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イーロン・マスクの世紀
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 30年以上前、近所の倉庫を改造したみたいな量販店でよく服を買っていた。店の名前は覚えていなかったが、安いシャツには「ユニーク・クローズィング」と書いてあった。その後、その店はなくなり、「ユニクロ」は有名になった。最近は特に安くもなく、おもしろくもない店だと思っているが、株価は異常に高く、経済ニュースでもよく取り上げられる。

 9月から絶賛世界株価暴落中である。日本の株価暴落を牽引している代表が、ファーストリテイリング「ユニクロ」である。日経平均は、額面金額の平均なので株価の高いものの動きに左右されやすい。なぜこのような衣料品の会社が、日本経済を代表しているのか。米ナスダックは、アップル、アマゾン、アルファベットなのに。

 同じく30年ぐらい前、パソコンを買い始めた頃のあこがれはアップルであった。マッキントッシュ(マック)である。ちなみにアップルもマッキントッシュも、他の有名メーカーのものなので、訴えられたはずだ。もちろんビートルズのアップルから。
(そうそう、日本ではアスキーとかソフトバンクが、がんばっていました)

 実際に買ったのは主流のNECのPC98である。マイクロソフトのMS-DOSで動いている。どっちも白黒だった。アップルとマイクロソフト、スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツの覇権争いはゲイツが勝った。(ビルというのは、正式にはウィリアムの愛称みたいなものなので、友人は「ウィリアム」と呼んでいるらしい。ジョンも、古くはヨハネから来ていると思うが、ジャックの愛称)

 放漫経営のジョブズはアップルを追い出された。アップルもマイクロソフトに援助を受けるまでに弱くなった。しかしあくまでも、あこがれるのはスティーブ・ジョブズである。iPhoneというのは、電話の変種ではなくて、初代のパソコン、アップルⅡの最終形態ではないのか。


 前置きが長くなったが、そこで、現代のジョブズといえば、イーロン・マスクである(らしい)! 現代アメリカ製造業の旗手である。このところめずらしく、まともなボリュームのある本を読んだ。
『イーロン・マスクの世紀 兼松雄一朗』

現代の重要人物を、あらためて並べてみる。
アマゾン ジェフ・ベゾス
アルファベット ラリー・ペイジ
フェイスブック マーク・ザッカーバーグ
テスラ スペースX イーロン・マスク であります。

 この本の中でまず気になる項目は、「エジソンの呪い」です。とりあえず。
車がガソリンエンジンで普及する前には、100年以上前の話です、電気自動車の実験も行なわれていました。その頃から蓄電池が大問題でした。今でも、ノートパソコンのバッテリーから発火なんてありますよね。

「蓄電は科学としてはいいが、事業としては完全な失敗だ」エジソン。
今でも、軽くて長時間使える電池を量産化することは、どの企業も達成できていません。耐久性、安全性にも問題があります。ガソリンエンジン並みに発火事故を起こします。

 イーロン・マスクを代表として、米国の現代最先端技術について理解を深めてくれる本ですが、火星に行く前に、乗り越えるハードルは多いということを教えられます。それにしても、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような、強引な超天才経営者がいないと、社会って進まないものなんですね。

イーロン・マスクの世紀
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[2018/11/14 15:17] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
もう、怒らない 2
もう怒ら2


  「他人のことは気にするな!」という意見も何度か採り上げましたが、私たちは普段の生活で、まわりの空気を読む、忖度する、迎合するなど、社会の同調圧力に流されて生きています。言いたいことがあっても、めったに言えません。嫌われているわけではないにしても、自分は阻害されている、慕われていない、愛されていないと感じることはよくあります。

 必ずしも、ウソをついた子どもを声を荒げて怒るようなことではなくて、自分の思ったようにならない負の感情がここで言う「怒り」なのです。

 仏教的な説明では、スリランカ上座部仏教、スマナサーラさんの怒らないことシリーズなどもありますが、小池さんの一連の本の方が、一般にはわかりやすいと思います。仏教系の本は、たとえこのようなタイトルでなくても、欲望の無情さや、今の現実に集中することで心の平安や活力を保つことが書いてあります。

 このようなブッダの言質、仏教の信条、そのままとしか思えない、今はやりのマインド・フルネスという瞑想法も、ほぼ同じでしょう。(瞑想用のCDなどは使っている)

 小池龍之介の『もう、怒らない』を再度、読んでみました。
読み返してみて、以前とは違うところが気になりました。

 「物事が退屈なのは、きちんと観察しないから」

人間の脳は、省エネに徹していて、一回見たものは、二度目はちゃんと見ないといわれています。過去の記憶を駆使して、見たことにしているようです。意識して見ようとしなければ、見ていないのです。今、見ている場所が、よほど以前と変わった状況になっていなければ、気づかないのです。

 まだパソコンの性能が弱かった頃の、動画録画システムに、前のコマから変化した部分のみ記録していくというのがありました。(使ったことがないので、うろ覚え)一秒間に何十コマの画像を連続して記録していくわけですが、当然ですが、前のコマと次のコマの画像の違っている部分は、ほんの僅かです。見比べてみても、ほとんど違いはわかりません。人が喋っている部分なんて、背景はずーっと変化がなかったりしますよね。その無駄をなくすのです。そうすると、ずっと前のコマからの記録がごっちゃになっているためか、編集時の制約があったはずです。(今でもあるのか、しらんけど!)

 人間の脳も、極力、過去の記憶で処理しようとします。見ているつもりでも、ザルのように盲点があったり、わざと現実を直視しないのようにしているのです。潜在意識の、現状維持メカニズムも強力ですね。

 昨年の展覧会に、どこかのテレビ局が来て、インタビューを受けました。いきなり「絵を習うと、いったいどういう役に立つんですか?」とマイクを向けられました。なんて哲学的な。「人生に目的はあるのですか?」みたいなことではないですか。

 そんなこと急に言われたって答えられるわけないじゃないか、「この世に、役に立つことなんてほとんどない」とか何か適当に言っておこうとあきらめてしゃべり始めました。(国会答弁みたいだが)その時の記憶はほとんどありません。

 後で、放映されたビデオを見て、なるほど!と感心しました。(編集のせいかも)展示されている絵画作品を写しながら、「絵は離れてみた方がいい」なんて、私が絶対に言わないセリフを、ナレーターが入れている部分もありました。
その時、映像の私はこう言っていました。

