『カラマーゾフの兄弟』を読破したことのある人


 「村上さんに聞いてみよう」シリーズでも、読者の質問に答えて、やたらと『カラマーゾフの兄弟』の話が出てきた。ゆくゆくは「バー・スメルジャコフ」を開きたいとか、映画を撮るとしたら、私だったらこういう配役にする!とか。

 それだけではなく「世の中には二種類の人間がいる。『カラマーゾフの兄弟』を読破したことのある人と、読破したことのない人だ」なんてことも書いている。

 「ドストエフスキーは作家としてのすべての資質を備えた作家であると、僕は考えています。彼のもっとも優れた点は、説明的にではなく、あくまで描写的に、人間の魂のもっとも深いところにまで、読者をひきずっていけたことです。僕がやりたいのも、同じようなことです。」

 というようにあまりにも『カラマーゾフの兄弟』を連呼されたので、いってみれば強迫観念から自らを解き放ちたいために、読みました。連休がなくなりました。


 『カラマーゾフの兄弟』は一度読んだことがありました。
その年は、雨がひどく、7月いっぱい雨ばかりで晴天のない、ひどい一ヶ月だった。しかも私の住んでいた安アパートは、塗装工事中で、窓にビニールシートがかけられ、閉塞感の強い部屋の中で、まるまる一週間、ほとんど読むことだけに集中した。その前の二週間はトルストイ『戦争と平和』に当てていた。もちろん絵も描いていたが、ほとんど部屋に閉じこもって、二つの長編小説を読んだだけの一ヶ月だった。

 その最初に読んだ『カラマーゾフの兄弟』は原卓也訳で、世界文学全集のような文字がぎっしり詰まった大判の本で、この長大な全編がただの1冊になっているものだった。ちなみに『戦争と平和』は2冊だった。

 今回は亀山郁夫さんの訳で、4部とエピローグそれぞれ別に5冊に分かれている、新しい文庫本だ。以前に読んだときよりずいぶんと読みやすかったが、それでも連休の一週間をつぶしてしまった。特に入り込みの第1部が続けて読めなくて数日を要し、その後の第2~4部は、それぞれ1日~1日半で読めた。当然だが、クライマックスになるほど集中して読めたというか、やめられなくなった。

 訳者が、解題で何度か書いています。ドストエフスキーは交響曲のような様式、しっかりと考え抜いた計画的構成で、物語を進めていると。交響曲の四楽章構成に似せている。さらに、ベートーベンの第9のコーダのような、(とってつけたような感じもする)エピローグで、爽やかにさっそうと締めくくられる。

 13年後にアリョーシャが主役となる、『カラマーゾフの兄弟』後編に書かれるはずだった、とてつもない事件を暗示するかのような、唐突で、あっけらかんとした終結。この小説、もう一度、読むことがあるのだろうか。


カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

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[2013/05/12 20:29] | おすすめの本 | トラックバック(0) | コメント(5) | page top
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コメント
化粧をしたほうがいいのか
地下室の手記は読んだよ。

カラマーゾフは、アリョーシャかミリョーシャか

もう名前がこんがらがって、途中で置いています。

展覧会おめでとうございます。にけちんがんばv-81
[2013/05/12 20:43] URL | とも #lQO9N8Ig [ 編集 ]
Re: 化粧をしていないように見える化粧をしたほうが
ともさん、おたよりありがとうございます。

長編小説を読むと、やっぱりともさんが、どっか行くみたいなので、しばらく読まないようにします。
「ダンス・ダンス・ダンス」の長さぐらいまでは、私は長編小説の部類に入れていないので読むかもしれない。
[2013/05/12 20:55] URL | にけ #- [ 編集 ]
ウイスキーを飲めるように
梅酒なんて、小説に出てこないぞ。

病院で8千円もとられると、ぐれたくもなりますよね。
まあ、自分が治療されたわけではないのが救いです。

おとなになるまで、梅酒を飲んだり、お化粧をしたりしてはいけませんぞ。
「ダンス×3」は、1日で読めたので、やっぱ長編小説じゃない。
もうしばらく読まないようにしようっと。
マルタはイタリアとチュニジアの間にあったりなかったりします。
[2013/05/19 13:11] URL | にけ #- [ 編集 ]
カラマーゾフは読みましたが、正直あまり面白くなかった…と思ったら続編の構想があったんですか。
それなら納得。それも絡んだら雄大な物語ができたでしょうねー

罪と罰はあのネクラぶりが…・(私の知人女性はあの作品について一言「きもい」w)

白痴が一番好きかな。途中の朗読シーンはさすがに退屈アンド痛すぎてそのまま飛ばしましたが、人物行動の状況描写が抜群にうまいと思いました

またCDやDVDネタも書いてくださいよー

あと、個人的には猫さんの絵など期待しておりますですます

私も最近はまたちょこちょことブログ更新してます

またよろしくお願いしますー
[2013/05/26 01:34] URL | 猫大好き #- [ 編集 ]
白痴同好会?
猫大好きさま、コメントありがとうございます。

そういや、最近新しいCDなど、あんまり聴いてないのです。「ルサルカ」と「~マクベス夫人」は、数年前新国の予習で、聴きました。まあ、その時だけでいいかなって曲です。

「罪と罰」は、半分まで読んで挫折しました。忘れていましたが、私も「白痴」が、たぶん一番好きです。
[2013/05/26 18:39] URL | にけ #- [ 編集 ]
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