なぜだか悪くない!? 新国立劇場『フィガロの結婚』再演
新国2010



 この新国での『フィガロの結婚』、たしか3回目か4回目かの再演。今頃になってやっと見に行くオペラ好きは、あまりいないのではないでしょうか。それというのも、ちょっと珍しい席(それほどでもないが)、いまや4階でも少なくなった「D席=¥3150」最安席の、さらに少ない3階の席が手に入ったものでして。

 3階でD席では、そうとうに音の悪い席かと思いきや、「アラベラ」の時の4階D席よりも、舞台に近い分だけよかった。4階D席も、前に人が大勢重なって見えるひどい席だ。この3階で何が悪いかというと、4階左右部分の席の裏側が、視覚上、舞台のすぐ上に見えてしまう。つまり舞台の半分ぐらいは、下は人の頭、上は4階床裏に挟まれた状態で、かなり目障りに見えてしまうのだ。

 さて、『フィガロの結婚』の実演ですが、最も見た回数の多いオペラでありながら、ほんとに久々、20年ぶりぐらいです。と書いて調べてみたら、1992年、バイエルン国立歌劇場来日公演、サヴァリッシュ、ヴァイクル、ポップ、その他の素晴らしい配役の凡庸な公演以来でした。この公演で、もう『フィガロの結婚』なんて見ないと思ったのでしょう。


2010年10月19日[火曜日] 18:30開演新国立劇場 オペラパレス

* 指揮 : ミヒャエル・ギュットラー
アルマヴィーヴァ伯爵 : ロレンツォ・レガッツォ
伯爵夫人 : ミルト・パパタナシュ
フィガロ : アレクサンダー・ヴィノグラードフ
スザンナ : エレナ・ゴルシュノヴァ★
ケルビーノ : ミヒャエラ・ゼーリンガー
マルチェッリーナ : 森山 京子
バルトロ : 佐藤 泰弘
バジリオ : 大野 光彦
ドン・クルツィオ : 加茂下 稔
アントーニオ : 志村 文彦
バルバリーナ : 九嶋 香奈枝
合唱 : 新国立劇場合唱団

演出 : アンドレアス・ホモキ
美術 : フランク・フィリップ・シュレスマン
衣裳 : メヒトヒルト・ザイペル
照明 : フランク・エヴァン
* 管弦楽 : 東京フィルハーモニー交響楽団


 再演に次ぐ、再演のせいか、名前を見ると、歌手も指揮者もレベルダウンしているような気がします。演出も、前回2007年の時からすでに、当初の演出よりも崩れてきている評があったように思います。そのせいかどうか、特に演出らしいものは感じませんでした。

 驚いたのは舞台装置です。先日の、圧倒的なネトレプコの椿姫の時に感じたのと同じ、舞台を狭く使っているのです。舞台上のプロンプターボックスから奥に深い溝があってから白いハコのような舞台があるが、左右に上にだいぶ余った真っ黒いスペースがある。したがって、またまた舞台が遠く、歌手が遠くで歌っている感じになる。

 真っ白いハコ舞台の中に、真っ白いダンボール箱が積んであるだけの舞台。それもザルツブルグ音楽祭「椿姫」のような綺麗なものではなくて、茶色の箱の上に白塗料で塗ったような、要するに塗装の薄さが目に見える、より貧相に見える白なのです。この方が、表面のテクスチャーがわかって、立体感が見えやすいという効果はあるのでしょうが、貧乏ったらしいです。

 まあ、最初だけこうで、第2幕になったらガラッと変わるのだろうと思っていたら、幕もなく、そのままの舞台で第1幕が終わると、ただちに第2幕に入った。前方にある真っ暗な溝は、第2幕でケルビーノが飛び込むためにあったようだ。その後、庭師アントニオがハシゴを立てかけて下から上がってくる。第3幕でも、ハシゴ下がアントニオの家という設定で登ってくる。なんじゃこりゃ。

 このとんでもない、舞台中央前方にハシゴが立っている状態は、一時的なものかと思ったら、第4幕最後までこのままだった。箱形の舞台も、壁がだんだん崩れて傾いてくる以外は変わらず。この貧相なセットのまま最後までいって、サプライズは何も起こらなかった。これには本当に驚いた。


 さて、歌手というか合唱団員ですが、主要歌手が外国人(普通のことだが)であるせいか、黒い服の日本人歌手がダーッと出てくると、南の国の原住民が現れたような雰囲気になる。ブヨンセの渡辺直美か、ちびくろサンボか、とにかく、背の低い小太りな歌手だけ集めたかのようだ。(イメージです)

主要歌手ではスザンナのエレナ・ゴルシュノヴァがまともな歌を聴かせてくれました。今回はオペラグラスなどを持っていかなかったので、勝手にマリン・ハルテリウスの姿を想像していました。そんな所作でした。

 その他は、そこそこで、良くも悪くもない。先にあった『影のない女』や『アラベラ』の舞台のように、感動的なところと、反面、ムカつくところとの混在はありません。冷静に、軽く好感の持てる歌手陣でした。

 これは何かのまちがい、前日ビールを飲み過ぎたのでしょうか、オケの演奏が気持ちよかったです。スザンナ第4幕のゆったりアリア(いちばん見事な歌だったのに)で、テンポとかクラリネットとかが、妙にちぐはぐになった以外は、不満がありません。

 このミヨーな軽い気持ちの良さは、『フィガロの結婚』の作品の力によるものではないかと、思う、今日であります。
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テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

[2010/10/20 11:29] | フィガロの結婚 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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