「私たちは普段、回りのものをちゃんと見ていません。絵を描くことによって、回りの物事を、正しく見るように努めるのです」

 芸術作品は、私たちに、正しくものを見、正しく感じることを教えてくれているものなのですと、小林秀雄が言っていたような気がします。


もう、怒らない (幻冬舎文庫)

怒らないこと―役立つ初期仏教法話〈1〉

怒らない技術 (フォレスト2545新書)

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[2018/10/11 18:01] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
生きる技法

 人に迷惑をかけないで、自分で何でもやってしまうことが、自立することだと思ってませんか。私たちは、家族に十分なお金を稼いだり、自分だけではなくて、他の人の世話までしたりすることが、自立することだと思っています。そのように教育されて、あるいは洗脳されているからです。

 自分の生きる目標などを、すらすら明確に言える人ほど、要注意です。社会から押しつけられたものではないですか。自分で考えたと思っているでしょうが。

 というわけで今週読んだ『生きる技法 安冨歩』です。

 この作者の考える「生きるための根本原理」は、社会で巧妙に隠蔽されているようで、40過ぎて離婚もして、気づいたと言っています。(大雑把に書きました)
「自立とは多くの人に依存することである」
(依存する相手が増えるとき、人はより自立する)
「従属とは依存できないことだ」
(少数の他者に依存するという状態こそは、他者に従属している状態)
「助けてください、と言えたとき、あなたは自立している」

 私は、10数年前に車を盗まれ、それから車に乗らなくなりました。あるべく歩くようにし、まれに必要なときは、人の車に乗せてもらうようになりました。

 それまでは、自分の力の過信といいますか、何でも自分で出来るからいいやと、人に相談することなどありませんでした。車も自転車も止めたら、不自由なことがいっぱいあります。やりたいことをあきらめることが、何度かありました。それから、知り合いに、相談したり、頼んだりするようになりました。

 人にお世話になると、なんらかの恩返しをしなければなりません。あたりまえのことですが、以前はほとんど考えていませんでした。(お年玉はもらうもので、あげたことはほとんどない)人に会うたびに、この人には何をすれば、何をプレゼントすれば喜んでもらえるか考えるようになりました。

 もちろん人から自分に与えられるものが多くて、私がお返しできるものは微々たるものです。しかし、自分が変わったのでしょうが、周りの人が以前よりも親切になったような気がします。


そのほか、こんなのも書いてある。読んでみてくだされ。
「誰とでも仲良くしてはいけない」
(嫌いな人と、仲良さそうに装ってはいけないということだと思う)
「人を愛するためには、自分を愛さなければならない」
(たいていの人が、人を愛したことがないと思うが?)
「自由とは、選択の自由のことではない」(選択肢があるかないかではない)
「選択という設定自体が危険である」(それが自由ではない)
「どれを選ぶかは問題ではなく、どのように選ぶかだけが問題である」
(どれを選んだ方が良いのかは、結局はわからない)


生きる技法

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[2018/10/02 18:23] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
豊かさの限界
豊かさの限界2


 地球温暖化の影響もあるであろう巨大台風や、地震などの被害が目立ってきた日本ですが、リーマンショック以上の世界恐慌が心配されています。20年前の番組でも、すでに同じようなこと、いやそれ以上のことが、言われていました。

NHKスペシャル 世紀を超えて 地球・豊かさの限界 5h20m たぶん1999
NHKスペシャル 世紀を超えて 地球・ビッグパワーの戦略 5h たぶん2000

 同じく、NHKスペシャル マネー革命の第一回目「1日で50億円失った男」でも、取り上げていたように、お金が簡単に増えたり、減ったりするのです。ビクター・ニーダーホッファー(日本人トレーダーであるBNF氏(ジェイコム男)のイニシャルは、ニーダホッファーからの引用)は、邸宅にタイタニック号の絵を、絶対沈まない豪華客船と言われていたのに沈没したタイタニック号の絵を、架けていました。

 相当な自戒をしている天才トレーダーやヘッジファンドでも、破産するのです。トルコリラでなくても、大英帝国ポンドなどでも暴落するのです。「50億円失った男」はその後、「100億円稼いだ」そうです。

 しかしながら、実体経済からかけ離れた、デリバティブなどの金融商品は、恐らくその頃の一万倍ほどにはなっています。トルコやアルゼンチンなどの、国を挙げて危ないところや、破綻懸念されているドイツ銀行などの巨大金融機関もあります。

 日本以外の、世界人口は爆発的に増えていますし、耕作できる農地面積は、減っています(水不足や塩害など)。中国などの大勢の人々が、牛肉を食べるようになると、数倍の穀物が必要になります。穀物を直接食べるのと、動物を育ててから食べるのでは、全然違います。小麦などの、遺伝子組み換え食品の影響は、これから出てくるでしょう。

 地球温暖化は、かならずしも人間の問題じゃないとおもうんだけどね。
ながーい歴史的には、地球はまだ「氷河期」ですから。
(ニャン吉もそう言っている)

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[2018/09/17 18:16] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
わたしを離さないで・再・再
私を離さないDVD

 カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」についての、3回目です。

【【カズオ・イシグロのベストセラー小説を奇跡の映画化!
劇場ロングランヒットを記録した、あまりにも儚く切ない衝撃作!
命を“提供”するために、彼らは生まれた――

<キャスト&スタッフ>
キャシー…キャリー・マリガン
トミー…アンドリュー・ガーフィールド
ルース…キーラ・ナイトレイ

監督:マーク・ロマネク
脚本:アレックス・ガーランド
原作:カズオ・イシグロ
製作総指揮:アレックス・ガーランド/カズオ・イシグロ/テッサ・ロス】】

という映画のDVDです。いつものように借りてきました。

 有名な小説を映画化したもので、よかったと思えるのは「風と共に去りぬ」ぐらいしか思いつきません。もっともこれは小説の方のできはそこそこであるので、映画の方が歴史的名作なのだろうけれど。

 「わたしを離さないで」は、それ以上の作品だと思っているので、映画などはなっから見る気はなかったのである。原作がたいしたものではない作品では、「ダビンチ・コード」。たいした作品に違いないブッカー賞の「日の名残り」など見たけど、ぜんぜんダメ。

 映画は時間的制約があるとはいえ、大河ドラマの総集編を見ているような、大事な部分がたくさん省略されて、ほとんどあらすじだけになっているように感じて、不満が残るのです。

