
☆京都加茂川
『小説を読みながら考えた 養老孟司』の中から「想像力」について書いているところを抜粋します。この話はベストセラーとなった『バカの壁』にも書いてあります。別の本では、この例と男女が逆の話もありますので、想像力の欠如は男だけの問題ではありません。
いま教えている学生に、イギリスBBCの50分のビデオを見せ、その場でレポートを書かせた。ある普通の夫婦について、妊娠から出産までを医学的にレポートしたものである。興味深かったのは、男女学生の違いである。
女子学生たちは、あれを知らなかった、これも知らなかったと、妊娠出産の知識について、何を学んだか、さまざまな具体的な点を列挙してくれた。男子学生の半分もまた、そうだった。母親がいかに自分を苦労して生んでくれたか、あらためて考えましたというのもあった。
しかし男子学生の残りの半分は、「中学校の保健の時間に、似たようなビデオを見た、知っていることばかりだった」、と。女子学生の反応を見れば、「知っていることばかり」がウソといわないまでも、事実誤認であることは間違いないであろう。
人間は自分が当事者になる可能性がないと、いかに想像力を欠くようになるか、ということである。もっと重要な教訓がある。こういう学生たちは、結婚したあと、いずれ定年離婚になるのではないかということである。出産に対する態度が「知ってらア」なのだから、育児だって同じだろうと思われるからである。おそらく自分では育児に関わらないし、関わる気もないかも知れない。結婚する気すらないかもしれない。
日本のふつうの夫婦の愛情関係を調べた報告がある。夫から妻への愛情は横ばいないし右肩上がりだが、妻から夫への愛情は右肩下がり。「夫が子育てに協力しなかった」それが最大の理由なのである。
自分が父親になったとき、妻がどのように母親を演じているか、なにが大変か、その想像がつかないのではないだろうか。母親としての肩の荷を、一瞬でも軽くしてあげたことがない。 テーマ:本の紹介 - ジャンル:学問・文化・芸術
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