家族としての犬と猫
かわいい猫の日本画


 ここのところ村上春樹の小説を読んで、「グレート・ギャツビー」や「ザ・キャッチャー・イン・ザ・ライ」の元『ライ麦畑でつかまえて』を考えていると、当然のことであるが庄司薫が思い出される。

 おまけに村上の最新作が色をテーマにしており、4色使っている。
まったく庄司薫の「赤黒白青四部作」ではないか。

赤頭巾ちゃん気をつけて
さよなら快傑黒頭巾 
白鳥の歌なんか聞えない
ぼくの大好きな青髭  

 したがって、近いうちに、読み直してみようと思う。

 その庄司薫の最後の本は『ぼくが猫語を話せるわけ』という、猫についてのエッセイ集だ。後書きに奥さんであるピアニストの中村紘子が『わたしも猫語が話せるわけ』という楽しい文章を載せていた。(ような記憶があるが、文庫本の方かもしれない)これはこれで大変ためになる?文章満載である。それについてはまたあとで。

 図書館で検索してみたら、いちばん新しい本は、といってもそうとう古いが、「家族としての犬と猫」という本だった。この本はアンソロジーである。序文は本人が書いている。彼の動物とのつきあいは、今までのエッセイで十分理解している。しかしまあ、ちょっとはじめの所を載せてみよう。上に書いた、小説とエッセイ集はおすすめの図書である。しかし、この本はまだ読んでいないのでわからない。読んだところで、犬も猫も、妻も肯定ペンギンも同居していない私としては、なんら説得力を持ったおすすめなどできるわけもない。



家族としての犬と猫

家族としての犬と猫について 庄司 薫

 小学校四年生の時から十三年間、ぼくは一匹の犬を大切に飼っていた。とてもいい奴だった。この犬のことを思い出す時、ぼくの中には或る柔かく懐しい何かが溢れるように目覚める。率直に言って感傷的と呼ばざるを得ない何かが甘く渦巻いたりして、ぼくを狼狽させる。彼に死なれた時ぼくは、こんな思いをする位なら二度と生き物は飼うまいと心に決めたものだった。

 ところが今ぼくは、既に満十五歳を越えた巨大な牡のシャム猫を飼い、目下のぼくの日常生活の少からざる部分を、この体重七・五キロを誇るタフな巨猫の不老長寿のために費している。一日十八時間眠っていてあとは当然寝呆けている彼の新陳代謝を知的にも肉体的にも活性化すること、平たく言えば遊んでやることのために。

 考えてみると、これまで犬と猫以外にもずい分いろいろな生き物を飼った。オタマジャクシ(当然カエルも)、カブトムシ、カイコ、ハツカネズミといった小学枚の理科の実験材料から、ウサギ、ニワトリ、ハト、カラスといったいずれもひょんなことから迷いこんできた動物たち、そしてメダカやキンギョの類いも忘れてはいけない。
 どれもそれぞれ面白かったが、犬と猫に比べる時全く次元の異る生き物だったと思われるのは何故だろう。

 後頭部のせいだ、というのがぼくの永年の仮説の一つだ。動物が可愛くなってくると、特にその後姿が気に入るようになる。とりわけその後頭部のあたり、犬でも猫でもその両耳のうしろから首筋に向う丸いふくらみのあたりを眺めていると、ぼくの中のもの想いのすべてが急に時間とのつながりを失って緩かにたゆとうような気がする。


 ともかく、古今東西に及ぶ犬と猫に関わる文章を漁ってみた結果、面白い事実に気がついた。犬と猫は人類の極めて古い友とされているけれど、われわれが犬と猫について自由にあれこれ語るようになったのは実はごく最近のことなのだ。ぶっきらぼうに断言すれば、産業革命に始まる社会の加速度的変化に比例して、われわれは犬と猫について多様に語るようになった。

 この過程は、言い換えれば犬と猫がその実用的価値を失っていった過程ともいえる。食糧生産の機械化、組織化が狩猟犬や牧羊犬を追い払い、エジソンの発明以来の街燈や防犯ベルを備えた都市の発達が番犬の役をとり上げた。鼠を獲る能力一筋で人類の尊敬をかち得ていた猫に至っては、たちまちその鼠の獲り方自体を忘れ去る有様となった。そして彼らは、失職した労働者と同様とりあえず家庭に入りこんで寄食をする道を採用したのだが、これが結果的には大成功となった。

 その実用的価値を失うことで、彼らはかえって純粋な「家族」として重大な存在価値を持つようになったのだ。

 ところで、本巻の「家族としての犬と猫」というタイトルは丸谷才一氏の発案になるものだが、ここにはきわどい含蓄もある。
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テーマ:犬猫のいる生活 - ジャンル:ペット

[2013/06/05 20:15] | おすすめの本 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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