 映画の口コミなどを見ても、ほとんど的外れなコメントばかりなので、表面的なことしか伝わっていないにちがいない。そうにちがいない。

 どうせ今回もそんなものだろうと思い、最初の方はやはりそうで、早送りしました。しかし後半は、原作の雰囲気を壊すことのない、すばらしい総集編でした。画像も、めったに見ないぐらい美しいと思います。

  実は、あまりにすばらしかったので、最初からもう一度見ました。主題であるヘールシャムの話は減らして、恋愛を多めにしています。カセットテープのくだりなど、原作と違っている部分もありますが、悪い感じはしません。カズオ・イシグロが制作に関わっているからでしょう。

ほんとは、アミダラ女王の替え玉、キーラ・ナイトレイが気になって見始めたのですが、彼女は嫌な役でした。主役キャシーのキャリー・マリガンは、ほんとうによかった。すこし元気になりました。


■二〇〇六年五月十日、ロンドンでの著者へのインタヴューから
 究極的な言い方をすれば、私は我々が住む人間の状況の、一種のメタファーを書こうとしていたのです。幸運であれば、七十歳、八十歳、恐らく九十歳まで生きることができますが、二百歳まで生きることはできません。つまり現実には、我々の時間は限られているのです。いずれ老化と死に直面しなければなりません。確かに私は、このストーリーの中で、若い人がかなり早く年を取る状況を人工的に作りました。つまり、彼らが三十代になると、もう老人のようになるのです。でもこれは、我々がすでにわかっていることを、別の新しい観点から認識させてくれる方法に過ぎません。

わたしを離さないで

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[2018/08/29 16:40] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
情報が多すぎる
%はスルー


 そんな人も増えていると思うが、最近テレビを見なくなった。新聞、雑誌などは元々見ない。ラジオは学生の頃は(他に何もなかったので)よく聴いていたが、長い間聴いていない。ハードディスク・ウォークマンが出てきてから、CDや(むろん)カセットテープも聴かなくなった。

 さんざん録画したVHFやベータなどのビデオテープは、無情にも捨てた。いまやユーチューブなどでたいていのものを見ることが出来る。写真アルバムやフィルムや、DVDなどに保存している膨大な写真は、ほとんど見ることがない。

 だいぶ前から恐ろしく感じていたのは、カメラの記憶メモリーだ。初めて買ったときのデジカメは、2メガのメモリーだった。さて、記憶容量は10年で何倍になったでしょう?、と質問しても、持っていない人はまったく当てられない。今から10年前の段階で、カメラの記憶メモリーは2ギガだった。5年前に買ったハードディスクは2テラバイトだ。

 日本の単位では「円、万円、億円」というふうに一万倍ごとに単位が変わる。西欧では千単位だ。(金額を書くときに点を入れる位置)だから「2バイト、2メガ、2ギガ、2テラ」は、それぞれ千倍になる。

 カメラの画素数は、すでに15年前から、これ以上増えても意味がないと言われていた。逆に一つあたりのCCDの面積が微少になることから、画質が悪くなるとも言われていた。さすがに画質は進歩したが、あんな画素数はいらないだろう。メモリーもたくさんいるし。たださすがに、画素数は10倍単位ぐらいでしか増えていない。ただ写真は、毎年、一万枚ぐらい増え続けている。(音楽CDも一時期は、毎週5枚ずつ増えていた)

 というわけで、あまりにも私たちの回りの情報が増えすぎて、結局スルーしてしまうというお話です。(LINE既読スルーもそうかな)本の中で特に驚いたのは、インターネットの発達などにより、1999年~2000年の一年間に、有史以来から1999年まで蓄積された情報と、同じ量の情報が増えたそうだ。

 そこで、この本のタイトルだ。私たちの回りの情報が増えすぎた結果。一人の人間が見たり聞いたりすることのできる時間や能力は、昔とほとんど変わっていない。アナウンサーの喋るスピードが速まったなどの、若干の進歩は見られるが。

 この世にある情報の中で、私たちが接することができるのは、たったの「0.004%」だそうなのである。だから「99.996%はスルー」となる。


「本当に情報は爆発しているのでしょうか?(ええと、してます…) しているとしたら、その膨大な情報は、どれくらいスルーされているのでしょうか?(ええと、99.996%がスルーされてます…) この本には、うまく情報をスルーしつつ、自分はスルーされないための『基本情報』が詰まっています。」(竹内 薫)

99.996%はスルー 進化と脳の情報学 竹内 薫 丸山 篤史

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[2018/07/20 19:31] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
武田邦彦の科学的人生論
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 フジテレビ「ホンマでっか!?TV」で大活躍の武田邦彦先生です。同じ番組で横に座っている池田清彦さんも、ほぼ同じようなスタンスで、「環境問題のウソ」「生きにくい世の中で気楽にたのしく生きる方法」のような本をたくさん出しています。


 この番組では、「健康に良い食べものなど無い」とか一般常識の間違いを指摘している。武田さんはよく、女性は年を取っても孫を育てるという役割があるが「50過ぎた男は人間社会に必要ない」と仰っておられた。(楽しそうに)そんなことを言ってはいけない。世の中、必要のないものだらけだ。とはいえ、おもしろき事のなき世をおもしろく、することに貢献している武田先生であります。

 最近、ユーチューブをよく見る(ほとんどラジオみたいに聴いているんだけど)。武田さんの世の中を考察した話はおもしろい。原子力に関しては、大前研一の方が納得できるけれど。どこかで言っていたが、科学者というものは自分が間違っていること承知しているそうだ。今はこう主張しているが、数年すれば新たな説が発表されて、間違いが指摘されるのが当然ということだ。

 小林秀雄が講演が話していたことです。最近の学者は人間のことを考えない。私が研究していることは、学問上の問題であって、君たちの幸不幸にはいっさい関係ないといった態度だ。何百万光年先に地球に似た組成の惑星があったからって何ですか!(そんなことは言っていない) たかだか何十年、生きてきて、幸せでなかったらどうしますか。われわれの幸福を考えてくれないような学問は、学問じゃないね。と言っています。

 ということは、武田さんのような人こそ学者の鏡ではないか。

 ほんとうは、「小説が死んでいるのは私達が死んでいるから」という目次について書こうかと思って始めたのであるが、それはまたあとで。
以下、目次より。

人は「真実であって欲しい」と願うことを信じる
他人のことを第一にすると幸福になる
今日一日生きられればそれで幸福
心を持たない人間が大好きな言葉「コストパフォーマンス」
コツコツ貯めたお金で遊んでも楽しくない理由
「水が低きに流れる如く」――何も考えずに動く
幻の疲労感――人間は疲れない
35歳脳死説――努力は出世のためでなく
忙しい割に儲からない状態が一番
行為そのものを目的にすると「失敗」がなくなる
頭で考えたことは間違っている
人間の頭脳が「良い」と考えた方向に行けば人は滅びる!?
努力は欲を強め、欲は絶望を招く
小説が死んでいるのは私達が死んでいるから
現代の教育は人間を野獣にする
法治国家は原始的国家である――法律に勝る日本の「駅伝精神」


