「ひとつ、村上さんでやってみるか」より
 「そうだ、村上さんに聞いてみよう」「これだけは、村上さんに言っておこう」をとりあげたら、さらに続きがあったようです。
「ひとつ、村上さんでやってみるか」より。

村上さん雌綱

☆☆明日香栢の森 雌綱


 言葉だけは達者だけど、魂は浅いという人が、世の中にはたくさんいます。人間にとって大切なのはむしろ、言葉にならない「何か」をそのままじっと抱え続けられる心の強さと魂の深さを獲得することではないか、と僕は考えています。

 僕は自分に才能があると考えたことはほとんどありません。ほかのたいていの人が持っているはずのものを、徹底的に大事にしてきただけではないかと考えることもあります。僕は一度何かを決めたら、わりにしつこく、我慢強く追求する性格です。

 男女の仲について誰かに「どうなんだよ?」と尋ねられた時、男は原則としてそれに対して正直に答えない方がいいと思います。てきとうにごまかしてください。はっきりした返事をかえす権利は女性に与えるのが筋であり、礼儀です。にこやかにごまかす、というのは人生の長丁場に欠かせない技術です。


 僕も30歳になった頃には、「見るべきものはだいたい全部見た」みたいな気になっていました。でも実際はなんにも見ていなかったんですね。今思うと冷や汗が出ます。人生にはいっぱい見るべきものがあります。

 20歳の時には僕も、人の気持ちなんてほとんどわかりませんでした。今でこそこんな具合にけっこうえらそうなことを書いておりますが、20歳のころなんてほんとに馬鹿でした。だからあなたが不安になるのも当然のことです。それに40歳の男の気持ちなんて、わかるわけないですよねえ。

 あえて正直にお答えします。40歳をすぎてなおかつ素敵な女性とは、「できればやりたい」と思わせてくれる女性のことです。そんなの誰が考えても当たり前のことではないですか。そんなこと、正面切って僕に質問しないでください。


 男の人とうまくつきあう方法? 簡単です。男の抱いている妄想を満たしてあげればそれでいいのです。男という生き物はほとんど妄想に基づいて生きています。でもおおかたの女性はその事実を理解していません。というのは、女性の大半はとても現実的で効率的な人生を送っていますし、そこでは妄想などというものはほとんど効力を発揮しないからです。だからほとんどの女性は妄想というものの機能を本当には把握できていない。それこそが世界の恒久的な平和を損なっている、もっとも大きな要因ではあるまいかと僕は考えています。

 文章というのは書き方ひとつで、他人を激しく傷つけることもありますし、自分自身を激しく傷つけることもあります。だから僕が文章を書くときにまず気をつけるのは「この文章は誰かを傷つけてはいまいか?」ということです。それから次に「こんなことを書くことによって、僕は自分を損なっているのではないか」ということです。文章というのは、書いている人間に、遅かれ早かれそのままはねかえってくるものです。

「あのときやろうと思えばきっとやれたんだけど、やらなかった」ということってありますよね。僕にもけっこうあります。でもね、そういうものこそ時間が経過すればするほど、人生の大きな財産になるみたいです。


「ひとつ、村上さんでやってみるか」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける490の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? (Asahi Original)

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[2013/05/06 17:15] | おすすめの本 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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