このシノーポリ盤でいちばん気になっているのは、第一幕最後手前3分前のところにある管弦楽部分だ。ヴォルフラムのアリオーゾに始まる全体合唱がいったん収まって、タンホイザーが「Zu ihr! Zu ihr!」(彼女のもとへ)と歌い出すまでの間の間奏部分。いちばん最初に聴いていたサヴァリッシュ盤では、ここのところは全く単純に演奏している。ぜんぜん違う。十数年前に初めて聴いたとき、これは、シノーポリ独特の演奏で、変わったことをしているに違いない、やっぱり彼はこんなことをするのだ、と思いこんでいた。それから他の人の演奏を聴くと、むしろ変わっているのはサヴァリッシュ盤の方だったことに気づいた。そうと分かっても、このシノーポリ盤が最もこの部分をきわだたせて、ゆっくり演奏しているので、やっぱり、ちょっと変な気がする。しかし、全曲通して何度か聴くとシノーポリの解釈も納得できるものではある。