武田邦彦の科学的人生論 『武田先生、ホンマでっか! ?』
科学者が解く 「老人」のウソ



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[2018/07/16 16:42] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
「学問ノススメ」3
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この番組では、どういうわけか最後に「いちばん好きだった先生は?」という質問を、たいていしていた。そして、このときも、司会者がお決まり(らしく)質問をした。
「いちばん好きな画家は誰ですか?」

 『そんな「聞き分けのない女」みたいな言いぐさに、みんなよく答えてるよね。「誰が一番好きなの」「どっちが大事なの」。そんなこと決められないですよ。時計にしたって、どれが一番だなんて。』

 私が思うに、これは「信じることと知ること」に似ているようです。「私は地球が丸いって信じてる」と言う人は、今時いないでしょう。2000年前だったら別ですよ。地球が丸いことは、知っているものです。信じることではありません。マリア様を信じてるのは、イイかな?。全員がマリア様を信じていたら、そんなこと言わないでしょう。

 ですから、偉大な画家に対して「この画家が好き」とか「この絵が好き」とは使う気になりません。「私は、空気を吸うことより、水を飲む方が好きです。だから空気は吸いません」そんなわけないでしょう。好き嫌いの問題じゃない。しかし「AKBが好き」「ジミー大西の絵が好き」というのは、当然、ありです。

 たとえば「ルノワールが好き」なんて気軽に言う人は、ルノワール周辺以外の画家をろくに知らない人が多いような気がします。レンブラントもルーベンスも、ベラスケスもデューラーも、ボッスもティントレットも見たことがない人が多い。近年やたら、「フェルメールが好き」な人が増えたと思う。

 そうはいっても、質問に答えないわけにはいかないので、山田さん、しぶしぶ「こういうときは、この画家だと言ってます」と言い出した。そういっている間、私の方でも、答えを考えていたのだが、山田さんの答えと、まさに同じだった。音楽でいえば、バッハやモーツァルトのようなものです。失礼ながら、山田五郎を見直したところです。

 その答えとは別ですが、印象派付近では「マネ」の絵が好きです。

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[2018/05/30 21:42] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
「学問ノススメ」2
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 留学してはみたものの、専門分野が決まっていなかった。たとえば、「北欧ルネサンス絵画」とか「アルカイック期のアテネ彫刻」とか「村上隆とアニメ」のようなテーマですね。ただ美術史を学ぶならば、日本でも出来る。せっかくザルツブルグに1年間すんでいるのだから、ヨーロッパの美術館を見まくる、ということになった。

 まあその当時も、イギリス(特に大英博物館)やドイツの美術館は、エジプト、ギリシャや近隣ヨーロッパなどの世界各地の美術品を盗んできて展示していると(悪い奴らだと、陰で)言われていた。

 美術館側に言わせると、現地のあいつらに持たせておいたら、作品が盗難にあったり、壊れてしまったりする。管理が出来ないのだ。その点、保存状態も完璧にし、一般に広くく展示もしている。ロンドンの公営美術館は、原則無料で見ることが出来る。文句があるかと、いうことらしい。

 彼がローマの町を散歩しているときに、公園にあるベルリーニの彫刻に、立ち小便をしているおじさんがいた。なんてことをする!と英語でつぶやいたところ、英語がわかったらしく返事が返ってきた。

 「おれたちには、こんな彫刻いくらでも作れるんだ。壊れたらまた作ればいい」子どもたちも、彫刻の上に乗って遊んでいる。「イギリスの奴らは、人から盗っていくだけで、自分で作れないもんだから、後生大事に美術館なんぞに入れてあるのさ」

 美術品や骨董品などというものは、元々、家庭で使うために作ったものだ。飾ってないで、お茶を飲め。同情するなら瓶をくれ。(つづく)


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[2018/05/29 21:27] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
ラジオ版「学問ノススメ」
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 ユーチューブでいろいろ検索していたら、ラジオ版「学問ノススメ」というのがたくさん出てきた。正式には、「ラジオ版課外授業プログラム「学問ノススメ」のスペシャルエディション」。最初は確か「勝間和代」で出たのだと思うが、毎回ゲストが来る。香山リカ、よしもとばなな、三浦しおん、原田マハ、江國香織、山田詠美、川上美映子、西原理恵子、角田光代、川上弘美、と自動的に聴いてみた。
 
 だいたい一本1時間ぐらいかかるが、今はビデオレコーダーがなくなったので、時間がある。今までと違うことをしてみているのだ。iPodのおかげで、どこでも聴ける。

 その後、茂木健一郎、竹内薫、横尾忠則、島田裕巳、名越康文、小池龍之介、内田樹、養老孟司、と聴いてみた。その中で、山田五郎の話が、美術についてだった。

 山田五郎というと、最近では、「ぶらぶら美術館・博物館」という、某「日曜美術館」のように毎週1時間で放映している番組である。直近の展覧会を取り上げるので、内容がかぶることも多い。知り合いに、この番組の愛好家が少なからずいる。

 テレビのコメンテーターの発言は、普通のワイドショウでも聞きたくないが、美術について語られると、気分が悪くなることが多い。「ぶらぶら美術館・博物館」も、最初の頃は毛嫌いしていたが、最近は諦めて、他の報道番組よりもましだから見るようにしている。山田五郎の滑舌にも慣れてきた。

 それで「学問ノススメ」での山田五郎の発言は、意外なことにおもしろかった。

 若い頃、美術の勉強をしに1年ほどオーストリアの大学に留学したが、指導教授に言われたのが、時間が短いから、学問的な勉強をするよりも、ヨーロッパ中の美術館を見て歩いた方がいいということだった。(つづく)

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[2018/05/28 11:22] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
『手ぶらで生きる しぶ』
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 「手ぶらで生きる」を画像検索したら、胸に手を当てた女性が出てきた。なるほど、そうとれるか。

