国境の南、太陽の西
国境の南


長編は全部読み、いよいよ中編小説で読んでいなかった「国境の南、太陽の西」を読んだ。中編小説、あるいは短いめの長編小説、と村上自身が区分している。わたしは長いめの長編小説しか興味がない。というか中編小説は面白いと思ったものがなかったので、この作品を読むのが遅れました。特にこの作品が好きだというコメントも見たことがないしね。

 全集本で読んだのだが、この本には村上本人の解題がついている。この作品は「ねじまき鳥クロニクル」のアウトテイクということは知られているが、その課程が詳しく書かれている。はしょって書くと「ひとつの本にするには多くの要素が盛り込まれすぎている。もう少しスッキリさせた方がいい」という奥さんの意見で、最初の方の三章を取り出して、別の作品として完成させた。そのうちの一章は、「ねじまき鳥クロニクル」の冒頭部分であったそうだ。

 村上作品では、「1Q84」と「ハードボイルド・ワンダーランド」が他の作品よりも楽しめた。それはきっと作品の善し悪しではなく、作中のキャラクターが、つまり主人公の相手の美人が気に入ったからではないのかと思っている。川端康成の作品でも、やたらと美人が登場し、相手が美人でなかったらそもそもお話にならないようなものだった。

 私が思うに、村上春樹は女性好みの女性と、男性好みの美人を、意識的に分けて両方とも登場させているようだ。「主人公の相手の美人」と書いたのも、人によって思うところが違うみたいだから、ぼかしているのだ。

 この小説では、村上作品に限らず非常に珍しいことであるが、美人が出てこない。官能的な性描写もない。どちらかというと、いつもはパッとしないはずの、主人公の男性の方がカッコイイ。そういえば片鱗は見えるものの「ねじまき鳥クロニクル」にも、美人が出てこない。

 もしかしたらここ一ヵ月間、「雪国」を始めとして川端康成作品をたくさん読んだ影響が出ているのかもしれない。「雪国」や「伊豆の踊子」なんて、若い頃読んでも、面白くも何ともなかった。自分が面白くも何ともない人間なのだろう。

 そういうわけで「国境の南、太陽の西」は、とてもよかった。
一気に読んだ今だったら、村上作品のなかで、いちばん好き、と言ってもいい。


国境の南、太陽の西 (講談社文庫)
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[2013/11/05 18:00] | おすすめの本 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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