すべての現代人はひとりの女性から
人類起源

原人アフリカ003


『分子生物学でダーウィン進化論を解剖する 井内史郎』より

 さて、そのY染色体の応用は個人の家系ルーツ調査に限定されず、現代人(ヒト、ホモ・サピエンス)が地球上にどのように広まったかという疑問を探るのにも格好の材料となる。つまり、Y染色体を使うと現代人のルーツを探ることができる。けれどもこれは、200年前などという短期間のブランクを埋める問題ではないし、家族上というような小規模な問題でもない。地球上に住むすべてのヒトに関する問題だ。だからこの解析には、地球の各地域からヒトのY染色体を収集し分析をすることが必要だ。

 最近になって、科学者たちはアフリカ、ヨーロッパ、南アジア(インドを中心とした地方)、東アジア(日本や中国)、オセアニア(オーストラリアやニュージーランドを含む地方)、アメリカ(アメリカ原住民であるインディアン)の地域に住む人たちのY染色体を収集し分析した。そして、それらのヒトたちのY染色体の特徴を簡便に表し、その結果から現代人のルーツを探った。

 このようにしてみると、実際に、いくつかのはっきりとした答えが浮かび上がった。その一つは、アフリカ大陸を除く全世界のヒトたちのY染色体は、アフリカに住む人たちのものから派生していること(図3)。二つ目は、アフリカ大陸には、そのほかに全世界共通の特徴を有しないY染色体を持つ人たちが住んでいること。これらは、アフリカにはそれほど古い歴史を持つヒトたちが住んでいることを示す。

 三つ目は、南アジア、東アジア、それにオセアニアに住む人たちには2グループあって、その1グループはアフリカの祖先から直接に分岐した人たち(図3のC系統)、そしてもう1グループはヨーロッパに住む人たちとかなり共通性を保ちながらその後互いに分かれた人たち(図3のDE、F、そしてK系統)。四つ目はアメリカ原住民は東アジアのヒトたちから分岐したことである。結局、私たち日本人(東アジアの一部に住む)も含めてすべての現代人祖先はアフリカに住んでいた、という結論になる。


 ミトコンドリアゲノムは語る--すべての現代人は一人の女性から
 さて、組換えを起こさないDNAがもう一つ存在する。それはミトコンドリアゲノムだ。このゲノムは、Y染色体とは対照的に、母系の間だけで受け継がれる。そしてこのゲノムは一倍体で、しかも変異が細胞核内のゲノムよりも数倍、速い。このようなことから、女性のミトコンドリアゲノムを使うと、ヒトのルーツを遡って追跡できる。

 このようなことから、ミトコンドリアの由来をたどっていけば比較的単純な操作でヒトの祖先にたどり着く。2007年にアンダーヒルとキビシルドが出した総説によれば、ミトコンドリアとY染色体のハブロタイプ (一倍体の遺伝型、近頃ではSNPを使ってハブロタイプを表示することが多い)から得られた結論は事実上同じであった。

 これらのことから、ミトコンドリアを材料にした研究結果には間違いがなく、それはY染色体の結果ともども、アフリカ起源説が正しいことを示した。殊に、ミトコンドリアによるルーツの研究は、アフリカの祖先から直接に分岐し南アジア、束アジア、オセアニアに住む人たちヒトたちと、ヨーロッパに住む人たちと「血を分かちながら」アジア、東アジア、オセアニアに住むようになった人たちの2系統の存在をはっきりと示した。

 さて、1987年にキヤンとウィルソンらがミトコンドリアでヒトのルーツを解析した最初の結果をネイチャー誌に報告した翌年に、科学記事担当記者がその研究結果を週刊雑誌ニューズウィークに「イブの発見」として紹介した。イブとは、アダムと共に最初のヒトとして聖書に記載され、キリスト教によれば、彼女は今から6014年前に生まれ、すべての現代人の母であるとされている。一方、キヤンとウィルソンらは、イブは今からおよそ20万年前に住んでいたと推定した。このようにキヤンとウィルソンらの言うイブは聖書のイブとまったく異なるものだ。





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テーマ:歴史雑学 - ジャンル:学問・文化・芸術

[2011/02/22 20:03] | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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