 家の電話はついにやめた。勧誘の電話が多く、実質的には年に数回しか用事がなかったからだ。ちょっと前までは堂々と、「携帯と時計は持っていない」と言っていた。今では持ち歩いてはいないが、家には置いてある。が、めったに見ない。まれに鞄に入れて持ち出したりすると、一週間ぐらい鞄に入ったままになっている。充電は、月に2回ほどしかしない。

 だからiPhoneみたいなPodを買ったら、ほとんど毎日のように充電しなくてはいけないのに驚いた。ウォークマンなんて、毎日6時間くらい聞いても一週間以上持つぞ。そんなことを人に話すと、毎日充電はあたりまえ、あなたが非常識なのだと言われた。

 先日、けっこうな東北地方などを放浪しているときに、ちいさな商店街あたりで、Podを聴きながら歩いていた。音楽が小さくなって電子音が入ってきた。どうやら一週間ぶりに、勝手にWi-Fiがつながったらしい。ラインとメールが入っていた。それらをチラッと見たが、すぐに切れたので、見ただけだ。見たから「既読」だろう。だいたい慣れていないので、文字を打つと時間がかかる。返信したのは、さらに一週間あとに家に帰ってからだ。

  これでは人から、以前取り上げた、ホリエモンみたいに思われるのではないか。
「自分の課題と、人の課題は違う。」
「人があなたのことをどう思うかは相手の問題なのだから、放っておく。」
「電話にはでなくていい」
こんな事がたくさん書いてある。
わたしは、他人には好かれたいので、実行する気はないが、こんな本が目に付くようになった。ざっとタイトルを上げる。

3年で7億稼いだ僕がメールを返信しない理由 小玉歩
手ぶらで生きる しぶ
好きなことだけして生きていけ 千田 琢哉
本音で生きる、好きなことだけで生きていく。、自分のことだけ考える 堀江貴文

なかなか思い切ったタイトルだ。その中から、半年前に買った。
「3年で7億稼いだ僕がメールを返信しない理由 小玉歩」より
(かっこ内は、私の感想)
・「いい人」になるな。(いい人だと思われたい)
・空気は、あえて読まない。(本は、あえて読む)
・退社するときに、挨拶はしない。(そもそも出社しない)
・知り合いを増やすな。(増やしたくても、増えない)
・好きな人と行く以外、お酒の席は意味がない。(何事もたいした意味はない)
・メールの返信はしない。(気がついたら、なるべくする)
・決まり事など一つもない。(3つくらいはある)

先週買った、「手ぶらで生きる しぶ」から。
こんな生き方をミニマリストというそうだ。

・床で寝る(屋上で寝る、なんてのもやってみたい)
・月7万円で暮らす(できるけど、やらない)
・冷蔵庫・テレビは持たない。(重いものは持たない)
・「1日1食」で生活する(これもやってみたい)
・荷物はコンビニでしか受け取らない(荷物なんて、こないけど?)
・毎日同じ服を着る。(他に変えられるものがないから、服ぐらいいいだろう)

 とまあ、驚くようなことが書いてあるが、実のところ、今上げたのは、ちょっと実行はできなさそうなことであって、ほとんどのことは、とっくにやっていることが多い。

 週のうちで、全く人に会わない日の方が多い。携帯電話も、周囲の圧力に負けて(他人に合わせるのだ)とりあえず所有しているが、電話は月に1回ぐらいしかかかってこない。結婚式と葬式は、大人になってから合わせて2回づつしか出たことはない。これからも出るつもりはない。

 見直してみて、さらに共感できるところがありました。
・「努力しないための努力」だけする。
・自分にとって価値のある出会いは、自分のほうの準備が整ったときにごく自然な形で現れるもので、こちらから探すものではありません。
(肉球の匂いでも嗅いで、待っていてくれ)



手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法
3年で7億稼いだ僕がメールを返信しない理由
好きなことだけして生きていけ
好きなことだけで生きていく。
本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方
自分のことだけ考える


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[2018/05/20 17:15] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
努力不要論 中野信子
努力不要


 然るところ世の中にいるうちは
 そこをどう避けてもそんな所はない。
 不愉快なものでも、嫌なものでも一切避けぬ。
 進んでその内へ飛び込まなければ、
 何にも出来ぬということである。
 死ぬか生きるか、命のやりとりをするような、
 維新の志士の如き烈しい精神で文学をやって見たい。(夏目漱石)


 中野信子さんは、「ホンマでっか!?TV」「英雄たちの選択」などでおなじみ(私だけかもしれない)の脳科学者。最初に見たのは、加藤浩次がBSでやっていた番組で、海外で活躍するIQの高い天才学者みたいなあつかいだった。

 このように、馴染みがあるので3冊ほど、彼女の本を読んでみたが、ワイドショーのコメントみたいで、おもしろくなかった。この本に限り、おもしろいところがある。導入で、さんまさんの番組について取り上げてある。さんまと紳助は、以前から、自分たちが成功したのは努力のせいじゃないと発言していたように思う。

 「運命はすべて決まっている」は論外だとしても、「才能がすべて」とは公に言いにくい。最近読んだ中でも「不都合な真実 橘玲」などの、いろいろな個人間の格差は努力では埋まらない、「それを言っちゃおしまいよ」な意見を発言する人が増えているようだ。

 大相撲の土俵に女性を上げるか事件でも、「神聖な土俵の上に、政治家が倒れたぐらいで、女性を上げるな!」という声は聞こえなかった。「そもそも政治家を土俵に上げるな」というのはいいと思う。政治家のセクハラ問題でも、反対意見が言えないようだった。

「努力不要論-脳科学が解く!「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本-」
このサブタイトル、「がんばってるのに報われない」と思ったら、というのは、本屋さんが付けたのでしょう。「がんばるから、報われない」か「がんばろうが、がんばるまいが、報われない」と読めてしまう。


「努力すれば報われる」という言葉がある。
その言葉の裏には「努力は報われてほしい」という願望が含まれている。
実際は、半分は本当だが、半分は美しい虚構だ。(本文より)

「努力は報われる」は、半分本当である
努力は人間をダメにする
「働いたら負け」は健全な変化
学歴や血筋の良さが必要なのは、発想力のない人間
役に立つことしかしない人間は家畜と同じ
努力をしない努力をしよう!
長生きしたけりゃ努力はするな(目次より)

多くの人間は、死の間際になると「あんなに一生懸命働かなくてもよかった」と口にするそうだ。そのほか「もっと自分の気持ちを表す勇気を持てばよかった」「自分をもっと幸せにしてあげればよかった」といった言葉も多いという。(本文より)


