□「国境の南、太陽の西」はワルキューレ。■ニケデミー賞2013□
ニケデミ2013



ニケデミー賞2013年 今月の図書の中から 候補が少ないけど
「国境の南、太陽の西」ですな。

★★★国境の南、太陽の西  村上 春樹
★★わたしを離さないで Never Let Me Go カズオ・イシグロ 土屋政雄訳
★★世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 村上 春樹 2読
★★ねじまき鳥クロニクル 第1部、第2部、第3部 村上 春樹 2読
★★潮騒 三島 由紀夫 再

★★「仮面舞踏会」トリノ王立歌劇場来日公演 東京文化会館
★★「魔笛」ショルティ69
★コウンゴルト『死の都』ラインスドルフ75 


 昨年まで小説は年に一冊ぐらいしか読まなかった。ところが昨年末に読んだ、「1Q84」のせいで今年はまともな小説をたくさん読みました。この影響力を考えれば、2012年の大賞は「1Q84」だったのでしょう。「1Q84」の功績を加味して「国境の南、太陽の西」が今年のNo.1です。(煽りを食ってオペラ、少なっ)  

 私もこれを読むまで、村上春樹に興味はなかったので、嫌っている人の気持ちもなんとなくわかります。本人が言うように「村上といえば龍、春樹といえば角川(古いっ)」ですね。

 村上春樹の本をたくさん読みましたし、カズオ・イシグロと川端康成のほとんどの長編なども読みました。ドストエフスキーの2作品は大変でしたね。不思議なことに夏目漱石の、虞美人草、三四郎、こころ、それからアンナ・カレーニナなど読み始めて途中で止めています。読めないものもあるのです。


 再読というか2回読んだところ、村上春樹の長編では「ねじまき鳥クロニクル」が、いちばんよかったです。最初に読んだときと全然違います。

 短いめの小説「国境の南、太陽の西」ですが、「ねじまき鳥クロニクル」のプロローグであることはもちろん、「1Q84」の過去話としてもおかしくありません。「国境の南、太陽の西」は「ワルキューレ第1幕」のような凝縮した存在です。「1Q84」も、天吾とふかえりが、兄妹の交わりで救世主を宿すお話。

  ワーグナーの長大な『ニーベルングの指輪』における、「1Q84」が「ジークフリート」、「ねじまき鳥クロニクル」が「神々の黄昏」ですね。両方とも3部構成で、第2部で一応終わったようになっているのに第3部がある。それから「ねじまき鳥クロニクル」は、「1Q84」「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」のようにはっきりと章立てで分けてはいませんが、内部は別れています。第1・2部は2つの世界に分かれ、第3部は3つの世界に分かれています。

「ねじまき鳥クロニクル」は、第1・2部と第3部ではっきり断層があります。この点は、「ジークフリート」に似ています。この間にワーグナーは「トリスタンとイゾルデ」を書いて、非常なる深化を遂げて帰ってきたわけです。この間に「国境の南、太陽の西」があってもおかしくありません。村上さんは書いている間、合衆国に住んでいたので、本当に井戸に入ったのかもしれません。

 「ねじまき鳥クロニクル」第2部の最後は凝縮され終結しています。大作の最後にふさわしい終わり方です。ところが第1部最初は、軽く唐突に始まります。「国境の南、太陽の西」は、開始部が大作にふさわしい堂々たる恰幅を呈しています。元々この第1章が「ねじまき鳥クロニクル」の冒頭にあてられていました。単独でもよし、以降の作品の導入部、というかすべてを囲い込んでいるといった作品です。「1Q84」の最後は締まっていないので、続きを望んでいます。
 
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[2014/01/06 15:38] | 今月の図書 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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