2014年 にけ大賞は
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 毎年、年末年始は2週間ぐらい人に会いません。が、今シーズンは半分北国に行って、さらに、嵐が丘みたいな寒い生活をしていました。今年もコンサートとオペラには行っていないので、少ないです。それでもCD300枚ぐらいパソコンに入れました。印象に残ったものを並べます。

 ここ20年ぐらいは、「源氏物語」が最高の小説だと思っていたのですが、そうでもないような気がしてきました。「源氏物語」「戦争と平和」「白痴」を再読、「アンナ・カレーニナ」は4回目、「失われた時を求めて」を一回と半分。ところが小説の体をなしていない、分厚い本の下の方に脚注みたいに小さく書いてある日本語訳を読んだだけの『うつほ物語』に感動しました。
以前書いたものも含めて『うつほ物語』頌です。

 「小説とは本当は何か」中村真一郎、を読んだら、「源氏物語」よりも前に、それに匹敵する大長編小説があるとあったので、最初の巻「俊蔭」を読んだ。日本最初の短編小説・竹取物語につづき、日本最初の長編小説であり、平安時代の全体小説のようだ。竹取物語や阿倍仲麻呂の話みたいな現実的でないところから、そして短編の積み重ねで始まるが、孫の代まで行って、段々と政治の話に変わってくる。時間が前後したり、同じ話題が上ったりする。その中で起こった事件をとりあげている。ところが全体の半分ぐらいまですすむと、完全に大長編小説といった連続した流れになる。天皇家皇太子の継承争いと、秘琴の奏法を伝える話が二つの主題となっている。中島敦の「名人伝」の要素もある。

 時代的には、少し後になる「源氏物語」や「夜の寝覚」に、政治の話は出てこない。女性が政治の世界に立ち会えなかったせいである。だからこれら女流作家の書いた物語は、『うつほ物語』の一部を拡大したような内容だ。「源氏物語」が影響を受けた、とかいうレベルではなくて、ほとんど真似をして式部なりに書き直しているような部分もある。この三つは、出てくる天皇からみても、ほとんど同じ時代を背景に書かれている。

 『うつほ物語』の『うつほ』って何だ!としばらく思っていたが、光源氏みたいな主人公である「仲忠」が幼少の頃住んでいた、木のあなぐらのことのようだ。何もタイトルにしなくてもいいと思うような部分なのに。女主人公は「あて宮」、あてみやと読む。二人とも、特に習ってもいないのに、琴の演奏が神のようにうまい。「仲忠」の娘で、秘琴を伝えられるのが「いぬ宮」だ。信じられない名前だ。

 貴女「あて宮」が、かぐや姫のように、宮廷の未婚のすべての男性に求婚されるヒロインだ。彼女は「仲忠」の求婚をけって皇太子と結婚し、子供を立太子させる。つまり次世代の天皇の母となる。かたや振られた「仲忠」は、天皇の女一の宮と結婚し、母親の持つ秘琴の技を、娘に伝授する。このような二つの一子相伝継承物語がからむのである。結局のところ「あて宮」は、自分の子供が秘琴の技を受けられなかったことを後悔する。

 昨日読んだ川端康成の「東海道」の中に、「かぐや姫やあて宮でもなく、どうたらこうたら」と出ていたので、ちょっと安心した。他にあて宮が出てくる文章があるのだろうか。この本では「貴宮」とかいて「あてみや」とルビが振ってあった。漢字で書いているのを初めて見た。川端康成の外来語表記と当て字はあやしいと思っている。この本でも「不断着」と書いてあったが、「普段着」だろう。「化野」も「仇し野」とあったから、「貴宮」というのは疑っている。ちなみに「宇津保物語」の「宇津保」も、「うつほ」の読みに漢字を当てただけで意味はないと書いてあった。

 というわけで、2014年、レコード・ニケデミー大賞は『うつほ物語』。
 現在、私の中では「あて宮」が、ちょっとしたアイドルだ。



★新編日本古典文学全集 14 うつほ物語1 中野 幸一/校注・訳 小学館
(俊蔭、藤原の君、忠こそ、春日詣、嵯峨の院、吹上〔上〕、祭の使、吹上〔下〕)
★★新編日本古典文学全集 15 うつほ物語2 中野 幸一/校注・訳 小学館
(祭の使、菊の宴、あて宮、内侍のかみ、沖つ白波、蔵開〔上〕蔵開〔中〕蔵開〔下〕)
★新編日本古典文学全集 16 うつほ物語3 中野 幸一/校注・訳 小学館
(国譲〔上〕、国譲〔中〕、国譲〔下〕、楼上〔上〕、楼上〔下〕)
★宇津保物語・俊蔭 講談社学術文庫 上坂 信男

★★失われた時を求めて 1~13 鈴木 道彦訳
★失われた時を求めて 1~7 吉川一義訳岩波文庫
★★戦争と平和 上中下 トルストイ/[著] 北御門二郎訳 東海大学出版会
★アンナ・カレーニナ 上下 トルストイ/[著] 北御門二郎訳 東海大学出版会
★★「小説とは本当は何か」中村真一郎
★★『八月の光』フォークナー 加島 祥造1967訳
★★アブサロム、アブサロム! フォークナー 池澤 夏樹/個人編集 河出書房新社
★自負と偏見 オースティン 小山太一新訳
★悲しみよこんにちは サガン 河野万里子訳
★巨匠とマルガリータ ミハイル・ブルガーコフ 水野忠夫訳
★フラニーとズーイ サリンジャー 村上春樹訳
★『百年の孤独』 G・ガルシア=マルケス
★★『城』 カフカ
★白痴 1~3 河出文庫 ドストエフスキー
★歯みがき革命! 歯みがきよりも大切なこと 我妻 美夕紀
★歯医者が虫歯を作ってる 歯科医だから知っている、危ない話 長尾 周格 
★青年僧が挑んだ千日回峰行 ラジオ深夜便 CDセレクション 塩沼 亮潤

★★新国立劇場 コルンゴルト 死の都 BS放映
★★チャイコフスキー/コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 アンネ=ゾフィー・ムター
★シェリル・スチューダー モーツァルトアリア集
★「タンホイザー」バイロイト2014 NHK放映
★サカナクション ライブ2014 BS放映
★カントリー・ガール 谷山浩子
★映画 プライドと偏見 2005イギリス BS

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