 めずらしく個人的に共感するのは、「努力をしない努力をしよう!」です。高校生の頃から、公務員・会社員にならず、通勤電車に揉まれず、上司や親や親戚(奥さん?)に煩わされることなく生きていこうと決めていました。夏目漱石に怒られそうですが、ゆるやかにそうして生活できるような環境作りに励んできました。

 死ぬか生きるか、命のやりとりをするような、
 維新の志士の如き烈しい精神で、努力しないで生きたい。


努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本


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[2018/05/05 18:17] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
わたしを離さないで・再
わたしを話さないで


 カズオ・イシグロの著作は、昨年ノーベル賞を受賞してから急に、図書館から本が消えて、リクエストしなくては読めなくなった。その時に、試しに、リクエストしておいた「わたしを離さないで」が、半年経って届いた。

 とっくに映画にもなっているし、テレビドラマでもやられたらしい。ノーベル賞以前から、それなりに有名だったということだ。もちろん数年前に一度読んでいる。この本が、あまりにもよかったために、著者の他の本も全部読んだ。古典的文学は、あえて別にして、近年の小説の中では、もっとも優れていると思う。歴史に残る名作だろう。

 再読して、印象が違うのに驚いた。以前読んだときは、物語が始ったとたんに異常な状況につつまれて、入り口が衝撃的だった分、特にクライマックスもなく静かに終わったように思っていた。再読して、特にクライマックスがないという印象派同じだが、開始部は衝撃的でもなく、むしろ、淡々と情報を小出しにして、主人公も読者も、やわらかく真実を受け入れられるように、冷静に物語を進めているようだった。

 この本や、映画の評を読むと、物語が進むと少しづつ異常な状況がわかってきて、後半衝撃を受けるみたいなことが言われている。DVD評などは、表面的なことしか書いてなくて、「作者の言いたいことは全然違うんだ」と突っ込みを入れたくなる。これをSFだとか、自分とは別の世界の物語だと思っているのでしょう。冒頭部分でもう異常な状況は把握できたし、結末はむしろ、想像していたよりも穏やかなものだった。

 以前から、土屋さんの訳が素晴らしいと思っていたが、さらに確信した。翻訳だと、日本の小説などと違って、何を語っても他人ごとのように感じることが多い。ところが心の襞に吸い付くような、ピッタリの表現。他の言い回しは考えられない。日本語の文章はこうありたいものだ。



■二〇〇六年五月十日、ロンドンでの著者へのインタヴューから

イシグロ もちろんそうです。究極的な言い方をすれば、私は我々が住む人間の状況の、一種のメタファーを書こうとしていたのです。幸運であれば、七十歳、八十歳、恐らく九十歳まで生きることができますが、二百歳まで生きることはできません。つまり現実には、我々の時間は限られているのです。いずれ老化と死に直面しなければなりません。確かに私は、このストーリーの中で、若い人がかなり早く年を取る状況を人工的に作りました。つまり、彼らが三十代になると、もう老人のようになるのです。でもこれは、我々がすでにわかっていることを、別の新しい観点から認識させてくれる方法に過ぎません。人生についての疑間や希望を、我々が実際に直面するものと同じようにしたかったのです。
こういう理由で、登場人物たちを状況から“逃亡”させることには魅力を感じませんでした。奇妙な科学的な操作をして、老化プロセスを逆行させようとしたがっている少数のクレージーな人はさておいて、我々の体がいずれは動かなくなるという事実から逃げることはできません。


わたしを離さないで

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[2018/04/15 19:10] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
暮らしの哲学
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 毎年、桜が咲きそうになる頃に、読み返す本があります。若くして亡くなった池田晶子の、晩年に近い時期の作品です。以下、抜粋。


 今年もまた桜が咲きました。
 当たり前のことのようだけれども、この当たり前のことが、年々歳々、深く感じられるようになるのは、どういうわけなのでしょうね。
この感じ、この感慨とは、何なのか。

 私が年をとることを、おいしい、面白いと感じるのは、自分の心がいよいよ深く豊かになってゆくのをはっきりと自覚するからです。ああ、こんな感覚、こんな考えは、若い頃には知らなかった。こんなにも深く、あの考えが成長した、こういう内なる成熟を、日々観察し味わいつつ暮らすことである老いるということは、私にとって非常な喜びでありまして、神はわれわれの晩年にかくも素晴らしいご褒美を用意してくれていたのか、そういう感謝めいた気持ちにすらなるものです。

要するに、生と死、すなわち他でもない「人生」というものに、深いところで触れてくるのですね、この「桜」、もしくは「春」というこの季節は。

 「春は残酷な季節だ」、今なら、この作者が感じているそのことが、はっきりわかりますね。「始まりは痛みである」、ああこのことだったのかと、まさしく痛いしかたで理解しますね。つまり、このことを理解するために、私にはこれだけの歳月、これだけの人生を重ねる必要があったのだということです。

 失くしたものがある。亡くなった人もいる。過ぎ去って還らないもの、失われて戻らないもの、その不在の感覚が、けれども春になると変わらずに咲く桜の花に、その満開に、鮮やかに痛いのでしょうね。でもその痛みを知ることが、人生を知ることなのだ。

 花ははかないと人は言う、自分の人生がそうであるようにと。

  暮らしの哲学

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[2018/03/20 18:02] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
死ぬまで元気に生きるため
山田豊文


 健康法の本は、新しいのを発見するとたいてい読んでいる。医者の書いた、古い西洋栄養学に基づいた「健康法寄せ集め集」のようなものが多い。もしくは、その本の著者しか言っていない、常識に反する説を唱えるもの。

 この著者は断食の本もたくさん出していて、病人には断食が効果的なのはいうまでもないが、クラシック音楽やストレスについても興味深いことを書いている。
 
 なかでも「適度な不衛生」は、現代人の除菌好きに警鐘を鳴らしていて、食養生などよりも簡単に実行できる。
「私たちは無数の微生物と共に生きている」
「常在菌の中に『悪玉』など存在しない」

その他、「眠れないことにも意味がある」
たとえば、恐怖体験を経たとしても、その日の夜に睡眠を取らなければ、それが記憶として定着せずにすむことが確かめられた。一時的な不眠に耐えることで、長期的なデメリットを防ぐ。

 数年前から、私はパンを食べるのをやめたが、確かに調子はよくなった。除菌や風邪の予防などはしない。たまには熱が出た方がいいと思っている。そういえば、近頃はあまり言わなくなったが、五木寛之は、髪は年に一度しか洗わない、歯は磨かない、と発言していた。


