■ 北山修 最後の授業     6月の図書 ■


 かつてプラトンが書いたように、文章では、哲学の第一義は伝わらない。
言葉や文章や本のような形では、本当に大切なことは人から人に伝わらない。
心を開いて語り合う、二人の人間の対話の中でしか、本質は伝わらないのです。

 何ヶ月か前、NHKで放映された『北山修 最後の授業』でも、テレビカメラが入っている教室で、本当のことが伝えられるのかということを採り上げていました。思いっきりザックリ言うと、そういうことです。

 最近ますます、思いが強くなりましたが、本や画集や音楽CDでは伝わらない部分が多くあるのです。直に本物に接しないといけません。

 自分の書いた文章を、ブログに乗ったあと読み返すと、コンナコトが言いたかったんじゃないぞ思うことがよくありますよね。きっと、みなさんも。



『北山修 最後の授業』より

 かつて私は歌を作りました。友だちのためとか、テレビのために作ったのではないのに、そこで歌が紹介されると、途端に私の歌ではなくなった、あの淋しさを覚えています。きっと心の問題を扱ってほしかったのに、テレビではなんだか歌だけが流れてしまって、私が置いてきばりになった、そういう原体験だったのだと思います。だから、私は心のあるところに戻った。それが、私の40年間の歴史かなと思うんです。

 私は「防人歌」の例をよく出すのだけど、防人の人たちが歌を書いた時、国語の教科書に載るために書いたわけじゃない。自分の妻や妹に向けて書いた。それは心を伝えたかったから。心の裏側にある思いを言葉にしたんですね。

 そこまで私の歌は大袈裟だったかというとそうではないけど、しかし、個人のパーソナルな思いをマスにのせた途端に、私の心は置き去りにされて、歌だけが持って行かれてしまった、という感じがあった。だから、私は心のあるところに戻りたかった。

 私が最終の授業を経験するにあたって、臨床心理学や精神分析について、私の人生とともに語り、そしてそれをテレビにのせてもらえるということがあるならば、やっぱりこのことは言わなきゃいけないと思った。裏として、テレビやマス・コミュニケーションでは取り扱えない心というものがあって、そのことを忘れてほしくない。当たり前のことだけど強調したかったんです。


 言葉にすると筋を通すことになる。整合性を求められる。秩序のもとに置かねばならない。これは共感と受容を強調する他学派の反感を買うようなところがあります。たしかにそうなんです。なぜかというと、言葉にすることで、みなさんがほんとうに言いたいことが言えているかというと、そうではない。そして心の質が変わってしまうのです。たとえば、心が直線になってしまう、筋になってしまうということがあげられます。

 つまり、「私はあなたを愛しています」と直線的に言っても、心では「私」と「あなた」と「愛しています」は同時に起こっている。それなのに、言葉にすると「私は」が最初に来てしまう。これは心の質が変わっているということです。

 真っ直ぐになってしまっている。心ってそんなものじゃない。みんないっしょくたになって同時にあるんですね。だから、言葉にする時に私たちは、どこか心のそのままの状態を変質させてしまっている。

 それから、さっき「混乱してくる」と言ってしまったのは、心の中にはいろんなことが同時に浮かんでくるからです。言葉はひとつのことしか言えないけれど、「愛しています」と言ってはいるけれど、同時に憎んでもいることだってある。

 ひとつのことを言うということは、片方を抑えつけてしまっている。片方を失ってしまっているとも言える。だから、言葉にすることでは心は部分的にしか表現されない。百万言尽くしても言いたいことが言えない。それが言葉だと思うのです。

 私は、なんだか言葉が流陽に使えているみたいで、上手くものを言えているほうかもしれない。けれども、言葉にしながら、なんとなく心が変質してしまっている感じを常に意識している。だから、私はいつも、まったく別のことを言いたがっている自分をここで感じています。



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北山修 最後の授業
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[2011/07/01 20:34] | 今月の図書 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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