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オペラ サモトラケのニケ
なぜだか、ただいま『フィガロの結婚』特集と……『ドン・ジョヴァンニ』が割り込んできました。
『フィガロの結婚』ムーティ ウィーンPO 1987 その2
muti.jpg


序曲の演奏は、決してウィーンフィルらしくなく、無鉄砲で荒々しく、気分のスカッとする所もあるなかなかの出来。悪く言うと、オケが抑制されていないで、好き勝手に演奏しているようにもきこえる。その後も、ムーティの方にウィーンフィルをコントロールするだけの何ものかが欠けているのか。他の大指揮者のような、確固たる意志が感じられない。

 今回、女声三人が弱い。そのせいか、どういうわけかバルトロやバジリオや、バルバリーナ、マルチェリーナまでもが力強い。特にカットされることの多い、第四幕マルチェリーナのアリアが見事な出来。普通はもっと目立たなく、おしとやかな歌声になっていると思うが、こういうのも面白い!

 期待のスザンナ、キャスリーン・バトルですが、これがカラヤン盤でのツェルリーナ、ムーティ盤でのデスピーナのようにはハマッていない。スザンナの声としては、クレンペラー盤のレリ・グリストに近い。ピタリと肌にまとわりついてくるような不思議な声だが、表情や抑揚をつけすぎ、スザンナとしての気品、というか気概に欠ける。居心地の悪いスザンナだ。 

 たとえば第3幕、伯爵とスザンナの2重唱。これがドン・ジョヴァンニとツェルリーナの2重唱になっている。バトルの声、どうやってもツェルリーナかデスピーナのようにしか聞こえない。

 なにしろフィガロ役がトマス・アレン。この人、バリトンだし、通常アルマヴィーヴァ伯爵やドン・ジョヴァンニを歌っているのに、なぜにフィガロ。固くて厳しくて、ぜんぜん違う。遊びのない声だ。今回男声は、伯爵が二人いて、フィガロがいない状態。スザンナが三人ってのよりもマシだけれど。

 そういうわけで本当に安心して聴けるのは、アルマヴィーヴァ伯爵のヨルマ・ヒュンニネンだけ。星ふたつかみっつ。

 ちょっとした驚きは、第四幕スザンナのアリア。全曲の要ともいうべきこのアリアの部分では、どの指揮者もグッとテンポを落として、快活さとは無縁のしなやかな気品ある表情を出す。ムーティもそうなのであるが、まるでライブであるかのように予想以上に臨機応変、しなやかなのである。この後は普通のムーティに戻るので、単なる偶然の産物か。

 フィナーレでは、当然ベームのような奇跡は起こらないものの、快速、快活に進んで、『フィガロの結婚』って、やっぱりいいオペラですねっ!
と、気持ちよく終わる。

しかし、これでいいのかリッカルド・ムーティ。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

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