『死ぬまで元気に生きるための七つの習慣 山田 豊文』

◆目次
プロローグ: 不自然を捨て去り、自然を思い出す
7つの習慣 自然生活のすすめ
その1: 穀菜食
その2: 少食と断食
その3: 適度な負荷(ストレス)
その4: 適度な不衛生
その5: 早寝早起き
その6: 自然の音/音楽
その7: 宇宙を感じる
エピローグ: 子どもの教育にも自然的生活を


死ぬまで元気に生きるための七つの習慣 自然的生活のすすめ
老けない体のつくり方
「食」を変えれば人生が変わる

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[2017/12/21 19:49] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
あるヨギの自叙伝
 古来日本の文化は、中国からもたらされた。その中国のエリートは、何かを求めてインドへ旅した。ギリシャのアレクサンダー大王の遠征もインドで止まった。古くから宗教・哲学が栄え、近代では、大英帝国から不暴力で独立を果たした。デルフィではないが、ここが世界の中心だと思っても不思議ではない。

 ここのところ「マインドフルネス」という瞑想法がはやっている。テレビでも取り上げられたし、本も何冊も出ている。数冊の本を読んでみると、書いてあることは、すでに古くからある瞑想法と何ら変わるところはないと思える。禅宗やヨガやリパッサナー瞑想と同じである。

 ヨガに関しては、妙な新興宗教が問題をおこしたせいで、ハタ・ヨガなどの体操法はともかく、瞑想や呼吸法については、インチキ臭く感じる人が多いだろう。古来ブッダも瞑想修行に励めと言っているし、この本でも瞑想が本筋で書いている。アメリカで出版された本であるせいか、キリストと聖書のたとえもよく出てくる。

 これまた最近、不食や一日一食などが話題になっているけれど、完全に食べない人が二人出てくる。著者はしっかり食べているみたいだが、ほとんど食べない、というか食事を気にしないたくましい聖者はたくさん出てくる。聖者ババジは何百年も生きている。亡くなった師匠が、ときおり復活して現れたりする。

 このようなインド聖者の不思議な話がやたらと出てくるが、なにしろ定価4,200円で分厚い本だ、とても著者の妄想だとは思えない。




『あるヨギの自叙伝  パラマハンサ・ヨガナンダ』より

「したいと思う事はするな。そうすれば、自由にしたい事ができるようになる」
「恐怖は正面から直視せよ。そうすれば消えてしまうものだ」

 「もし私が、食べずに生きる方法を人々に教えたら、お百姓たちはさぞ私を恨むことでしょうし、おいしい果物も、地面に落ちてムダに腐るばかりです。不幸や、飢えや、病気は、私たちに人生の真の意義を探求させるための、カルマのむちではないでしょうか」
 「では、あなただけが何も食べずに生きていけるように選ばれたのは、何のためでしょうか?」
 「人間が霊であることを証明するためでございます」


あるヨギの自叙伝

DVD>ババジのクリヤー・ハタ・ヨーガ (<DVD>)

聖なる科学―真理の科学的解説


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[2017/10/17 19:19] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
みみずくは黄昏に飛びたつ 2
みみずくは2


 今回の長編は、画家が主人公です。親近感を覚えるところと、反発を感じるところがあります。人物画を描くときは、相手や、その時の場合によって、いろいろあるでしょうが、シリアスすぎるようです。きっと村上さんは、自分が文章で人物を造形するときに、このように入れ込むのかもしれませんが。

 茂木健一郎の公演で、夏目漱石と村上春樹は、外国語に訳したときに、他の作家とは違うんだということを言っていた。これが、文体ですね。以下、本文から。



 僕はこれまで油絵って一度も書いたことがないんです。だいたい全部想像して書きました。それであとで専門家に読んでもらって、ここは変だとかアドバイスを受けて、細かいところを書き直しました。

 でも大筋でいえば、小説家が小説を書くことを、画家が絵を描くことにそのまま置き換えたらあとはだいたい想像力だけで書けちゃうんです。ほとんど同じ事です。何を見て、どこに焦点を絞って、どのようにイメージを立ち上げ、どのようにそれを展開していくか、順序とか、技法とか、創作意識とか、そういったものは、小説家が小説を書く行為と本質的に変わりはないです。

 面色さんが、初めて絵を描いてもらうときに、肖像画を描くことと、モデルとして描かれることは、お互いの一部を交換することだといった話をするあたりから、彼ら二人が、入り混じっていく感覚があるんですよね。(川上未映子)

 そう、文章。僕にとっては文章がすべてなんです。物語の仕掛けとか、登場人物とか構造とか、小説にはもちろんいろいろな要素がありますけど、結局のところ最後は文章が変われば、新しくなれば、あるいは進化していけば、たとえ同じ事を何度繰り返し書こうが、それは新しい物語になります。文章さえ変わり続けていけば、作家は何も恐れることはない。

 あのね、僕にとって文章をどう書けばいいのかという規範は基本的に二個しかないんです。ゴーリキーの『どん底』の中で、「おまえ、俺の話、ちゃんと聞いてんのか」って一人が言うと、もう一人が「俺はつんぼじゃねえや」と答える。

 もう一つは比喩のこと、チャンドラーの比喩で、「私にとって寝れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」というのがある。それが生きた文章なんです。そこに反応が生まれる。動きが生まれる。

 とにかく読者が、簡単に読み飛ばせるような文章を書いてはいけないと。小説的な面白さとか、構築の面白さとか、発想の面白さというのは、 生きた文章がなければ動いてくれません。

 いや、僕の感覚からすれば、まず文章がなくちゃいけない。中身ももちろん大事だけど、人間誰だって語るに足る中身くらい持ち合わせています。

 日本のいわゆる「純文学」においては、文体というのは三番目、四番目ぐらいに来るみたいです。だいたいはテーマ第一主義で、それから、たとえば心理描写とか人格設定とか、そういう観念的なものが評価され、文体というのはもっとあとの問題になる。

 文体の評価ということで言えば、日本語近代文学史の中で、やっぱり夏目漱石がひとつの大きな軸をなしていると思います。作品をすべて高く評価しているわけではないですが、漱石が確立した文体というのは、その後も長い間そんなに大きくは揺さぶられてはいませんよね。夏目漱石の文体を揺るがすような突出した存在は見あたらない。


みみずくは黄昏に飛びたつ

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[2017/09/22 17:24] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
みみずくは黄昏に飛びたつ
みみずくは3



