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オペラ サモトラケのニケ
なぜだか、ただいま『フィガロの結婚』特集と……『ドン・ジョヴァンニ』が割り込んできました。
リチャード・ヴァーサル主演の二期会公演
 そのリチャード・ヴァーサルを起用し、1988年に二期会が「タンホイザー」公演をおこないました。東京文化会館、尾高忠明指揮、西澤敬一演出、リチャード・ヴァーサル以外は日本人の歌手でした。実演で聴くのは初めてなので、それなりに期待していました。演奏は、生だから音が鮮明に聞こえるというくらいのとりえしかない、極めて凡庸なものでしたが、演出というべきか、舞台装置というべきなのか、視覚的には刺激的なものでした。
 1幕は5階席にいたのですが、1階前列左右の席に全く人がいないのが良く見えたものだから、2幕からは1階右4列目のなかなかいい席に移動しました。ヴァーサルはいいのですが、近くで見ると、または双眼鏡で見ると、日本人の歌手って見るに耐えません。あの隈取りの多い、歌舞伎役者みたいな化粧はなんとかならないものでしょうか。鼻の両側、真っ黒。ついでに1階右席だから良く見えたのは、ピットの左上の照明用に開けてあるところか、もしかしたら特別な人が来客したときに座らせるためなのか、ヨーロッパの歌劇場のボックス席みたいな穴が空いています。そこから、合唱の時に、指揮者がペンライトを動かして指揮をしているのを発見しました。合唱団のメンバーは、ちらちらそっちを見ながら歌っています。
 第1幕のヴェーヌスは、紅白歌合戦の小林幸子張りに、身長を3倍くらいにに伸ばしていました。つまり腰から下のスカート部分を極度に拡大し、その中にダンサー数人が入り、スカートが伸びたり、縮んだり、広がったり、ねじれたりと思い切り官能を表現していました。今まで見たビデオ、ベルリン国立歌劇場とバイロイト音楽祭でも、バッカナールから第2場がいちばん見応えがあったけれど、この公演でもやはり刺激的でした。
 肝心のリチャード・ヴァーサルですが比較的背が低い小太りで、高くて細い声です。パヴァロッティを小さくしたようなものでしょうか。バイロイトライブよりも、生で聞けばヘンデンテノールの片鱗が見えるかと思っていたら、そんなことは全くなく、高音はきれいだけれどもとにかく細い声なんです。初期のルネ・コロもそんな傾向があったけれど、もっとタンホイザーにふさわしくない。この公演以前にライナー・ゴールドベルグのヴァルター(マイスタージンガー)、ゲルト・ブレンアイス(コロの代役)のトリスタンを生で聴いていますが、この二人に比べて全くダメです。この二人の印象に比べれば、ドミンゴもコロもダメでしたから、それほど彼がひどいわけでもないのかもしれませんが、このときはそう思いました。以来、リチャード・ヴァーサルの名前は聞かなくなりました。
 

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

1985年、バイロイト音楽祭の「タンホイザー」
 そのビデオデッキを買った少し後、バイロイト音楽祭で注目の指揮者の「タンホイザー」を、全曲3時間丸ごとFMで録音しました。指揮者はジュゼッペ・シノーポリ。カルロス・クライバー以来、ひさびさに注目の指揮者登場といったところでした。主役はルネ・コロとガブリエラ・ベニャチコヴァという定評のあるベテラン二人の予定でしたが、直前に二人ともキャンセル。代役としてタンホイザーはリチャード・ヴァーサル、エリーザベトはシェリル・スチューダーという新人が抜擢されました。この二人の見事な歌唱により公演は大成功。一躍、時の人となりました。
 この時点で聴いていたのは、前記ベルリン国立歌劇場の「タンホイザー」と、サヴァリッシュ指揮の1962年バイロイトライブの二組だけでした。シノーポリというと普通と変わった刺激的な指揮をするという印象があったのですが、いたって普通の「タンホイザー」で、正統で穏健な演奏だと思いました。爽やかで推進力の強いサヴァリッシュ盤の感動を先に味わっているので、この演奏が物足りなく感じられたのでしょう。このときの演奏はドレスデン版ですが、ドイツグラモフォンに録音したレコードでは、スチューダーのみ同一キャストでパリ版で演奏されています。スチューダーのほうはこの後、エルザやドンナ・アンナなどの大役にどんどん抜擢されて、レコードでもよく見かける代表的な歌手となりましたが、リチャード・ヴァーサルはそうではありませんでした。

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1983年、ベルリン国立歌劇場の「タンホイザー」
20年ぐらい前のソニーベータハイファイデッキを買いました。いま標準のVHSではなくて、市場から姿を消してしまったベータの方です。なんと30万円もしました。しかし高音質で、しかも、映像なしの音声だけでも録音できるという画期的な製品でした。今はもちろん当たり前の機能です。当時、ワーグナーのオペラなどの録音に、カセットテープを使っていて編集が大変でした。ちょうどよいところで録音を切って、テープをひっくり返す、あるいは次のテープにする、という作業を何度も失敗しながらやっていました。その問題がいっきょに解決。なんと3時間から5時間、連続で録音できるのです。開館して間もない市立図書館に通い詰め、LPの録音に励みました。
 そんなときNHK教育でベルリン国立歌劇場来日公演「タンホイザー」を放映しました。オペラの放映は年に一度くらいしかなく、大変めずらしかったので録画しました。残念ながらモノラル放送でしたが、当時はそんなこと関係なく、とても満足でした。
 それはそうと、序曲が終わってバッカナールのバレエが始まるとびっくりしました。昨年NHK紅白で、はだかみたいなタイツ着用が話題になりましたが、あれ以上です。テレビでこんなものを放映していいのだろうか、しかもNHK。2年ほど前、3代目のベータデッキが壊れるまでよく見ていました。この公演についてはまた別の機会に書きます。、
 初めて買った高価なビデオデッキで録った最初のオペラとして、「タンホイザー」は私にとって印象深い作品です。

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