『タンホイザー』 バイロイト2014 第3幕
bairoi11_20141109133101b5e.jpg



 幕間には、またスターウォーズばりの文字の羅列が出てくる。それから舞台上でミサのようなものが執り行なわれること20分、演奏が始まる。序曲に似た前奏曲の間に、細胞を培養して、細胞分裂してしている映像が映る。いや卵子の回りを精子が取り巻いて、受精して、細胞分裂が始まったようだ。これはヴェーヌスのお腹の中にいる子供ってことだろう。乳房聖母の背後にその映像が重なる。この施設の掃除係みたいな巡礼者が現れる。タンクトップで、モップ、バケツ、ぞうきんを持っている。

 おおエリーザベトの衣装が、荒い手編みのセーターを全身に引き延ばしたような真っ白着ぐるみで、真っ白が故に普通の演出の神聖さに満ちあふれたエリーザベトだ。歌も良かったし、まともだ。エリーザベトが、こんなにエリーザベトらしいのはめずらしい。ギネス・ジョーンズやチェレスティーナ・カサピエトラ以来ではないかと思う。ただ歌い終わった彼女はバイオガスのタンクに自ら入る。ウォルフラムが外からかんぬきを掛ける。もう二度と出てくるなってことか。

 ウォルフラムのいまいち出来のよくない歌の後、チョコバナナみたいな飴を手に、ヴェーヌスが現れる。夕星の歌あたりでは、ウォルフラムとヴェーヌスがダンスを踊って仲良さそうである。その後、バイオガスのタンクのかんぬきが外れ、ドアからエリーザベトの手が出て、力尽きて倒れる。白いエリーザベトの映像が、乳房聖母の映像と重なる。

 ここから先のタンホイザーとヴォルフラムの対話は、どっちがヴェーヌスを得るかというのを競っているようだ。トルステン・ケールの声は、非常に聴きやすい。新国の「死の都」はとてもよかった。おそらくリチャード・ヴァーサルに似ているのだろう。だから生で聴いたら、ヘンデンなところは感じられないかもしれない。ローマ語りに入ると、もはや背景のクズなどどうでもよくなり、音楽に集中できる。いつもは長いこの場面が、あっという間に終わる。

 ヴェーヌスベルグへ戻ろう!ヴォルフラムも行こう。
ヴェーヌスは地下へ降りていき、掃除夫や精子くんなどの有象無象が出てくる。タンホイザーは死んだが、子供は生まれた。子供をみんなで回す。お腹のへこんだヴェーヌスは、なかなかカッコイイ。エリーザベトは二階から祈る。アムネリスみたいに地上で祈る。ヴェーヌスは地下のアイーダで、赤ちゃんを抱いて前に出て、勝利のガッツポーズ。


 プラトンが言うように、ヴァルトブルクの人々は、自分が縛られて動けないでいることも知らず、前で見せられている影絵を現実だと思っている。そんなやつらにエリーザベトは渡したくない。ヴェーヌスもエリーザベトも、タンホイザーだけが好きなのだ。タンホイザーだけが外の世界を見てきたからだ。美人は薄命だ、天才は短命、タンホイザーもソクラテスも、この世に長くいられない。

 見終わった後、興奮していたのである。。
私は猫の森に帰ろうっと。


Tannhauser
Ⅰ.58m12s Ⅱ.68m30s Ⅲ.50m16s
Musikalische Leitung : Axel Kober
Regie : Sebastian Baumgarten
Buhnenbild : Joep van Lieshout
Kostume : Nina von Mechow
Licht : Franck Evin
Video : Christopher Kondek
Dramaturgie : Carl Hegemann
Chorleitung : Eberhard Friedrich

Landgraf Hermann : Kwangchul Youn
Tannhauser : Torsten Kerl
Wolfram von Eschenbach : Markus Eiche
Walther von der Vogelweide : Lothar Odinius
Biterolf : Thomas Jesatko
Heinrich der Schreiber : Stefan Heibach
Reinmar von Zweter : Rainer Zaun
Elisabeth, Nichte des Landgrafen : Camilla Nylund
Venus : Michelle Breedt
Ein junger Hirt : Katja Stuber


tanhauser_5s.jpg
スポンサーサイト

テーマ:音楽 - ジャンル:学問・文化・芸術

[2014/11/09 17:30] | タンホイザー | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
<<そにこうげん 1 | ホーム | ときのさと 表と裏>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://samotorakenike.blog91.fc2.com/tb.php/1412-426fe133
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |