『さまよえるオランダ人』 バイロイト2013



 数日前に放映されたザルツブルグ音楽祭『ドン・カルロ』を見て、残念ながら、やっぱり共感するところがないと再確認した。それで、ちょっと前に放映された『さまよえるオランダ人』を見た。

 ここのところ、とっぴょうしもない演出ばかりのバイロイト演目の中でも、比較的穏当なものだろう。(他演目は写真でしか見ていないが)そもそも工場の中みたいだし、合唱はサラリーマンスタイル、オランダ人はTシャツで、ダンボール箱の中でゼンタと歌う。それでも、だんだんそんなことは気に障らなくなって、オランダ人の救済に感動した。

 最後のゼンタが歌ったあと、幕が閉まる直前、カメラの前をエリックと誰かが、かすめるように通り過ぎる。幕が開くと「オランダ人とゼンタ」人形の大量生産場面が出て終わるというのは、ちょっと気分が悪い。けれどこのオペラの本質はよくわかった、ような気がする。

 
クリスティアン・ティーレマン指揮 ヤン・フィリップ・グローガー演出
バイロイト祝祭劇場2013年7月25日
ヨン・サミュエル(オランダ人)
リカルダ・メルベト(ゼンタ)
フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ(ダーラント)
トミスラフ・ムジェク(エリック)
ベンジャミン・ブランズ(舵取り)
クリスタ・マイア(マリー)


 元々、「タンホイザー」には非常に共感しているのだが、「オランダ人」はそうでもない。しかし、育った村を飛び出してヴェーヌスの森に行くのも、大海をさまよってどこにも安住の地を見つけられないのも、似たようなものではないか。エリーザベトとゼンタの死によって救われるのは似ているどころではないし。

 他の演目ほどではないが、ビデオでもCDでも「オランダ人」は数種視聴している。実演ではサヴァリッシュ指揮のバイエルン国立歌劇場公演のみだが、その時はビデオを見るのとは違い、衝撃を受けた。歌手はユリア・ヴァラディ、ジェームズ・モリス、ペーター・ザイフェルト。ディースカウと一緒のリサイタルで聴いていたヴァラディと全然声が違う。この本物の声でないと、救済はできないんだな。(肖像画も描けないんだな)

 小澤征爾・大江健三郎の「同じ年に生まれて」から、だいぶ書きだしたところで、勝手にネットから「Windowsの更新、再起動」がかかって、文章が消えてしまった。やる気を削がれた。二人が共通して言っていることは、子どもが生まれたら、人生の計画が変わってしまった。日本の文学を変えてやる気で村を飛び出してきたのに、この子のためなら、今の仕事をやめてもいいと、思ったそうだ。

 ちょっとグレてわかりにくく書いてます。わたしなんて「潮騒」のような漁村を飛び出し、東京を目指すものの、たどりつけず、中大兄皇子が大津に都を置いたように、首都圏の辺境に住んでいる。こんど岸に着けるとしたら、新宿か飛鳥か開聞岳で救われたい。 田舎というのは、山が迫っていて、夜空が三分の二しか見えない。ということを『さまよえるオランダ人』を見て思ったのだ。

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テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2013/09/12 19:30] | ワーグナー | トラックバック(0) | コメント(2) | page top
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コメント
>サヴァリッシュ指揮のバイエルン国立歌劇場公演
>ユリア・ヴァラディ、ジェームズ・モリス、ペーター・ザイフェルト

もう、随分古いですね。1992年11月でしたっけ。
僕は、社会人1年目。
お金がないから、いけませんでした。
あの当時、まだ、非常に豪華なCastが可能でした。
今は、とても貧弱です。

なぜ、ワーグナーを歌う人は、他所でも同じようなCastになるのでしょうね。仕方がないですけど。

意図的に、バイロイトに出演しない人も多くなりました。

バイロイトに出ない代わり、時間とその場所に拘束されたくない歌手も多い。

こういうバイロイトに出ているほうが、声の温存には、有効なのに。お金稼ぎしたい人・エージェントが増えたからなんでしょうね。

潰れた・短命な歌手も増えた。。。。
[2013/09/13 03:48] URL | 今昔物語 #- [ 編集 ]
今昔物語さま
今昔物語さま、丁寧なコメントありがとうございます。

そうなんですよ、この頃は歌手がよくて、しかも外来オペラは年1回ぐらいしかなかったので、年に一度っだでだと思って高いけど行きました。1992年11月ですね。
この時のバイエルン、この時がいちばん盛り上がっていて、3演目全部見ました。あと「影のない女」と『フィガロの結婚』でした。

今はバイロイトやDVDなどの映像でも、有名な歌手が少ないですよね。最近は、ネトレプコの椿姫以来、とんとまともなもの見に行ってないです。
[2013/09/13 22:42] URL | にけ #- [ 編集 ]
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