女のいない男たち 村上春樹
 村上春樹の小説では、長いものしか好きではない。短編集はもちろん、「多崎つくる」や「アフターダーク」のような短めの小説も好きではない。最近の短編集「女のいない男たち」も、たまたま図書館で見つけた、もう人気がないということか、ので期待しないで読み始めた。

 冒頭の「ドライブ・マイ・カー」と「イエスタデイ」は、ポールの名曲ですね。前者は名盤『ラバーソウル』の開始曲なので、全体の色を支配する勢いがあります。そのせいがあるのかないのか、一般的には好意をもって受けいれられているとは言えない本だと思いますが、前半は、テーマとはそれほど関係なく、人生を深く掘り下げているような感銘を受けました。


 3編目の「独立器官」より、気になったところを。

『逢い見ての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり』 権中納言敦忠

 恋しく思う女性と会って身体を重ね、さよならを言って、その後に感じる深い喪失感。息苦しさ。そして、そんな感情を自分のものとして知ることのなかったこれまでの私は、人間としてまだ一人前じゃなかったんだなと痛感しました。


 すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき備わっている。
 どんな嘘をどこでどのようにつくのか、それは人によって少しずつ違う。しかしすべての女性はどこかの時点で必ず嘘をつくし、それも大事なことで嘘をつく。大事でないことでももちろん嘘はつくけれど、それはそれとして、いちばん大事なところで嘘をつくことをためらわない。
 そしてそのときほとんどの女性は顔色ひとつ、声音ひとつ変えない。なぜならそれは彼女ではなく、彼女に具わった独立器官が勝手におこなっていることだからだ。だからこそ嘘をつくことによって、彼女たちの美しい良心が痛んだり、彼女たちの安らかな眠りが損なわれたりするようなことは、特殊な例外を別にすれば、まず起こらない。
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:学問・文化・芸術

[2016/12/21 14:25] | おすすめの本 2 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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