パン屋さんのコーヒー 2
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  パン屋さんの音楽について書いたが、当初書きたかったのはそのことではなかった。ビートルズは前振りであったが、長くなったのだ。ここで飲むコーヒーのことを言いたかったのだ。

 といってもコーヒーの味のことではない。実のところ、パンを食べながら、無料でついてくるのだから、紅茶だって、温かい飲み物だったら何だっていいのだ。あんパンにはコーヒーで、ケーキにはレモンティーだなんて、うるさいことを言っているわけではない。

 あくまでもおいしいパン屋さんである。散歩の楽しみとして、かけがえのないものである。パンを買うと、持ち帰っても良いし、テーブル席で食べてもよい。室内にもあるが、店の外にもテーブルがある。暖かい日は、外で食べると気持ちが良い。

 パンを買った人は、セルフサービスの機械からコーヒーをカップに入れて持ち出すこともできる。当然だが、パンを買わないで、コーヒーだけ飲みに来る人はいないと思う。私の場合、もちろん「ここで食べる」と言ってテーブル席に座ることもあるが、「持ち帰ります」と言って、袋に入れてもらうことの方が多い。

 テーブルで食べる場合は、パンはトレーに載せたまま移動するだけだが、お持ち帰りの場合は、当然、袋に入れてもらう。問題はここだ。最初のうちは、ここで食べるか、持ち帰るかはっきりしていたのだ。しかし、袋に入れてもらわない場合は、この場で全部食べきらなければいけない。

 ある時、パンを3個ぐらい買って、袋に入れてもらいながら、セルフでコーヒーを片手に持ち店を出て、外のベランダでパンを一個だけ食べて、コーヒーを飲むのが快適だと思った。3個のうちの一個だけを選んで食べ、他は帰り道、歩きながら食べるというのも楽しい。

 それでたいていは持ち帰りよう袋に入れてもらって、紙コップにコーヒーを入れて外へ出ることになる。紙コップと小さめの陶器のカップもおいてある。ここで食べる人は陶器を使ってもいいということだが、もちろん私は紙コップである。

 紙コップ、当初は、セルフコーヒー器の横に置いてあるだけだった。「ボタンを押すのは一回だけ」とか「2杯目からは20円」とか小さく張り紙がしてある。新しい店舗の方は、なんだかもっとうるさく「パンを買った人は一杯だけ」「外へ持ち出さないように」なんて、ちょっと神経質に書いてあったような気がする。

 そんなふうに書いてあるものの、控えめで、2回ボタンを押しても平気だった。1回ボタンを押しただけでは量が少ない。それで紙コップになみなみとコーヒーを入れて、店を出る。何も問題なかった。外テーブルで飲んだり、帰り道の公園で飲んだりしていた。

 ある時、紙コップがレジの前に置いてあるようになった。陶器のコップはそのまま。お金を払ってから、紙コップを手にとって、コーヒーのコーナーまで移動する。これでもちょっと手間がかかる。これも、最初は進んで「紙コップどうぞ」と言って、手渡してくれたが、そんなこともしてくれなくなって、自分で手に取るようになる。その後、紙コップはレジの後ろに置いてあるようになった。

 これで、お金を払い終わった後、「紙コップください!」と言わないと手に入らないようになった。最初は、気にしてなかったが、何度も続くと、そんなことお願いしなければいけないのが嫌になってきた。変化の様子を見ていると、無料のコーヒーを持ち出されたくないという方向性が伝わってくる。なにより、徐々にサービスが悪く変わってきたことが気分が悪い。

 こんな事するんだったら、コーヒー代として安価なお金を取るとか、コーヒーはここで食べる人だけとか、最初からそうであった方が気分がいい。そのうえで、もし、お客様が、コーヒーを飲みながら帰りたいんだと言ったなら、その時には臨機応変に対応してもらいたい。マニュアルやルールはあるけれど、店員の裁量で、ちょっと上乗せサービスするということで、お客はついてくるんだと思う。

 よく行く近所のレストラン。この店は大型チェーン店であるが、店員と顔見知りになると、混んでいるときに優遇してくれたり、日付の過ぎた割引券を、こっそり新しいのに取り替えてくれたり、職員専用の割引券をくれたりする。ある程度は許されているのだろうが、他の店の対応と全然違う。少し割り引いたって、毎週来てくれば、お店も儲かるだろう。「あなたはお得意様だから、他の人よりも気を遣って親切にしています」と感じさせることは接客業に必要だと思う。

 という、無料コーヒーのせいで、パンを食べることが少なくなったのである。
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テーマ:パン - ジャンル:グルメ

[2017/03/01 14:48] | カルトン | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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