『フィガロの結婚』 メータ フィレンツェ2003
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 演出はジョナサン・ミラー。たしかアバドがウィーン国立歌劇場で公演したときの演出家で、舞台装置は違うけれども、演出は似ているようだ。写実的な舞台装置であるために、実際に舞台で見るとそうでもないのだろうが、映像で見るとやや薄暗く汚れているように感じる。宮廷の使用人部屋であるから、みすぼらしいのも当然であるが、最近のザルツブルグなどの舞台装置と比べると貧相な感じがするのはいなめない。

 歌手もまた、どうしようもなく非力である。これがウィーンやザルツブルグとフィレンツェの格差なのだろうか。舞台装置だけではなく、歌手の見た目も平均年齢が高い。端役はそうでもないのだが、主役がいけない。バルトロやマルチェリーナはなかなかいいと思う。見かけがふさわしいのは、ケルビーノのマリーナ・コンパラートと伯爵夫人のエテーリ・クヴァザーヴァ。この二人はぴったりだ。これはめったにないことだ。クヴァザーヴァは、メータ指揮のライブ中継の「椿姫」で歌っていたが、今回はおとなしい。

 カラヤン盤に始った、第3幕の伯爵婦人アリアと六重唱の入れ替えがおこなわれているのと、第4幕マルチェリーナとバジリオのアリアがカットされている。残念なことであるが、実演ではこれが普通だろう。伯爵のルーチョ・ガッロは、おなじみだ。だが、10年前のスタジオ録音の方がよかった。立派な歌唱に驚いたのは、フィガロのジョルジョ・スーリアン。メータの指揮と相まって、第1幕の最後がこんなに気分が高揚したのは初めてだ。


ズービン・メータ指揮 ジョナサン・ミラー演出 フィレンツェ 2003年10月

伯爵:ルーチョ・ガッロ★
伯爵夫人:エテーリ・クヴァザーヴァ★
フィガロ:ジョルジョ・スーリアン★★
スザンナ:パトリツィア・チョーフィー
ケルビーノ:マリーナ・コンパラート★


 メータの演奏は、とても素晴らしい。スイトナーの演奏に似ていて、とりたてて何の変哲もなく、ごく普通に始るのだが、どういうわけか徐々に盛り上がって、フィナーレが終わると、感動に包まれる。ゆったり、繊細で、かゆいところに手が届く。食い足りないところはない。ベームの演奏に近い。かつてのワルター。フルトヴェングラー、クライバー、ベーム、カラヤン、スイトナー、クレンペラーなどの名演奏の後のものでは、もっとも優れた演奏ではないかと思う。つまり、アバドやムーティ、バレンボイム、レヴァインやアーノンクールの演奏よりもずっと良いということだ。


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[2015/08/16 18:59] | フィガロの結婚 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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