『タンホイザー』 レヴァイン指揮メト1982 第2・3幕
第2幕
 ローマ時代の元老員のような天井の高い建物内部。左右の壁面上部にはフィレンツェのヴェッキオ宮殿風の壁画が見える。中央部は吹き抜けで外の空が見える。2段階のアーチ式柱で支えられており、2階部分は人が通れる通路のようになっている。行進曲のトランペット隊はここに並ぶ。ここは窓かと思っていたら、全員登場の時に下の開口部の左右から階段を上るように歩いてこちらに出てくる。建物の正面入り口のようだ。ヘルマンとエリーザベトは客席側に立って、入場者を迎え入れている。

 中央には丸く3列くらいの板の長いすが置かれており、騎士はそれとは別の背もたれのない四角い箱に座る。導入部のヘルマンとヴォルフラムの歌が長く感じるが、パリ版でヴァルター部分がないため、その後は急速に過ぎる。タンホイザーよりもヴァルターの方がいい声に聞こえるので、ここはもったいない。ビテロルフの後のタンホイザー2回目の歌で、みんな意気って立ち上がる、ヘルマンが「静粛に」と声をかける。

 みんなの非難が集中する中、エリーザベト一人中に割って入り「Haltet ein!(待って!)」と叫ぶところ。他のライブ盤と同じでエリーザベトの声がオケの全奏からはみ出している。だがここでは、かなり長く伸ばしている。スタジオ録音ではオケと同じにピタッと納まるところでこんなに変えてもいいのだろうか。聴いている方はこの方が印象的だろう。

 ここでもやっぱりイマイチなタンホイザーのリチャード・キャシリー。最後の盛り上がりの部分では、声が出なくなるところもある。以前のビデオでルネ・コロもここのところで非常に苦しそうだった。ローマ語りよりもキツいのかもしれない。ヴォルフラムのベルント・ヴァイクルは、何も悪いところはないのだが、ディースカウが上手く歌うのがあたりまえのように、なんだか堅実すぎる。ヘルマンのジョン・マカーディは予想以上に良い。分かりやすくて聴き易い。ちょっと軽めなのかもしれない。

 エリーザベトのエヴァ・マルトンに、今まではよい印象を持っていなかった。歌も容姿も悪くないのに。映像で見るアンナ・ネトレプコのようなものだ。野太い声でなんとなくダルいような気がしていたのだ。もうちょっと高くてきれいな声は出ないのかね、なんて。タンホイザー役の反対ですね。ネトレプコが実際に聴いたら圧倒的に素晴らしい声だったのが効いているのかもしれないが、今回のマルトンは素敵だ。この感動的な第2幕フィナーレでは、目に涙を一杯ためて歌っている。分厚い合唱やオケの中を、声が突き抜けてくる。パリ版の管弦楽部分も、今度はうまい。盛り上がりに次ぐ盛り上がりで、不幸のどん底のような話が、これぞまさに大団円で終わる。


第3幕
 第1幕後半と同じで、背景は暗くかすんでいる。ヴォルフラムが奥の道から歩いてくる。エリーザベトは中央に倒れている。起きて歌い出すときには、巡礼団が左下から上って出てきて、右にぬける。オケの弦楽器はそのままに、序曲の最後のところでトロンボーンが吹く主題を合唱が歌う。左手前にマイルストーンのような柱が立っている。

 ヴォルフラムもエリーザベトも問題なくいい。エリーザベトは前よりも高い声が出ているようだ。第3幕は字幕がないとつらい。これはユーチューブで見ている。レーザーディスクで見たときは、フィナーレ合唱の言葉に感動したものだ。

 タンホイザーは杖をついて、モーセみたいなボロボロの衣装で現れる。歌は今までよりも安定して上手い。しかしまあ今ひとつですが。道の奥からエリーザベトを横たえた担架と、村の人々が現れる。手前に担架を置いて、その横でタンホイザーが同じように倒れている。新緑の芽が吹いた杖を持ってきた女性が、ヴォルフラムに渡す。ヴォルフラムは杖をエリーザベトの担架に立て掛ける。

 最後の場面では二人とも死んでいる。「さまよえるオランダ人」のような、二人の相手に対する葛藤とやりとりは、ここでは描かれず、フィナーレの音楽は、あの微妙な終わり方は、拍手にかき消されてどこで終わったのかわかりにくい。





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テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2013/09/24 19:46] | タンホイザー | トラックバック(0) | コメント(2) | page top
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コメント
ところで、メトロポリタンの公式HP上では、レヴァインのMET復帰の1分間動画が流れていますね。
パーキンス氏病も患っていることも、METは認めているのだし。

ますます、バブル始期に、クラシックの中で、オペラを知り始めた人間にとって、活躍していた人が駄目になっていく姿の痛々しさってありますよね。

クラシックに興味を持ち始めた時期が<レコード>と云っていた時代の人間の部類なので、時の流れを強く感じますよ。。

レヴァインの振る演目の今シーズン、コシ、ヴォツェック、ファルスタッフ、チェネレントラ。
一見、なんでと思う演目もあるけど、やると手腕の問われる作品のみだけ、思い残すことない様に、取り上げている感じですね。
[2013/09/28 09:25] URL | Tantris #- [ 編集 ]
Tantrisさま、コメントありがとうございます。

一時期はたくさんビデオが出ていたレヴァインも活動が少なくなったのですね。最初に見たのはザルツブルグの「魔笛」だったと思います。そういえばメトの日本公演でレヴァイン指揮「ホフマン物語」を見ました。なかなかよかったです。

5年ぐらい前までは、レコードをかけてCDに録音なんぞをしていました。いまはぜんぜんかけませんね。どうしたものでしょう。
[2013/09/28 16:46] URL | にけ #- [ 編集 ]
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