みみずくは黄昏に飛びたつ 川上 未映子 村上 春樹

 この本は、久しぶりの長編『騎士団長殺し』を書き上げた記念のインタビュー集です。長編小説は、もちろん大変素晴らしいと思うが、それほど好きではない作品もある。しかし、文章に対するエッセイには感動的なものが多い。

『職業としての小説家』『走ることについて語るときに僕の語ること』『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』などは、もちろんストレートでいいのだが、読者からの質問に答える『そうだ、村上さんに聞いてみよう』三部作も楽しい。

 小説家に限らす、他の芸術家には、こんなに創作活動の秘密のあれやこれやを語ってくれる人はいない。たぶんいい人なのだろう。聞き手の若手小説家、川上未映子もとても深いことを質問している。創作活動をしていない、小説を読んでいるだけの一般の読者にとってどうなのか疑問は残るが。

 1981年に再録音がされて、音楽好きにはおなじみの、有名すぎるグールドの「ゴルトベルク変奏曲」です。ここで一般の音楽評論家からは聞いたことのない発言をしています。本当でしょうか。たとえば、小澤征爾との対談でのクラシック談義には、ピンとこないところがたくさんあります。

 (どうでもいいことだが)私と同じで、『草枕』を愛読していたグールドの演奏は特別です。そういわれれば、『草枕』も、左手が好きなことをしているような、小説とは思えない小説ですね。以下、本文から。



で、グレン・グールドの演奏って、他の奏者のものとは圧倒的に違うんですよね。
 やっとわかったのは、ふつうのピアニストって右手と左手のコンビネーションを考えながら弾いているじゃないですか。ピアノを弾く人はみんなそうしていますよね。当然のことです。

  でもグレン・グールドはそうじゃない。右手と左手が全然違うことをしている。それぞれの手が自分のやりたいことをやっている。でもその二つが一緒になると、結果的に見事な音楽世界がきちっと確立されている。
 でもどうみても左手は左のことしか、右手は右手のことしか考えていない。

 とにかくそういう乖離の感覚は、乖離されながら統合されているという感覚は、人の心を強く惹きつけます。なにかしら本能的に。

 僕はもう四十年近くいちおうプロとして小説を書いていますが、それで自分がこれまで何をやってきたかというと、文体を作ること、ほとんどそれだけです。

 とにかく文章を少しでも上手なものにすること、自分の文体をより強固なものにすること、おおむねそれしか考えてないです。

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[2017/09/12 18:13] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
マトリックス
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マトリックス
マトリックス リローテッド
マトリックス レボリューションズ

 映画館ではもちろん、テレビでもあまり映画を見ないのであるが、BSで放映されたので「マトリックス」3本続けて見た。全部見るのは2回目である。

「エイリアン」「ターミネーター」に続く、おもしろいシリーズだと思う。部分的には、たとえば空手で決着をつけるとか、適役のスミスとか、裏切り者に気づかないところとか、濃厚なキスシーンがあるところとか、不可解な部分は多いが、主題は、本当にありそうなことである。

 プラトンが「国家」に書いている。人間が見ているもの、現実だと思っているものは、影絵にすぎない。現代だったら、椅子に縛り付けられて見せられている映画にすぎない、と言うだろう。後ろをふり返って映画館から出ることはできないのだ。

 たとえあんなふうに機械に支配されていなくても、国民は、政府に忠誠を尽くす、洗脳されている奴隷のようなものだから、どっちでもいいか。

 奴隷というのは、必ずしも、過酷な労働にこき使われて虐げられた存在というわけではない。ローマ時代の奴隷には、皇帝の家庭教師などもいる。人によっては、結婚も出来るし、旅行なども自由に出来た。解放奴隷として、市民権を持てるようになる人もいる。見た目にそれほど不自由ではない。

 奴隷とは、自分の所有権が自分にないということだ。誰かが所有権を持っている。だから他の所有者に売られることがある。

 だから、どこぞの国民や社員であるということは、同じようなものでしょう。楽しい映画を見ている方が、幸せに違いな。

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[2017/08/26 21:18] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
恋愛は顔で決める。
 最近やたらと見かける千田琢哉さんの威勢のいい本です。もう20冊ぐらいは読んでいると思いますが、これはまた目次などのパンチが効いています。
おおざっぱに言うと、アドラーや堀江貴文などと同じように
「他人の目を気にして我慢をするな!」ということです。

 わたしもひどく世間の付き合いが悪く、現在住んでいるところから8時間もかかる田舎で、2回ほど身内の葬式に出たことはありますが、他には一切、結婚式も葬式も出たことがありません。同窓会は、最近になってやっと2回出ました。

 スマホはもちろん携帯も持たず、腕時計も持たず、銀行でお金を降ろしたこともなく暮らしています。田舎に帰省するのも(残念ながらそれくらいはする)、人に合わせる気がないので、お盆や年始などは外しています。もちろん年賀状などは出しません。

というわけで、
『やめた人から成功する。 千田琢哉』の目次から。


「逃げる」ことから逃げない。
「我慢している人」は、他人にも我慢を強要する。
「苦労すれば報われる」ほど人生は甘くない。
好きな人と好きなことだけするのが、極上の人生。
我慢しなくてもいい環境作りが、正しい努力。
他人の夢の奴隷にならない。

我慢に慣れると、召使いの背中になっていく。
断る理由をしつこく聞かれても、返事はしなくていい。
ズバリ本音を口にしないと、相手をつけあがらせる。
仕事の相性は能力ではなく、時間の感覚が一致するか否か。

無断で5分以上遅刻してきた相手は、会わなくてもいい。
少しでも不快に感じた空間からは、即飛び出す。
「飲み会に参加しない」というブランドを、早く構築する。
お金持ちになるのは、我慢しなくてもいい人生を獲得するため。
躊躇することなく、タクシーに乗ってみる。
たくさんお金を払って、人口密度が低い空間で快適に過ごす。
あなたに敬意を払わない人からは、いっさい買い物しない。
忙しい人に巻き込まれると、いずれ貧乏になる。

「人脈を増やさなきゃ」という発想が、人を小粒化させる。
一晩寝ても感じ悪さが残る人とは、もう会わなくてもいい。
お願いしない。お願いされない。
親を長生きさせたかったら、適度に心配をかけておくこと。

恋愛は顔で決める。
あなたの周囲にいる異性は、あなたの鏡。
睡眠時間を誰にも妨げられない人生が、極上の人生。

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[2017/07/25 18:21] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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