザルツブルグ音楽祭でスザンナを歌っていたドーン・アプショウは、かわいげがあって見ていて楽しい。最近のアンナ・ネトレプコ人気みたいなものを感じていた。リッチャレッリの代役の歌手がさっぱり良くなくて、この変更は残念。その他のことはあまり憶えていない。ビデオでも見たことがなくて、始めて映像で見たので舞台の方、演出の方が気になって演奏がどうだったのかはさっぱりわかりません。それに、なにせトスカニーニとカラヤンの名盤を徹底的に聞き込んだので、そのせいだと思いたいが、小澤征爾の演奏が軽くてつまらなかった。

 そういうわけで、『ファルスタッフ』はライブではなく、レコードやビデオで家で鑑賞するのが良いのではないかという疑いを持ちつつ、新国立劇場の公演が感動的であることを期待しています。

テーマ:バンド活動♪ - ジャンル:音楽

[2007/04/22 12:45] | ファルスタッフ | トラックバック(1) | コメント(2) | page top
『ファルスタッフ』準備中
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 毎週金曜日は、午前中は公民館、午後から幼稚園に行っていまして、合間の時間に図書館に行きました。図書館は週に3回は行って、いろいろ借りてきます。今日借りてきたのは、

イタリアの横道、見て歩き 川村易
吉本隆明のメディアを疑え
フィレンツェ・ルネサンス55の至宝
男は女のどこを見るべきか 岩月謙司
「出来る人」はどこがちがうのか 斉藤孝
モーツアルト百科全書 福島章恭
イタリア・オペラ 下 ヴェルディ 
R・シュトラウス オーボエ協奏曲 他 CD
R・シュトラウス 交響的幻想曲「影のない女」他 ティーレマン
マーラー交響曲3番 ケント・ナガノ
バッハ ヴァイオリン協奏曲集 千住真理子
珊瑚礁とともに~石垣島・白保~ DVD    以上でした。

 こんなものを聴いている場合ではないのです。ファルスタッフの公演が迫ってきました。ここ数日、ショルティとカラヤンのビデオを見ています。その他、CDでは、

カラヤン ウイーンPO
ジュリーニ ロスアンジェルスライブ
トスカニーニ NBC
バーンスタイン ウイーン
アバド ウイーン(違ったかな)
ムーティ スカラ座ライブ
ガーディナー ?
デイヴィス バイエルン放送交響楽団 を揃えて

『ファルスタッフ』準備中です。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2007/04/20 19:55] | ファルスタッフ | トラックバック(0) | コメント(4) | page top
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